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カフェの中、沈黙が流れる。 ドンッ!!
「…ビクッ!」
誰かが机に拳を振り下ろし、それに誰かが反応する。
部屋の中には、怒り、不安、緊張、悔しさ…
マイナスな感情だけが残っている。
ここにあるのは、深澤を奪われた絶望のみ。
普段、真っ先に空気を変えようとする深澤がいない。
誰も、絶望から立ち直れそうになく沈黙が続く。
どれくらい時間が経っただろう。
「……どう、しようか…」
ようやく、ラウールが口を開く。
「このままだと、ふっかさんが危ない。」
絶望の空気を断ち切るようにラウールが真剣な瞳でメンバーを見渡す。
「…..そうだよね。」
「ラウの言う通りだな。」
ラウールの発言によって、何とか立ち直れそうにはあるが
「……」
岩本は、自身の手のひらを見つめて動かない。
(俺が、あの時手を離さなかったら….もっと前に、ふっかの孤独に気づけてたら…!)
守れなかった後悔と気づけなかった悔しさ。
岩本は、他メンバー以上に責任を感じていた。
「あの男がこれからどう動くかだよね。」
阿部は早速いつものホワイトボードを用意する。
「夢を叶える…具体的にはどうやって…?」
宮舘が率直な疑問をあげる。
「それに、深澤が必要ってのはなんで?」
渡辺も疑問をあげてく。
「…まずは疑問をあげてみよう。そっからなにかわかるかもだし。」
ラウールの提案にメンバー全員賛成。
深澤がいない空間で、ラウールが中心となって動いてくれる。
今のメンバーにとって、それはすごいありがたいことだった。
「とりあえず、こんなもん?」
阿部がボードにまとめた文字を見る。
『世界を変える?どうやって?
ふっかが必要なのはなぜ?
大烏を何に使う?
洗脳魔法をふっかに使ってた?
ふっかの闇って何?
いつから男とふっかは知り合った?』
出てきた疑問のひとつひとつを考えてみる。
「たしか、あいつは…」
『彼はずっと苦しんでいたんだ。自分は前に立ってはいけない人間だと思い込み、自分の才能を捨て、サポートに徹する。けど、欲望には逆らえないんだ。彼はずっと自分の承認欲求を抑え続けていたんだよ。』
「…って言ってたよね。」
目黒が男の発言をそっくりと言う。
「承認欲求….」
向井が少ししょんぼりしながら、
「ふっかさん、いつも後ろにいたもんな…ほんまは、一緒に前に出たかったんやろうな…」
今までの深澤を思い出しながら、ずっと後ろでサポートに徹していたことを思い出す。
「….あの時、ちゃんと話しておけばよかった…」
阿部が深澤に声をかけた時のことを思い出す。
『あはは、全然だいじょーぶ!』
あの時の”完璧すぎる笑顔”を思い出す。
「あの時、引き止めて話を聞いてたら…」
残るのは後悔ばかり。
違和感に気付けていたのにも関わらず、それをスルーしてしまっていた。
また暗くなりそうな雰囲気を感じ取ったラウールが、
「あのさ!洗脳について阿部ちゃん、詳しそうだよね?教えて欲しいんだけど…!あと、男が現れる前に言おうとしてたこと!」
話を阿部に振る。
「あぁ、あれね。実は…」
阿部は頷きながら、あの部屋で感じたことについて話し始める。
(阿部視点)
あの部屋で感じたこと。
あの部屋には生身で感じ取れないような、微かな能力の気配があった。
だから、分析が遅れたんだよね。
その能力が洗脳なんだと思う。
みんなは覚えてる?
