テラーノベル
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14周年おめでとう!!
「「「………」」」
とんでもなく悪い空気が流れています。
皆さんおはようございますこんにちはこんばんは、トラゾーです。
目の前で三すくみのように睨み合うのは左にぺいんと、右にしにがみさん、真ん中にクロノアさん。
ただし、互いを睨み合ってるのではなく。
睨んでいるのはぺいんとの手に握られる俺のスマホだ。
「(どうしてこうなった)」
何故こんなことになっているのかと言うと、遡ること約2時間ほど前のこと。
俺の発言が原因だ。
──────────…………、
「「「は?」」」
「え?」
「トラゾーお前今なんつった」
「へ」
ぺいんとの静かな剣呑とした声。
「もう一回言ってくれませんか」
「え」
しにがみさんの低い不穏げな声。
「誰に、何を、されたって」
クロノアさんの荒々しい激怒した声。
「いや、だから…」
ある日、メールのアイコンのところに一通メールが届いていた。
まぁいつものインフォメールか何かだろうと思って開いた。
そしたらなんと隠し撮りされた写真が添付されたメールが届いていた。
いつも見ています
という内容を添えて。
今時メールだなんて珍しいというか、貴重というか。
まぁ、迷惑メールにでも入れておけばいいかと深く考えていなかった。
ただその日からメールはアドレスを変え毎日毎日届くようになっていた。
しかも、撮られる写真の距離が段々と近くなってきて。
困ったなと思ってはいたものの実害はないし、相手をしなければそのうち諦めるか飽きるだろうと放っておくことにした。
…のが、いけなかった。
野暮用で電車に乗って目的地に向かっていた時、そこまで混んでいなかったはずなのに妙に距離が近い女の人が背後に立っていた。
ちらりと視線を背後に向けると俺より少し歳が下かなと思われる綺麗な女の人だった。
近いな、そう思っていたら何を思ったのかその女の人はぴったり体をくっつけてきてあろうことか俺の体に触ってきたのだ。
周りには分からないように。
困惑でそこから身動きがとれず、自分の降りる駅に着いた時に振り払うように足をもたらさせながらも慌てて電車から降りた。
そして、今現在集まった時になんかこの前、痴漢されて、ストーカー?女の人にされてるみたいでさ、と思ったより張り詰めていた精神だったのかそう愚痴をこぼしてしまったら空気が凍り険悪になってしまったのだ。
スマホ出せとぺいんとたちに言われ素直に(というより怖くて)出して詰め寄られている。
「全く知らない奴?」
「た、ぶん…」
記憶の中にあの女の人はいない。
「トラゾーさんのリスナーかなんかですか?」
「わか、んない」
名乗りもしてないし、メールの文章も端的だから分からない。
「……なんで黙ってたの」
「め、い、わくになるかと、思って…」
傷を付けられるとかの実害じゃなかったし電車にさえ乗らなければと思っていたし、何より男が女の人にこんなことされてるなんて知られることが嫌だったから。
俺のこんなことでみんなを悩ましたくも時間も取らせたくなかったから。
「「「………はぁ」」」
「っ、…ごめん、なさい…、呆れるよな…こんな俺にまさか女の人が痴漢やらストーカーなんて、するとかさ…」
自分で言って泣きそうだ。
俺だって信じたくない。
3人に比べて平凡な俺に、あんなことして何が楽しいのか俺自身が教えて欲しいくらいなのに。
いや、3人に何かしたら誰であっても俺は許さんけど。
「呆れてるよ」
「だよ、な」
「お前のその1人でどうにかしようとするところに」
ぺいんとが俺の手を掴んできた。
どうやら俺は思ってる以上に弱っていたらしい。
手が震えていた。
「そうですよ。僕たちってそんなに頼りないですか?」
「そんな、ことないです…とても頼りになります…」
しにがみさんが俺の背中を撫でる。
「俺たちに言ってよ、トラゾー」
ボロボロと落ちる涙をクロノアさんが拭う。
「………ッ、こわ、い…た、すけ、て…っ」
ぎゅっとぺいんとの手を握り締めた。
「当たり前だろ」
