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ここから先の回は、高頻度で闇(病み)が出てきます。
カランカランッ
カフェの扉を開けて入ってきたのはフードの男。
「…..っ!?」
その男のただならぬ威圧感に、全員動けなくなる。
男はそんなメンバーに構わず、カフェの中へ入っていく。
「…っ!」
岩本が咄嗟の判断で深澤を自分の方へ引き寄せる。
深澤はまだ耳を塞いだままだ。
警戒しながら男を睨む8人。
目黒、向井、ラウール、佐久間はすぐに戦闘態勢に入る。
男はそれも気にせずに、片手を上げた。
スッ
「……え…?」
何が起こったのかわからずに困惑する8人。
いつの間にかカフェではなく、知らない部屋の中にいたのだ。
「どこだ、ここ…?」
佐久間が、何とか言葉を口に出す。
「さっきの男もいなくなってる…」
阿部も周りに男がいないことに気づく。
他メンバーもだんだんと平静を取り戻していく。
岩本も腕の中に深澤がいることを確かめる。
(気絶…?)
深澤は、岩本の腕の中で一切動かない。
気絶しているのかは分からないが、先程よりもぐったりしているように見える。
そんな深澤を優しく抱え直し、
「とりあえず、先に進もう。」
先に進むことにした。
「部屋だけど、なんにもないよね…」
周りを観察しながら、ラウールが呟く。
「椅子しかねぇな。」
渡辺も1つの椅子を指差して言う。
「なんか手がかりとかもないやん…どうやって出たらいいん?」
お手上げとばかりに両手を顔の前にあげる向井。
「あべちゃん、どう?」
佐久間が阿部に問いかける。
「ちょっと待ってね。」
阿部は膝を着いて目を閉じる。
「panova(パノヴァ)」
(この部屋…微かに能力の気配がする。生身じゃ感じ取れない程の能力。部屋全体に微かに香ってる。特に椅子が強いな…)
この部屋の分析に集中している阿部を邪魔しないように、他メンバーは周りに敵が来ないかや、他になにか手がかりがないかを探す。
「ふっかさん、大丈夫かな?」
ラウールが心配しながら、岩本に話しかける。
「今のところは…気絶してるだけならいいんだけど…」
ラウールを安心させるように優しいトーンで答える。
急に阿部が立ち上がる。
「うおっ、どうしたんだよ?」
渡辺が驚きながら阿部に問いかける。
「この部屋、かなりまずいね。」
阿部が焦りを顔に浮かべてそう言った瞬間。
「ようこそ、Snow Man。」
フードの男が、いつの間にか椅子に座っていた。
「いつの間に…」
重点的に周りを見ていた宮舘が驚いたように呟く。
「さっきまで、なんもなかったのに…」
目黒はずっと椅子を監視していたが、確かに男はいなかった。
まるで最初からいたかのように男は現れた。
「ふっか。」
男が、深澤の名前を呼ぶ。
すると、
「!?ふっか!」
先程までぐったりしていた深澤が急に動き出す。
男の元へ行こうとする深澤を岩本が抑える。
意識がないはずなのに、身体は男の元へ向かおうとする深澤。
明らかに異常な様子に戸惑う8人。
その様子を愉快そうに見る男。
「君たちには、感謝するよ。」
男が唐突にそんなことを言う。
「…は…?」
何人かの声がハモる。
何に感謝をしているのか理解できない。
場違いすぎる発言に怒りを覚えるメンバーも。
「こんなにトリガーが引かれるのが早いとは思っていなかった。何事も早く行動したいからね。感謝するよ。」
「なんの、話…?」
佐久間が困惑しながら聞く。
他メンバーも理解ができない。
ふと、阿部が、
「ていうか、この声…」
フードの男を見ながら
「いつもの声、じゃない…?」
恐怖か怒りなのか、めずらしく声を震わせながら指摘する。
「…..っ!!」
その指摘で、全員が気づく。
こいつが、黒幕…!
