「間に合ったー!ギリギリセーフ!」
日本をお姫様抱っこしたアメリカが会議室に飛び込んだ。
「ギリギリアウトですよ、バカ息子…」
それに対して紅茶を飲んでいたイギリスが辛辣な言葉をなげかけた。
「いやセーフだろ!」
「アウトです」
2人がそんな言い争いをする中アメリカの腕に抱かれたままになっていた日本は顔を真っ赤にして言った。
「あの、下ろしてください…」
「嗚呼!今下ろすぞ!」
床に下ろしてもらった日本はそのまま自席に着いた。
パンパン!
会議室に手を叩く音が響いた。音の正体は国連、参加国が揃ったというのに会議が始まらない状況に痺れを切らしていたのだ。
「雑談はそのくらいに、早く会議を始めますよ、」
その言葉に全員が席に着いた。それを確認した国連はマイクを持ちスクリーンに今回の議題を投影し会議が始まった。
「それでだな、やっぱりここはこうするべきだと思うんだよ、」
「アメカスお前馬鹿アルか?そんな事したら我らに利益無いアルよ」
「んだとー!」
いつものごとく会議は順調に進むわけがなく中国とアメリカの喧嘩が勃発してしまった。口を挟むのもなんだかなぁ…と日本はお茶を飲みながらことの成り行きを見守っていた。
と、その時。
「きゃーーー!!」
会議室の窓の外から甲高い悲鳴が聞こえた。その後も次々に『うわぁぁぁ!』や『助けてくれ!』などの声が聞こえ全員がなにか異常事態が起きていることを察した。
「なんですか、この悲鳴…何かあったのならすぐに様子を…!」
国連がすぐに会議室を出ようとしたがそれよりも先にアメリカが窓を開けてそこから飛び降りて行った。それを見ていた国たち全員が今外がとんでもない事になっているかもしれないということを忘れて叫んだ。
「いやここ10階なんですけど!?!?」
と……
何はともあれ見事に地面に着地したアメリカは目の前の惨状に言葉を失ってしまった。町中のAIを使った装置が暴走し人々に襲いかかっていたのだ。アメリカが呆然としていると後ろから女性の声がした。
「お願い、助けて…!」
女性は下半身が鉄骨に挟まれていて自力では動けないようだった。アメリカがそちらを向いた瞬間にまた女性が叫んだ。
「後ろ、!危ない!!」
アメリカが後ろを振り向くとそこには自動運転車が突っ込んできていた。アメリカは国の化身のため死にはしない。しかしこの女性を見捨てる訳には行かず衝撃に身構えたがいつまで待っても衝撃は来なかった。
ドガッ!
と音がしてアメリカが顔を上げるとそこにはフランスがいた。アメリカの目の前まで迫っていた自動車はフランスに蹴り飛ばされたらしく側面がベッコリと凹んで煙を上げていた。
「フランス!ありがとな、助かったぜ!」
「もうちょっと後先考えてよね!僕まで10階から飛び降りたんだから!」
アメリカとフランスは協力して女性の上に乗っていた鉄骨をどかしとりあえず会議室に戻ることにした。
「アメリカさん!」
会議室に戻るなりアメリカは日本に抱きつかれた。
「に、日本!?」
「心配したんですからね!まさか10階から飛び降りるなんて…それに、アメリカさんが車に突っ込まれそうになった時フランスさんが飛び降りて助けてくれなかったら今頃……」
泣きそうな顔でアメリカを叱る日本をフランスが宥めた。
「まあまあ、アメリカもあの女性も無事だったんだからとりあえず良しとしようよ、それよりこれからのことを考えなくちゃ…」
「そうですよね、ごめんなさい。取り乱してしまって…」
再び席に着いた国たちは国連司会の元この状況にどう対応するべきか話し合いを再開した。
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