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第12話「損傷の奇跡」
朝の光がカーテンの隙間から差し込む。
だというのに、体はまるで鉛の塊のように重い。手を動かそうとすると、指先がむくんで腫れぼったく、まるで小さなバルーンのようだ。顔を触ると頬もパンパンに膨らんでいる。喉はカラカラなのに、口の中には金属の味が広がっていた。
「……うわ、俺、水風船になった気分だな」
呟いた途端、ドアがガラリと開いた。
「かもめん、おはよう!…って、顔、えらいことになっとるやん!」
翔ちゃんが駆け寄り、俺の顔をまじまじと覗き込む。
「いやいや、これは……寝る前に秘密の美容整形してきたから」
「は?寝る前に整形って、どこの世界線やねん!」
「ほら、“浮腫エステコース”ってやつ……」
「そんなコースねぇやろ!誰が予約するんや!」
翔ちゃんの全力ツッコミに、俺は思わず笑ってしまう。
でも胸の奥では、昨日の吐血と、医師に言われた「腎臓に菌が広がっている」という言葉が重く響いていた。
──笑ってごまかせる場合じゃない。
午前の回診。主治医がカルテを片手にやってくる。
「……検査結果です。腎臓の機能が大きく低下しています。通常の半分以下。体内の老廃物がうまく処理できていません」
翔ちゃんが思わず椅子からずり落ちそうになる。
「は、半分以下!?ま、まさか……そんな急に悪くなるんか!?」
俺は反射的に口を開いた。
「……じゃあ、今なら“半額キャンペーン”ってことですかね」
「アホか!命をキャンペーン扱いすんなや!」
医師は沈痛な顔で続ける。
「このまま進行すれば、透析という治療を考慮する必要があります」
透析──血液を機械でろ過する治療。
俺の腎臓がもう、自力では動けない未来。
午後、リハビリ。
点滴スタンドを押しながら歩こうとしたが、数歩で足が止まった。息が荒く、視界がぐにゃりと揺れる。
「なあ、かもめん!無理すんなよ!」
翔ちゃんが必死で肩を支える。
「お前……昨日も吐血したやろ!今度は倒れんといてな」
俺は笑みを浮かべ、なんとか返す。
「いや、最近さ、俺の腎臓、バイト感覚で週一しか働いてないっぽい」
「バイト以下やないかい。クビにせぇや!」
「クビにしたら、俺もう腎臓ゼロやん」
「……そういう笑い方すんなや」
翔ちゃんの声は笑っているようで、どこか震えていた。
冗談を言えば言うほど、翔ちゃんを不安にさせている。
夜。消灯後。
布団に顔を埋めて小さく震える。
強がって笑っても、心の奥は恐怖でいっぱいだった。
透析──血液を機械に繋ぐという現実が、少しずつ迫ってくる。
ふと、布団の影から視線を感じる。
──翔ちゃんが、じっと俺を見つめていた。
明日は…また検査か…。
腎臓、良くなってるかな。
もうみんなに…翔ちゃんに心配かけなくて済むかな。
でも、本当は分かっていた。
___これから、もっと苦しい闘いになることを。
翌朝、医師が再び現れる。
「数値はさらに低下しています。腎臓はほとんど働いていません。将来的には透析が必要になるかもしれません」
翔ちゃんが椅子を蹴りそうな勢いで立ち上がった。
「……ちょっと待て!そんな簡単に言うなや!こいつの人生かかっとんねん!」
俺は唇を震わせながら、無理に笑った。
「なぁ翔ちゃん、もし透析に頼ることになったら……その機械に名前つけてくれる?」
「おお…。“腎臓レンタルマシン・ジョージ”とかどうや?」
「誰だよそれ!勝手に海外助っ人呼ぶな!」
笑いと涙が交錯する病室で、俺は覚悟を決めた。
──この戦いはまだ始まったばかり。
未来に待つ透析という現実が、静かに病室に影を落としていた。
不安と恐怖。笑いでごまかす強がり。
でも、隣にいる翔ちゃんの温もりが、確かに俺を支えてくれる。
──次回、俺たちは、透析という新しい戦場に挑むことになる。
物語はここまでぇ
皆さんは、この病院パロでサムライ翔さんとkamomeさんどちらを体調不良にさせたいとかありますか?あったら教えてください!
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