あの部屋に入った時、明らかにふっかの様子がおかしくなったこと。
男がふっかの頭を撫でてたこと。
“頭を撫でる”
これが微かな能力の気配だと思う。
長い間、ふっかに能力を使ってたんだろうね。
頭を撫でることによって能力を使うのと同時に、精神面でふっかは孤独から解放されてる気分になるってこと。
あいつは、ふっかが感じていた孤独を、上手く利用してた….。
ふっかにとってあいつは、神様みたいな存在なのかも。
ふっかの全てを肯定して、ふっかの孤独を埋めてくれる存在。
俺ら、よりも…優先してしまう存在….。
でも、あくまでそれは錯覚。
ふっかは、勘違いしてるんだよ。
自分は男によって救われてるって。
「でも、ふっかの全てを知ってるわけじゃないから、はっきり言えないけど…」
阿部が説明を終えて、息を吐く。
「あべちゃんの言う通りだよ。ふっかに気づけなかったのは俺ら全員。誰かが必要以上に責任を感じることない。」
佐久間が、責任を感じている岩本を中心に周りを見る。
「….佐久間…」
岩本は、顔を上げてメンバーを見渡す。
「…今は、ふっかをどうやって救うか。それだけを考えよう。」
まだ、後悔や不安は残ってる。
だが、深澤がいないこの空間でボスが沈んでどうする?
こういう時こそボスとして周りを引っ張るのだろう?
「作戦、立てるぞ。」
岩本はSnow Manのボスとしての気持ちを取り戻す。
(深澤視点)
「……ぁれ….?」
ここ、どこ…?
俺、何してたんだっけ?
頭痛い、気持ち悪い、目眩する。
なんにも、覚えてない…
「状況、整理…しないと…」
痛みで悲鳴をあげる脳を押さえつけて思考を巡らす。
まず、ここはどこ?
暗くて周りが全く見えない部屋。
俺はさっきまでベッドの上で寝てたんだよね。
初めて、見る場所なはずなのに…
少しだけ、安心感がある。
次に、最後の記憶は?
今が何日なのか分かんないけど…
俺の記憶が正しければ、最後にいたのはカフェだったはず。
たしか、こーじがしつこくめめに話しかけてて、俺がそれに相槌をうってて….
「…..うってて….?」
ここからの記憶がない。
その後、俺は何してた?
その日の任務の内容は?
照たちは何してたの?
話してただけ?本当に?
「….ぅ゛っ…」
頭が酷く痛む。
思い出そうとすると、酷すぎる頭の痛みと吐き気に襲われる。
「….はぁっ、はぁ…はぁっ…」
思い出したらまずいことがあるの….?
それは何…?
分からない、なんも分からない…
「おはよう。」
「…..?」
急に、声が聞こえて…
「だ…れ….?」
ガクッ
「…..ぅえ…」
やば…
身体に力、入んな…..
「そろそろ出番だよ。」
なんの…話….?
意味の分からないまま、俺は意識を手放した。
「どうやら、記憶が混乱しているようだ。」
フードの男が深澤の頭を撫でながら呟く。
「まぁいい。またすぐに目を覚ますさ。」
微笑みながらそう口に出したと同時に
「……ん…ぼ、す…?」
深澤が目を覚ます。
だが、深澤の目には光がなく、どこかふわふわしている。
先程までは状況整理ができるほどの体力があったが、今は完全に脱力しきっている。
思考を辞め、男に身を任せている。
「おはよう、ふっか。気分はどうだい?」
男は甘い声で深澤に声をかける。
「…..ぅ…」
深澤は、先程まで何を考えていたのかだけでなく、メンバーといたことですら記憶にない。
ただ、男をうっとりと見つめて身を委ねる。
「相変わらず、大烏だけはいないようだ。」
男の本来の目的は大烏だ。
そのために深澤を手にしたというのに。
どれだけ深澤に洗脳魔法をかけ、自分の所有物としたとしても、大烏だけは男の前に現れることはなかった。
「いや、きっとすぐ来るさ。」
男は口角をあげる。
ゆっくりと深澤の身体に触れる。
「…..ん….ぅあ…..」
小さく甘い声を出す深澤。
「最悪、”これ”に手を出せばいいさ。主人の危険には必ず反応するはず…」
深澤を”これ”と呼び、扱う男。
男は、完全に洗脳された深澤に優しくする必要はなくなった。
深澤はもう、男にとっての道具でしかないのだ。
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