TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

海洋高校−物語は波のように−

一覧ページ

「海洋高校−物語は波のように−」のメインビジュアル

海洋高校−物語は波のように−

13 - 第10話「変質は、進化じゃなくてもいい」

♥

16

2025年08月06日

シェアするシェアする
報告する

第10話「変質は、進化じゃなくてもいい」

登場人物:複数の生徒たち





午前の波域講義が終わるころ、空が淡く揺れていた。

**海上を滑る浮遊式学区「ソルソ学区」**の空は、波の乱れによって“色のうねり”が走ることがある。





教室の端で、**ナギサ=リト(熱属性)**が頬杖をついていた。

髪は炎のように鮮やか、切りそろえた前髪と、やや焦げた袖口。

「また、変質できなかったな」

小声で吐き出すように、ノートに斜線を引いた。





中庭の水草水槽前では、**フブキ=アミヤ(潮属性)**が目を閉じていた。

制服の裾を摘みながら、わずかに足を揺らす。

「わたしの波、濁りすぎてる……」

水槽の前に立つと、感情の波が反射する。





**ソラ=ミナヅチ(波属性)**は校舎裏の貝殻山で、何かを埋めていた。

「“理想の共鳴”なんて言葉、なくなればいいのに」

彼の髪は藻のように濃い緑、サンダルに付いた貝のチャームが揺れる。





放課後の購買前で、**クク=ミール(草食・草属性)は、売れ残った海藻をぼんやり見つめていた。

「食べられない日って、ずっと続くのかな」

手帳には波の共鳴結果:「未反応」**の文字。

でも、それでも彼女は、明日の予約用紙に名前を書いた。





各所で、誰もが変質を求め、変質に失敗し、それでも歩いている。





その夜、食堂で開かれた小さな集まり。

名前もない、共鳴失敗者たちだけの会話。





「成功したって言われても、なんか違ってたら意味ないしな」

「“うまく変われた”って、誰が決めるのかな」

「でも、もし変わらなくても、“残る感情”があるなら……」





“変質”は、進化じゃなくてもいい。

速くなくても、大きくなくても。

ただの“足し算”でも、“分岐”でも、“停止”でも。


それは“今の自分に、別の温度を持たせること”。





夜のソルソ学区は、静かだった。

それでも、誰かの波は、水面下で静かに変わっていく準備をしていた。




海洋高校−物語は波のように−

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

16

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