一気に寒気が走る。
「その通り。」
フードの男が、微笑みながら告げる。
「君たちの活躍はいつも聞いているよ。彼のおかげでね。」
フードの男の視線の先。
「….ふ、っか…?」
男は深澤を見ていた。
「どういう、ことだよ…!!」
佐久間が怒りで声を震わせながら男に叫ぶ。
「お前、深澤に何した!?」
「何かっていうと、彼のことを支えてあげてただけさ。」
怒り心頭の8人とは裏腹に男は飄々としている。
「君たちにできなかったことを私がしてあげていたんだ。」
笑顔でそんなことを言う男。
「…どういう意味…?」
今にでも殴りかかりたい気持ちを抑えて岩本が問う。
「君たちは知っていたかい?彼の内心で渦巻く闇、欲を。」
「….ぇ…?」
男が何を言っているのか、全く理解できない。
深澤の中で渦巻く闇?
そんなの、初めて聞いた。
「彼はずっと苦しんでいたんだ。自分は前に立っては行けない人間だと思い込み、自分の才能を捨て、サポートに徹する。けど、欲望には逆らえないんだ。彼はずっと自分の承認欲求を抑え続けていたんだよ。」
演劇をしているかのように、感情的に発言する男。
「そんな可哀想な彼を、私は満たしてあげていたんだ。そうだろう、ふっか?」
深澤がピクリと反応する。
「….ぁれ…?なんで、おれ、ここに…..?」
意識が戻ってきたようだ。
なぜかこの部屋にいることに疑問を持ちながら、ゆっくりと身体を動かそうとする。
「おい、ふっか!」
「…ぇ?ひか、る…?なんで、ここに…?」
深澤は、ずっと岩本の腕の中にいたはずなのに、声をかけられるまでメンバーが周りにいることに気づかなかった。
どこかぼーっとしている深澤。
どこを見ているのかよく分からない瞳で脱力する。
「私の野望はね、」
男が怪しく微笑みながら口を開く。
「この世界を作り直すことだ。」
男は、野望について語り始める。
私は、この世界を元の姿に戻したいんだ。
かつて、能力者が支配していた時代に。
君たちも知っているはずだが、かつてはこの世界には能力者しかいなかった。
それは何故か?
能力者が圧倒的な力を表に出していたからだ。
人間を守る?
そんな必要はなかったさ。
全ての人間が能力者だったのだから。
だが、その世の中に”イレギュラー”が生まれた。
“非能力者”だ。
最初は受け入れられるはずがない。
だが、そいつは圧倒的カリスマ性を持っていた。
そいつは、多くの能力者を味方につける。
その中で力を持ったのが”式神使い”。
“伝説の大烏”
君たちも知っているだろう?
かつてこの世界の頂点に君臨していた。
その力もあり、非能力者の力はどんどん大きくなっていき、非能力者の波が広がった。
その1人をきっかけに、非能力者が増えていった。
私はそれが許せない。
急に出てきた者によって、私の愛した世界が壊されるのが…!!
私以外にもそう感じているものが沢山いた。
そこで起こったのが、能力者と非能力者側の全面衝突。
結果は、今の世界があるように能力者の敗北。
しかし、私たちは式神使いの封印に成功した。
裏切り者である式神使いを。
かなり厄介だったが、非能力者に味方をしたせいで、攻撃も鈍っていたな。
全ての式神使いの封印に成功。
大烏を手に入れたかったが、最後の抵抗だろう。
大烏を逃がしていたようだ。
結局、大烏は手に入れられずに伝説となったのだ。
私は、能力者の世界を取り戻すことを諦めていない。
なぜって?
今目の前に、私の夢が叶う存在がいるではないか!!
式神使いが数百年越しに新たに生まれたんだ!
かつての式神使いが何をしたかも全く知らない、利用しやすい式神使いが!!