「当たり前じゃないですか」
「当たり前でしょ」
「俺らの14年の絆舐めんじゃねぇし」
「そんなことで僕たちがトラゾーさんから離れるわけないし」
「大事な仲間で大切な友達が傷付いてるのを見過ごせるわけないだろ」
「ぅ、ん…ッ、ごめ、ん、なさい…」
クロノアさんがにこりと優しく笑った。
「こういう時は謝らなくていいんだよ」
「ッ、あり、がとう…っ」
ずるりと被る袋が落ちる。
気の抜けた笑顔を向けてぺいんとの手をぎゅうと握った。
「ありがとうも言わんくてもいいって。友達を助けんの当たり前なんだから!」
「そうですよ!僕たちは4人でひとつなんですもん、助け合うのは普通のことです!」
「あ?お前は足引っ張る側だろ」
「はぁ⁈今そういうこと言います⁈頭わいてんですか⁇」
「わいてませーん!」
「うわ、うっっっっざ」
いつもの七味の言い合いに涙が引っ込んで吹き出した。
「ふは、っ」
「よかった。トラゾーやっと笑ってくれた」
クロノアさんがホッと息を吐いて笑った。
「ぺいんととしにがみさんのやりとり面白くて…好きだなぁって」
「僕もトラゾーさん好きです」
「俺だってトラゾーのこと好きだし」
「あ、俺もトラゾーのこと好きだよ」
急に好き好き言われて今度は顔が熱くなる。
「ぅ、…あ、あんま言われ慣れてないんで、言わんで下さい…、」
「トラゾー俺のことは?」
「え?」
「ぺいんととしにがみくん好きなら、俺のことは?」
「へっ」
じっと翡翠に見つめられて慌てる。
「ぇ、あ、、す、きです、…よ、」
「ふふっ、俺もトラゾー好きだよ」
「…ぅ、イケメンずるい…」
「トラゾーは可愛いね」
顔面偏差値限界突破してるクロノアさんに言われて、お世辞でも照れる。
「可愛い担当が何言ってんすか…」
「僕もトラゾーさん可愛いと思いますけど」
「可愛いあなたに言われても…」
「トラゾーは可愛い!」
「…ぺいんとは変なもんでも食ったのか」
「いやなんでお前も俺には当たり強ぇんだよ!」
「?」
首を傾げるとぺいんとが、ギャグのようにズコーと滑った。
「素!?こいつの素なんかよ!!」
「ぺいんとに言われてもなんかな…」
「素直に喜べよ!クロノアさんとしにがみの時みたいに照れろよ!」
「やだよ」
ぺいんとの手を握る俺の手の震えはいつの間にか止まっていた。
こうやってワザと気を逸らしてくれる3人に、胸があたたかくなる。
「……まぁいいや。今日は俺トラゾーん家にとーまろ」
「え⁈」
「僕も泊まりまーす」
「俺もー」
「ちょっ…客用の布団2組しかないって!」
流石にソファーで寝ろなんて言えない。
暦では春になってもまだまだ肌寒い。
こんなに心配してくれる友人に風邪を引かせるわけにいかない。
「そりゃあ誰かがトラゾーのベッドで一緒に添い寝すんだよ」
「僕でいいでしょ。こん中で体格1番小さいし」
「はー?そんなん関係ねぇし。俺だってトラゾーと寝たいもん」
「俺だってトラゾーと寝たいな」
「「クロノアさんが言うとなんか…」」
「なんか、…何?」
なんとなく圧のある笑みに背筋を伸ばす七味兄弟。
「「なんでもないです」」
なんて普段のノリというかなんというか。
「だったら俺がソファーで寝るんでみんなで布団とか使ってくださいよ。友達風邪引かせれんし」
「バッカ!家主がソファーはおかしいだろ」
「ここはじゃんけんで!」
「その案乗った。一回勝負?」
「この中じゃ俺が1番運いいもんね!」
「はぁ?そんなん分からないでしょ」
「そうだよ。そう言ってると負けるよ?」
「文句なしの一回勝負!」
家主の俺を放っておいて進められる話を黙って聞くしかなかった。
そのくらいの鬼気迫る迫力だったから。
「「「じゃーんけーん!」」」
「「「ぽん!!」」」
「あ」
「だから俺が勝つって言ったのに」
「いやぺいんとの運ってやっぱ、なんかすげぇな」
結局、言った通りぺいんとが一発勝ち。
パーを2人が出して、チョキを出したぺいんとのニヤニヤ顔と2人の悔しそう顔は面白かった。
「狭くない?もうちょっと下がろうか?」
「落ちるからこっち寄れよ」
「ぉわ」
ぺいんとの胸に顔を埋めるようにして抱き締められる。
