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ガチャをした結果、何とも言えないラインナップとなった。レア確定だからと変わったものを望みすぎなのかもしれないが、今はそれじゃない感が強かった。
【Sレア アイアンプレート Lv.323】
【Sレア アイアンブレード Lv.240】
【Sレア アイアンクロスボウ Lv.501】
【Uレア エンチャンター習得の書】
ガチャを終えた魔石はすぐに冷えきり熱さが失われた。レア度に応じて魔石にも変化が見られることを期待していただけに、拍子抜けだ。もしかしたらおれの覚醒に関係なく、魔石ガチャの成長には何らかの条件があるのかもしれない。
「……イ、イスティさま」
「レベルは高いけど鉄かぁ。エンチャンターは魔法付与出来るだろうから、フィーサにはいいかもしれないな」
「わらわに属性魔法がつけられるの?」
「出来ると思うよ。でも他の使いどころが……」
何とも言えないアイテムにおれたちは落胆した――そんな時。
コンッ、とした乾いた音が聞こえた。どうやら地面に置いたままの魔石に何かが当たったらしいが。
「ウー! 魔石を持つ魔物!! 災いをもたらそうとする前にやっつけてやるゾ!」
理解の出来る言葉が聞こえるが、
「まさか魔物か?」
気付いた時にはすでに遅く、木々に紛れた複数の何かに取り囲まれていた。
「マスタぁ! わらわを引き抜くの!!」
「引き抜くって……どうす――」
「早くするのっ!」
フィーサを鞘から引き抜こう――とするも、
「う、動くなっ! 動けばその手を矢で撃ち抜くゾ!!」
声を聞く限り若い女性のようだ。細かな動きに相当警戒をしているのか、その場が緊張している。大きさのない魔石に矢を当てているという時点でそこそこ実力はありそうだ。
「うー! わらわから動く~!!」
「待った。ガチャで出した物を使って応戦してみる。せっかく手元にあることだし」
「好きにすればいいの!!」
フィーサを使えば事態は急転しそうだが、レアガチャで出た物を優先的に使うことにする。理由は、エンチャンターの書は手にした時点で習得済みだからだ。アイアンブレードとプレートならば矢を放たれても防ぐことが出来るはず。
クロスボウは――今は使えそうにないな。
おれはなりふり構わず、アイアン装備一式を手にしてみた。普通の鉄よりは軽くレベルも高いからか、その場しのぎなら戦えそうだ。
「君らが何者かは知らないが、見えない矢でもこのアイアンプレートには通じない!」
これはハッタリだ。木の矢程度であればアイアンの敵になることがないからなのだが。
「む~~!! ま、魔物のくせに生意気だゾ~!」
声がすると同時に火矢が前後左右から飛んでくる。だが、アイアン装備には通じず跳ね返った火矢はそのまま地面に落ちた。相手の攻撃は矢だけ、それも火矢程度。
それならハッタリを続けるか?
「狩猟族のようだがおれは魔物じゃない! 攻撃する気も無い! だがこれ以上火矢を射るつもりなら魔法で応戦する!!」
「ほ、本当だな? い、行くゾ? 行くから魔石と鉄を捨てろ!!」
「魔石は捨てられないが、鉄はくれてやってもいいぞ!」
森を守る者、あるいは狩猟に来ていたところに出くわしたか。何にしても迷い森には違いない。フィーサはすっかりふてくされて沈黙。そんな状況下の最中、取り囲んでいる輪の中から小さな獣の子供が近付いて来た。
姿を見る感じ虎人《こじん》のようだが。
「おいっ! どこを見ている? こっちだ、こっち!」
「……ん?」
「お前の足下なのだ!!」
おれの目線で周囲を確かめていたせいか、足下の気配に気づかなかった。足下といってもそこまで小さくはない子が目の前に立っている。若い女性だと思っていたがさらに小さな女の子だった。
「君は?」
「シーニャだぞ! 参ったか!」
虎耳尻尾の女の子に「参った」とでも言えばいいのだろうか。
「ええと……」
「魔物のくせに口答えするな!! 魔石と鉄を今すぐ渡せ!」
「渡せないよ。そしておれは人間。魔物じゃない」
「ウーウー!!」
火矢の命中精度は高いものがあった。しかし思った以上に小さな女の子だった。それだけに驚きを隠せない。耳がせわしなく揺れていて、思わず触れてみたくなる。
――だが今はそれどころじゃない。
落ち着いて周りを囲む虎人族を見てみると、幼い男の虎人ばかりなことに気付く。
もしかして近くに村がある?
そうなるとおれから名乗って出方を待つしか無さそうだ。
「おれはこの森に迷い込んでしまった人間、アックだ!! 君たちは虎人族だな?」
「シーニャは、ワータイガーだ! こいつらとは違うゾ!」
「それじゃあ、君はこの森では何をしていたんだ?」
「……村を探して迷い込んだのだ」
村があるわけでは無く迷い込んでいたのか。
「それじゃあ、君たちも迷い込んでしまったのか」
「歩き回っていたら魔物のお前が来た! 魔物が持つ魔石を持てばここを出られる……だから、さっさとよこせ!」
間違った知識だな。人の言葉を話すシーニャと名乗る女の子が周りの虎人族を率いている……といった感じだ。ずっとおれを睨み続けているがそんなに怖さは感じない。
もちろん奪われる心配もあるだろう。だがこの子たちの目の前でガチャを見せてやれば、状況が変わりそうな気配も感じる。
よし――。