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@ きみ以外なんて選ばないよ
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敦が怪訝そうな顔でこちらを覗き込んでくる。
「え?う、ううん!」
敦を安心させないと
これ以上、彼に余計な心配をかけてはいけない。
そう思ってジンギスカンに橋を伸ばした。
白飯の上にそれを載せてご飯と挟んで食べると、口の中に強烈な衝撃が走った。
「!?お、おいひい…」
目を見開き、思わず口に手を当てて声を漏らす。
予想以上に味がした。
久しぶりに食べるものだからだろうか。
濃いめのタレの味わいや、ラム肉のジューシーな旨味が
ぼやけた味覚の壁を突き破って、確かに脳へと届いたのだ。
「そう?それならよかった」
彼の顔に安堵の笑みが広がった。
正直、美味しさを感じれたことに驚いた。
まだ僕の舌は死んでいなかったんだ、という小さな希望が芽生えた。
それなら…と、調子に乗って
隣に添えられたインスタントの味噌汁にも手をつけてみるものの
結果は変わらず、食べ慣れているものは味がしないどころか、不味かった。
口に含んだ瞬間、やはりあの不快な風味が広がって、飲み込むのがやっとだった。
味のするジンギスカンがあるだけ、まだ救いかもしれない。
そんなことを考えて一喜一憂していると、敦が橋を止めて口を開いた。
「今日は、なにして過ごしてたの?」
「え」
思わず情けない声が漏れた。
〝今日はなにして過ごしてた〟
その何気ない一言が、今の僕には尋問のように響いてしまう。
それはつまり、皿を洗っていなかったことを責められているのだろうか。
それとも、数時間もぐうたら寝ていたことに怒っているのだろうか。
外で頑張ってるのに、こいつは寝てるだけとか、思わせてしまったのだろうか。
過去の嫌な記憶
浜崎くんの言葉が自然と思い起こされてしまう。
〝お前見てるとイライラすんだよ〟
〝ゴミが〟〝クソが〟
〝俺から逃げたくせに幸せそうにしやがって〟
罵られた、あの痛みが蘇る。
敦は、そんなこと思わないと思う。けど…
(お皿のこと、やっぱり怒ってるのかな…)
僕は膝の上で拳を握りしめ、白状するように言葉を絞り出した。
「その…お昼ご飯食べて、あとでお皿洗おうと思ってつけてたんだけど…そのまま寝ちゃって…っ」
「そっか。じゃあ今日はゆっくり休めたのかな」
敦のトーンは変わらない。
けどそう言われると、更に罪責感を感じてしまう。
優しくされればされるほど、自分が悪人のように思えて、まるで責められているように感じてしまう。
敦にそんな思いはないのかもしれない。
結局は僕の被害妄想だ。
それでも、敦の声が低くてびっくりしてしまった。
怒りを抑えているのではないかと、怯えが勝ってしまう。
「ご、ごめん。しゅん、怒ってる…?」
「え?全く…もしかして怒ってるふうに聞こえた?」