第7話「神託の影と、新たなる監視者」
王都・聖光教国の大聖堂――
神の意志が宿るとされる聖なる空間にて、
神官たちは今朝の祈りを捧げていた。
「……この空に、聖光あれ……」
だが、その中心に立つひとりの神託者が突然目を見開く。
「ッ……神託が、降りた……!」
彼の声が、静寂を破った。
◆ ◆ ◆
同じころ――
アレスとリアは、冒険者ギルドでの依頼帰りに、ささやかな夕食をとっていた。
パンとスープ、そして少しの干し肉。ささやかながら、彼らにとっては“勝利の味”だった。
「ふふ……あの依頼、成功して本当によかったね」
「うん。まだまだ最強のスキルの全貌はわかってないけど、
リアの〈共鳴〉があると、力が解放される感じがするんだ」
「そ、そうかな……?」
照れくさそうに笑うリアの前で、アレスは真剣な顔をする。
「本当に、リアがいてくれて助かってる。……ありがとな」
その言葉に、リアは言葉を詰まらせ、小さくうなずいた。
だが――その穏やかな時間は、長くは続かなかった。
◆ ◆ ◆
ギルドの奥。
ギルドマスター室の扉の向こう、数人の男たちが密談を交わしていた。
「“最強スキル”と“共鳴の少女”か……」
そう呟くのは、ギルド本部から派遣されてきた男。
顔に無精髭を蓄え、灰色のマントを羽織るその姿からは、只者ではない空気が滲み出ていた。
「記録にある“神託候補”と一致している可能性がある。
勇者アレスと奴隷少女リア……この二人を、監視対象とする」
「承知しました。尾行部隊を配備します」
「……だが、気をつけろ。下手に刺激すれば、“あのスキル”が暴走するかもしれん」
◆ ◆ ◆
その夜――
アレスとリアは安宿の小さな一室で、ベッドの端と端に分かれて眠りについていた。
だが、アレスは眠れず、窓から夜空を見上げていた。
(この世界は、思ったより複雑そうだ……)
レベル1、ステータスオール1。
それでも戦えたのは〈最強〉スキルと、リアがいたからだ。
(スキルの真価を知るには、もっと戦って、経験を積むしかない……)
彼の決意は、次第に“戦う者”のそれへと変わっていく。
そして同じ空の下――
黒いフードを被った謎の人物が、アレスたちの宿の屋根の上で呟いた。
「……見つけたよ、“最強の勇者”」
月明かりの下、その目は薄く光っていた。
《第8話へ続く》
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