規則正しい心音に落ち着く。
「………トラゾー」
「ん…?」
少しずつ気持ちも落ち着いていき、瞼が重くなっていく。
「大丈夫だからな」
「⁇…ぅん…」
静かな凪いだぺいんとの声に久しぶりに心が穏やかになって眠りに落ちた。
「トラゾーのこと傷付ける奴は誰であっても許さねぇ」
夜出掛けた先で背後から見知らぬ女の人に声をかけられた。
「あの、すみません」
「?、は………い、っ!!?」
振り向いた時、全身に緊張がはしり恐怖で体が固まった。
「こんばんは。わたし、トラゾーさんのこと大好きなんです。握手してくれませんか?」
差し出された手。
覚えている。
あの時、俺の体を触ってきた手だ。
右手の甲と親指の付け根にあるホクロ。
印象的で覚えていた。
「握手、してください」
「!!!、ぁ、ご、ごめんなさい…っ!!」
震える脚を叱咤しその場から駆け出して逃げた。
……──────────、
「は、ッ、はぁ…っ、ふ、っ…は…っ」
巻いただろうかと思って、路地裏に身を隠す。
辺りから人の気配はせず安堵の息を吐いた瞬間だった。
「トラゾーさんやっぱ脚早いんですね。でも残念、わたし陸上部だったんで脚には自信あるんですよ」
「あ、や、ば…っ」
「ねぇ握手して下さい。好きなんです、わたしトラゾーさんのこと。…好き大好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き!!」
「ぃやだ…っ」
もうダメだと思ったら近寄る女の人を引き剥がしたのは肩で息をするクロノアさんだった。
「くろのあさん…っ⁈」
「…っ、はぁ……、あなたのしてることは立派な犯罪ですよ。警察も俺たちの仲間も呼びました」
庇うように立つクロノアさんを睨みつける女の人が、カッと目を見開いた。
「邪魔をするな!!トラゾーさんは数多くあるコメントの中わたしのを拾ってくれた読んでくれた見つけてくれたわたしを呼んでくれた見てくれた返事してくれた応えてくれたわたしをわたしをわたしを!!」
綺麗な顔を歪めて俺を見る女の人にびくりと肩が跳ねる。
そんな女の人から庇うようにクロノアさんが俺を背に隠した。
「どんなに頑張っても誰にも見てもらえないわたしを見つけてくれた頑張れってわたしにだけ言ってくれたわたしだけに!!」
たまたま目に留まったコメントに返事をして、その返事をした人が俺に執着してしまったみたいで。
そんなつもりは全くなかった。
純粋な気持ちで頑張ってくださいって応援したのに。
言い手と聞き手では、受け取り方が違う。
それを分かっているからこそ発言には注意しながら返事をしたのに。
「わたしのトラゾーさん!わたしだけの!!返して、返せ!!」
「ひっ…」
俺の引き攣る声を聞いたクロノアさんがその女の人を見せないように抱き締めてきた。
「…あなたにトラゾーを渡すわけがない。…返せ?トラゾーはあんたのモノじゃねぇよ」
「お前のモノでもない!お前らのモノじゃないだろうが!!」
「トラゾーはトラゾーのモノだ」
「!!離せ!その人を離しなさいよ!!」
クロノアさんに飛びかかろうとした女の人を背後から止めたのはぺいんとだった。
その更に背後には警察と冠さんと息を荒らして立つしにがみさんがいた。
「クソクソクソクソクソ!!」
暴れる女の人を警察が連行していき、姿が見えなくなった途端力が抜けてその場に座り込ん む。
ガタガタと震える肩をしにがみさんが同じように座り込んで撫でてきた。
「トラゾーさん、もう大丈夫ですよ」
ぶわりと涙腺が崩壊して大人気もなく大泣きした。
嵐のようで一瞬の出来事だったのに、女の人に言われ続けていた瞬間は長く感じた。
それも、これで終わった。
もう怯えなくていいのだと。
別の警察官に事情聴取として俺らはパトカーに乗って、話をした。
色々聞かれ答えていたら解放される頃には日にちを跨ぎ夜中になっていた。
「……あの、どうして俺の居場所分かったんですか?」
ひりつく目元を冷やしながらぺいんとに寄りかかってクロノアさんに聞く。
「………トラゾーには悪いけど、GPS仕込ませてもらってたんだ」
