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第1話 「新章──恐慌の絆」
「よし、今日はリハビリ強化デーだ!」
朝の光がカーテン越しに差し込む病室。白いリハビリ服の先生がにこやかに登場すると同時に、俺の体はなぜか「逃げろ」と全身でサイレンを鳴らしていた。だが、ここで逃げたら、絶対翔ちゃんに一生ネタにされる。
……それだけは全力で避けたい。
「かもめん、今日は歩行訓練だってさ。点滴ぶら下げながらでもできるらしい!」
翔ちゃんが俺の点滴スタンドをガラガラ押しながら、妙に楽しそうに言う。お前、完全にレンタルカート感覚だろ。
「いやいや、俺はまだ飛行機のモードだから……ほら、着陸してない感じ」
「はいはい、じゃあ胴体着陸な」
「死ぬわ!」
笑いながらも、足を一歩踏み出すたびに膝が震える。術後の体力低下は想像以上だ。だが、翔ちゃんの前で弱音なんて吐きたくなかった。アイツはもう十分、俺のことで泣いてくれてる。それ以上心配させたら、本当に申し訳が立たない。
数分後。
俺は見事に床に崩れ落ちていた。
「おい、かもめん!? ……おいっ!」
翔ちゃんの声が響く。
視界がぐにゃりと揺れて、呼吸も苦しい。喉の奥に血の味が広がった。
「……けほっ……げほっ……」
白い床に赤い飛沫が散るのを見て、俺自身が一番驚いた。
いやいやいや、吐血とか、漫画のラスボスかよ。
「なに笑ってんだお前!!」
翔の怒鳴り声に、慌てて口を押さえた。
「いや……ほら……こういうのって、サービス精神ってやつ……」
「命削るサービスいらねぇんだよ!!」
慌ただしく駆け寄る看護師。搬送される俺。
ベッドに横たえられながら、薄れる意識の中でも翔ちゃんの顔だけははっきり見えていた。必死で俺の名前を呼ぶ声が、やけに温かくて、そして重たかった。
検査の結果は、思った以上に最悪だった。
医師は静かな声で言った。
「溶連菌感染が悪化し、腎臓に菌が広がっています」
その言葉を聞いた瞬間、翔ちゃんが椅子からずり落ちそうになる。
「ちょ、腎臓に菌って……そんなことあるんか!?」
俺は笑って答えた。
「いやぁ、俺の腎臓、ちょっとシェアハウス状態みたいでさ……」
「笑ってる場合やないで!!」
「……笑ってないと、泣いちゃうからさ」
病室に重苦しい沈黙が落ちる。
俺はそれを破るように、無理やりふざけてみせた。
「腎臓って二つあるから、片方くらいシェアしても大丈夫っしょ」
「いやお前、人間の体をルームシェアみたいに言うな!」
「じゃあ俺、家賃取るわ」
「取るな!追い出せ!」
翔ちゃんのツッコミで笑いが生まれる。けど、その笑いの奥で、翔の目が赤く濡れてることに俺は気づいていた。
夜。消灯後。
病室の天井を見つめながら、俺は心の中で自分に問いかけた。
──またやっちまったな。
強がって、笑って、翔ちゃんを心配させて。
ほんとは怖くてたまらないのに。
「大丈夫」なんて言葉は、きっと翔ちゃんを安心させるどころか、逆に追い詰めているんじゃないか。
……それでも、泣き顔を見せる勇気はなかった。
布団に顔を埋めて、小さく震える。
泣き声が出る前に、必死で息を殺した。
でも、不意に布団の影から覗いた視線の先に──翔ちゃんがいた。
病室の隅で、俺を見つめていた。
「……アホかもめん」
かすかに聞こえたその声は、呆れと優しさで混じっていて。
俺の涙線は、そこで完全に破壊した。
終わりでございます…。
初心者すぎて小説書くのとっても下手ですみません!
目を燃やして(暖かい目で)読んで頂けると幸いです。
この話の前に、シリーズ1の「1/五億回の動きの向こうに。吐血しても笑う俺と翔」も見てくださいね!
そしてなんと!閲覧数が表示されません!!でもいいねは表示されます!
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