それから2日後…
プルルル…
プルルル…
カチャッ
「はい、萬田金融。」
「もしもし… この前事務所にお邪魔した米原ですけど…。」
「あぁ。あんたの借金返済の期日今日まででっけど銭は用意出来てまんな?」
「あ…残りのお金の支払いの準備出来てるんやけど、こっちも忙しくて事務所に返しに行く時間がないからそっちから取りに来てもらわれへんやろか?」
「別にそれは構いまへんけど、どこに取りに行ったらよろしいんでっか?」
「今日の20時にコンラッドホテルのロビーで待ち合わせできる?」
「コンラッドホテルでんな。ほな20時に取りにいかせてもらいまっさ。」
「あの…それと!。」
「まだなんかあるんでっか?」
「出来たら…萬田くん1人で来てほしいんやけど…。」
「………。頼まれんでも、今は竜一休ませとるからどうせわし一人や。」
「あ…そうなんや…。 そ、そしたらまた後で!」
「おう…。」
カチャ…。
「ふっ…。なんぞ魂胆ありそうやな。」
はぁ…なんで萬田くんに電話するだけでこんな緊張せなあかんのよ…。
でもこれでやっと20年前の萬田くんへの心残りを解消して、あの約束を果たせる…
なんの因果か分からんけど再会できた。 その上、萬田くんは私の事覚えてた あの日からずっとずっと…
運命なんて言葉信じてないけど…
でも私にとって萬田くんは色んな意味で特別な存在やったんや…
だから今夜こそは…。
20時 コンラッドホテル
「いらっしゃいませ。」
コツコツコツ………。
「あ…萬田くん。」
「約束通りやな。ガキの頃みたいにまた姿現さへんと思うたで。 」
「あの時の事はごめんって…。 ほんっまに根に持つタイプやね萬田くん……。」
「だからこの家業が勤まるんや。 銭は用意出来てんな?」
「もちろん。でも…ここでお金渡すのもなんか嫌やし…ここのホテルに今日泊まってるから部屋で渡させて?」
「………。」
「別に変な事企んでるわけやないよ?部屋のキー渡すから先に入って部屋の中確かめてくれてもええし。」
「……まぁええ。なんぞあったらその分の金額また上乗せして請求させてもらうだけや。」
「……それでええよ。じゃあ部屋まで案内する。」
ピンポーン…
ガラ…
「ここが部屋。 これがカードキー。」
「……はよ開けてくれるか。」
「え?先に部屋の中、確認せんでええの?」
「そんなもん必要ない。」
「そ、そう…。じゃあ…」
ピピーー カチッ
ガチャっ
「どうぞ入って。 」
サッ…
カチッ
シュボッ…
「ふぅーー…。 ほな残りの260万渡してもらおか。」
「あ……そうやね。
はい、これが残りのお金。」
ガサッ
シャッシャッシャ…
お願い…1秒でも長く
この時間が続いてほしい…。
手際よくお札を数える萬田くんの手つきが今は意地悪にさえ見えてくる…
「…ん、確かに260万。 これであんたの借金は全額返済や。 ま、正しくはあんたの後輩の借金やけどな。」
「私もほんまアホやわ…。ムキになって他人の借金肩代わりするやなんて。」
「ワシは銭さえ返してもろたら他のことは関係あらへん。他人の借金肩代わりするて、決めたんもあんたの勝手や。」
「分かってる。でも… あの子の借金わざわざ肩代わりしたからこうやって萬田くんと再会できたって思ったらな……。 全然損したなんて思ってないねん。」
「……………。」
「……あ!わざわざ来てもらったしルームサービスでも頼むわ!お酒なにがええ?」
「いや。銭はきっちり返してもろたからもうそれでええ。あんたも忙しいんやろ。 これで帰らしてもらいまっさ。ほな。」
サッ…
「あ…。」
萬田くんとこれでもう一生会われへんの…?