幼いうちにあの大烏を味方につけ、心に傷を持っている。
彼に出会った時、運命だと感じたよ。
彼は私の夢を叶えるためにこの世界に生まれてきた。
だから、私は彼のことをかわいがってやったのさ。
すぐに懐いたよ。
少し褒めてやるだけで嬉しそうにする。
頭を撫でてやるだけで俺に従う。
本当に扱いやすくて助かったよ。
これで、私の夢が叶うのさ。
「なんだよ、それ…!」
渡辺が男を睨みつける。
「バカじゃねぇの!そんな事のために深澤のこと…!!」
拳を震わせながら叫ぶ。
「ふっかさんの優しさを利用しやがって…!!」
「ふっかさんは道具ちゃうで!!」
「くだらない野望のために利用するなんてありえない…!」
目黒、向井、ラウールも叫ぶ。
怒りが抑えられない。
「その考えは間違ってる…非能力者を否定するなんてありえない…」
阿部は、深澤を利用してたことだけでなく、男の野望にも怒りが湧いてくる。
「非能力者がいるからこそ成り立っている世界なんだ…!」
宮舘も同意見。
「…..絶対に…許さねぇ…!!!」
岩本は、言葉は少ないが確かな怒りを一言に込めて睨みつける。
「くだらない野望なんて、絶対叶わねぇよ!!」
最後に佐久間が叫んで、男に飛びかかろうとする。
「……くだらない….?」
その一言で、8人の動きが止まる。
声を出したのは、
深澤だった。
「くだらなくなんかない…ボスの夢は、みんなを幸せにするんだ….」
「お前…何言って…」
困惑を隠しきれない8人。
佐久間が困惑しながら言う。
「深澤!お前は利用されてんだ!!」
必死に呼びかけるが、反応はない。
「ふっか、あいつの考えは間違ってるんだよ!」
阿部も呼びかける。
「違う..違う違う違う違う違う違う!!!」
頭を抱えながら否定する深澤。
「ボスの言うことは、絶対なんだ….否定..しないで….」
弱弱しく言う深澤。
「ふっか!お前は騙されてんだ!!こんなくだらないことに利用されて…!!」
岩本が痺れを切らして、”男の野望を否定する”。
それを聞いた深澤は、動きを一瞬止める。
そして、震える唇で、
「…..なんで…、なんで、ボスを….否定するの….?」
絶望したような、失望したような表情を”メンバー”に向ける。
「….来たね…」
男だけが、微笑んでいた。
「….ふっか…?」
メンバー全員、動けなくなる。
深澤のこんな表情を見たことがない。
深澤は、8人のことを”仲間”として見れなくなったのだ。
「…離して….離してよ…..!!」
深澤が逃げないように抱きしめてた岩本の腕を必死に振りほどこうとする深澤。
「…っ!暴れないで…!!」
かなり強めの力で抵抗される。
でも、岩本は深澤を離す気はない。
周りのメンバーの急いで深澤と岩本の元へ集まる。
その状況を男だけが楽しんでいた。
そして、
「ありがとう。これで準備は整ったよ。」
男はそう言って、指を鳴らす。
パチンッ
その音が部屋中に響く。
8人に害がある訳では無い。
その指鳴らしは…
「……」
深澤の身体が微かに震える。
それを境に、深澤は一気に脱力し、瞳から光が消え、焦点が合わなくなる。
「….ふっか….?」
確実に深澤の身に何かが起こったことを感じて、不安が広がる。
「おいで。」
男がそう囁くと、項垂れていた頭が少し上を向き、そのまま糸で引かれるかのように、深澤は男の腕に引っ張られる。
「…..ぐっ…!」
岩本も引力に耐えきれずに、深澤のことを離してしまった。
他メンバーも驚きで動けず、深澤は男の腕の中へ。
「最後の条件は、彼が仲間を拒絶すること。君たちが追い詰めてくれたおかげで、この能力を完成させることができたよ。」
男が嬉しそうに”深澤の頭を撫でながら”言う。
「….洗脳、魔法…?」
阿部が、衝撃を隠しきれずに呟く。
「でも、その能力はもう存在してないはず…」
阿部の言う通り、”洗脳”を使う能力者は式神使いの封印とともに消えたはずなのだ。
男はニヤリと笑う。
「さっき言っただろう?運命だって。」
8人に冷たい汗が流れる。
「式神使いが生まれたと同時に、洗脳の能力者である私も生まれたのだよ!!」
能力者側で指揮を取っていた洗脳の能力者。
非能力者側で指揮を取っていた式神使い。
あの争いの中心となっていた能力を継ぐものが、この時代に揃ったのだ。
しかし、状況が違う。
式神使いである深澤は、もう男の手の中にいる。
「あとは、大烏を味方につけるだけだ。」
男は笑って、深澤と共に虚空に消える。
「…待て…!!」
追いかけようと走り出したが…
そこは、先程の暗い部屋ではなく、カフェの中だった。