腕につけてる物を指差される。
「いつの間に…」
「トラゾーが寝てる間に俺が仕込んだ」
あの日の時らしい。
ぺいんともクロノアさんもしにがみさんも眉を下げていた。
「絶対に次は危害加えてくると思ったから。けど、トラゾーの行動は制限したくなかったし……ちゃんと言えばよかったよな。…ごめん」
「俺が言い出したんだよ。俺たちの見えないところで何かあったらって思ったら、こうするしかなくて…ごめんね」
「トラゾーさん、2人を責めないであげてください。決して気持ちのいいものではないでしょうけど心配故の行動なんです。僕も見てて止めませんでした。…すみません」
深々と頭を下げるクロノアさんとしにがみさん。
ぺいんとは俺が寄りかかってるから頭だけを下げている。
「…………謝らないでください」
「トラゾー…」
「驚きましたけど、そのおかげで俺は無事でいるんです。…俺が感謝しなければいけないんですから、謝らないでほしい」
赤く腫れる目元が痛いけど、みんなに笑いかける。
「ありがとう。ホントにありがとうございます」
「「「トラゾー(さん)…」」」
「みんなでよかった。俺は、幸せ者です」
日常組として長く活動してきたけど、この3人で良かった。
心からそう思う。
「俺だってトラゾーと、みんなと日常組としてやってきてよかったよ。これからもずっと4人で走り続けていきてぇもん」
「僕も4人でやってきてホントに楽しいです。喧嘩もしますけど、やっぱこの4人じゃなきゃ日常組じゃないですし」
「そうだね。誰も欠けちゃダメなんだよ、日常組は。俺たちは4人で日常組なんだから。この先も俺たちでリスナーみんなのこと楽しませようね」
「はい、これからもみんなで頑張っていきましょう」
いろんなことがあった。
つらいことも悲しいことも、嬉しかったこと楽しかったこと。
意見の食い違いで衝突だってし合った。
喧嘩もたくさんしてきた。
でも、こうやって長くみんなとやってこれたのは、この4人じゃなきゃダメだから。
「よし、もうこのまま床で雑魚寝しようぜ。俺疲れた」
「俺も。めちゃくちゃ全速力で走ったからすげぇ疲れたよ」
「ほらトラゾーさんも床に降りて」
しにがみさんに腕を引かれてフローリングに座る。
テーブルをどかしたぺいんとがラグの上に寝転がった。
ぺいんとの左にしにがみさん、その隣に俺、その隣にクロノアさん。
「おい俺もトラゾーの隣がいいんだけど」
「はぁ?あんたこの前トラゾーさんと一緒に寝たでしょうが」
「そうそう。今度は俺たちの番だよ」
しにがみさんクロノアさんに挟まれて寝転がされた俺は困惑していた。
「いいよね?トラゾー」
「いいですよね?トラゾーさん」
「ぅひゃっ」
左右の耳に囁かれてびっくりして素っ頓狂な声が出た。
「ちょ、っと…寝るのは構いませんけど風邪引いても知りませんよ…」
「「「……」」」
一瞬無言になった3人にどうしたと目線を送る。
「…ま、そうなったら冠さんに看病してもらえばええやん」
「…ですね」
「…だね」
「えぇ…4人の看病なんてしたくないだろ…」
引っ付かれてる俺はあったかいけど。
緊張の糸も切れ、疲れも相まって瞼が下りていく。
「じーぴー、えす、は、はず、して、くらさ、いね…」
「「「……無理」」」
「は、ずせよぉ…」
視界は暗闇に包まれ、心地よい暖かさに完全に眠りに落ちた。
このぬくもりは多分、手放すことはできないのだろうなと思いながら。
因みに仲良く4人とも風邪を引いて宣言通り冠さんに看病してもらう羽目になったことは言うまでもない。
コメント
5件
3月9日って思ってれば、3月9日だよォ🫶(わたしがポン酢さんから頂いたお言葉) 14周年おめでとっ!! 日常組のみなさんのおかげで毎日楽しいです! これからも頑張ってくださいーー!
ストーカーって怖いって改めて思った... 日常組14周年おめでとォォオォォォォォオォォォォォオォォォォォオォォォ‼️
3月9日に間に合わんかった…畜生が…! いえ、怠惰発動した私が悪いですね_(┐「ε:)_ 14周年本当におめでとうございます! この先もずっと皆さんのこと応援していきたいと思います!!