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🦈「やったー!」
こさめは金色の瓶を抱えながら上機嫌だった。
🦈「配達だ〜」
🍵「遊びじゃないからね」
隣を歩くすちが穏やかに言う。
🦈「分かってるもん」
🍵「本当に?」
🦈「たぶん」
🍵「たぶんなんだ」
すちはくすっと笑った。
二人は遺失物センターの転移ゲートへ向かっていた。
落とし物を持ち主へ返すための特別な通路だ。
普段なら配送課の仕事。
でも今回は特例だった。
『人類の未来』との反応が出たこさめの様子を観察する目的もある。
もちろん、すちはそれを本人には言わなかった。
言ったら絶対に拗ねる。
🦈「こさめ、監視されてる?」
🍵「保護されてる」
🦈「監視だ」
🍵「保護だよ」
🦈「監視」
🍵「保護」
🦈「監視」
🍵「保護」
結局同じようなやり取りをしている。
ゲート前の職員たちは慣れた顔で見送っていた。
「行ってらっしゃい」
🦈「はーい!」
こさめが元気よく手を振る。
次の瞬間。
白い光が二人を包み込んだ。
―――
目を開けると。
そこは病院だった。
白い廊下。
消毒液の匂い。
遠くから聞こえる足音。
こさめは周囲を見回した。
🦈「ここが人間界かぁ」
🍵「一応ね」
🦈「一応?」
🍵「厳密には世界の境目に近い場所」
🦈「難しい」
🍵「そうだね」
すちはあっさり認めた。
こさめは難しい話が苦手である。
すちはもう知っている。
二人は病室へ向かった。
案内板を頼りに進み、目的の部屋へ辿り着く。
コンコン。
ノック。
返事はない。
すちが静かに扉を開けた。
病室の中。
小さな男の子がベッドの上で膝を抱えていた。
七歳くらい。
目は真っ赤だった。
ずっと泣いていたのだろう。
こさめは少しだけ胸が痛くなった。
🦈「こんにちは」
男の子がびくっと肩を震わせる。
「だれ……?」
🦈「配達員!」
「え?」
🦈「勇気届けに来たよ」
男の子は意味が分からない顔をした。
当然である。
するとすちが優しくしゃがみ込んだ。
🍵「君、大切なものを落としてしまったんだ」
穏やかな声だった。
不思議と安心するような。
男の子が小さく頷く。
「こわい……」
🍵「うん」
「しゅじゅつ、こわい」
🍵「そうだよね」
否定しない。
大丈夫とも言わない。
ただ受け止める。
その優しい声に、男の子の肩から少し力が抜けた。
その時。
こさめが瓶を取り出した。
🦈「はい」
「?」
🦈「これ」
「なに?」
🦈「君の勇気」
男の子は首を傾げる。
でも。
瓶の中の金色の光を見た瞬間。
目が大きくなった。
「きれい……」
光がふわりと浮き上がる。
金色の粒が空中に舞う。
そして。
優しく男の子の胸へ吸い込まれていった。
ぱあっと光が広がる。
暖かい風が吹いた気がした。
次の瞬間。
男の子の表情が変わった。
「……あれ?」
不思議そうに胸を触る。
「なんか」
🦈「うん?」
「まだこわいけど……」
男の子は少し考えて。
そして笑った。
「がんばれるかも」
こさめもつられて笑う。
🦈「それならよかった!」
男の子のお母さんが涙ぐみながら頭を下げた。
母「ありがとうございます……」
けれど。
二人にはその言葉は届かない。
配達が終われば、人間は彼らの存在を忘れてしまうからだ。
神様の遺失物センターの規則。
病室を出る頃には、お母さんも男の子も「なんだか元気が出た」としか覚えていないだろう。
廊下へ出たこさめは少し寂しそうだった。
🦈「忘れちゃうんだね」
🍵「うん」
🦈「せっかく会ったのに」
すちは少し考えた。
🍵「でも、勇気は残るよ」
🦈「え?」
🍵「忘れても、なくならない」
こさめは目をぱちぱちさせた。
それから少し笑う。
🦈「そっか」
その時だった。
突然。
ズキッ。
激しい痛みが頭を貫いた。
🦈「っ!」
こさめがよろける。
🍵「こさめちゃん!?」
すちが慌てて支える。
視界がぐらぐら揺れる。
病院の廊下が消える。
知らない景色。
青空。
どこまでも続く雲。
そして。
誰かがいる。
後ろ姿しか見えない。
その人物が振り返る。
『やっと会えたね』
優しい声。
懐かしい声。
でも顔は見えない。
『未来を――』
そこで映像が途切れた。
🦈「っは……!」
こさめが息を呑む。
気づけば廊下だった。
すちは心配そうに覗き込んでいる。
🍵「大丈夫?」
🦈「……うん」
嘘だった。
全然大丈夫じゃない。
だが、それ以上に気になることがあった。
🦈「すち」
🍵「なに?」
🦈「こさめ、誰かに会ったことある気がする」
すちの表情が少しだけ固まる。
🍵「誰に?」
🦈「分かんない」
こさめは首を振る。
🦈「でも」
胸の奥がざわつく。
🦈「あの人、こさめのこと知ってた」
その瞬間。
すちの瞳に、ほんの一瞬だけ焦りが浮かんだ。
まるで。
その言葉を聞く日が来ることを、ずっと恐れていたみたいに。
コメント
1件
おお、第6話読んだわ!「勇気の配達」ってタイトル通り、こさめが男の子に勇気を届けるシーンがすごく温かくてじーんときた。特に「忘れてもなくならない」ってすちの言葉が刺さる…。でも最後の頭痛と謎の後ろ姿、そしてすちの焦った表情で一気に空気変わったな!「未来を」って続きが気になりすぎる。こさめの過去と人類の未来の反応、どう繋がるんだろう。次話めっちゃ待ってる🔥
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