やっと会えたのに…?
このお金だけで…
そんなん……
「そんなん嫌や… 待って!!!」
「……なんや急に。」
「忙しくて時間無いなんて… 嘘やねん…。」
「嘘や……?」
「ほんまは萬田くんと二人になりたくて…この部屋取った…。」
「何言っとるんや……。 気でも狂ったんか。」
「私…20年前の約束が忘れられへんくて……萬田くんにまた会えるかもしれんと思って5年前、大阪に帰ってきてん…。それでこうやってやっと会えたのに…。 」
「ただの金貸しのワシに今更会うて何の得になるっちゅうんや。」
「得とか損とか…そんなんと違う。萬田くんの言葉は信じられるから、本当の事言うてくれるから…。 」
「本当も嘘もあるか、 ワシはただ思った事言うてるだけや。」
「だから信じられるねん。」
「……?」
「綺麗でその場しのぎの甘い言葉並べ立てて、良い人ぶる人間なんて腐る程見てきた。 でも…そういう人間ほどいざ自分の立場が危うくなると言い訳して逃げ出すようなずるい奴ばっかりやったわ…。」
「ワシはそういう奴らと違う言うんか?そうやとしたらワシの事買いかぶり過ぎや。」
「そんなこと…。」
「ワシかて銭のためやったらどんなことでもする。銭のためやったら平気で女ソープに叩き売る、人の体の事なんかどうも思っとらん。誰かさんが言うてた通りちっさい男や。ふっ。」
「……。お金のためやないやろ…。」
「何を言うてんねん、ワシは銭のために生きとる人間や。」
「違う…。自分の私利私欲を肥やすためだけやったら端から他人にお金なんて貸す必要ないやろ…? 楽して甘い汁吸おうとする人間は一遍、地獄見な自分の強欲さに気付かれへん…
貸りたもんは返す。
人間として当たり前の道理を通させてそれを教えてる…
弔いのために…。」
「…………!?
アホか…もう十分やろ…
そろそろ帰らせてもらうで。」
嫌…
離れたくない…
「お願い待って!」
ギュッ!
「…………!?」
部屋を出ていこうとする萬田くんの腕を思わず掴んでいた…。
どうしても離れたくなくて
これで終わりなんかにしたくなくて…
自分でもなんでこんなに萬田くんに惹かれてるのか分からんけど…
もう二度と会えへんと思うと怖くてたまらんかった…。
「お願い行かんといて…… 1人になりたくない…。」
「離さんかい。」
「嫌や………。」
「ちっ…。お前はほんま頑固やのぅ…。」
「萬田くんの方こそ頑固やんか…。」
「………。何が望みや。」
「萬田くんの側におりたい …。それだけ…」
「それは無理な話や。」
「なんで…?」
「ワシは銭にしか興味無いんや。金貸しが女と一緒になったら身を滅ぼす。それがワシら金貸しの世界での習わしや…分かったやろ。離さんかい。」
「……………。
そしたら私に1000万貸して。
それやったらええやろ。」
「…米原、ええ加減にせえよ。」
「お金だけが萬田くんとの繋がりなんやろ?ほな私に今すぐ1000万貸してよ!」
「ドアホ!担保も無しにそんなもん貸せる訳ないやろ!」
「担保はある!」
「どこにあるいうんや!」
「私の体や。」
「お前何言うとるんや…。」
「さっき萬田くん、人の体の事なんかどうも思ってないって言ってたやん…。
そやから担保は私の体や。
借金払われへんくなったら生命保険かけるなり、私の体どっか売るなり、バラバラにして好きなようにしてくれたらいい…。」
「なんでそこまでワシにこだわるんや。」
「好きやから!!!
萬田くんの事が好きやから…。
ただそれだけ…」
「………さっきも言うたやろ。
金貸しは女と一緒にはならへんて…」
「そやったら………。 今夜だけでいいから…
私の事、抱いて。」
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