「さむ……」
薄着だった俺は外の寒さに驚いた
早く家に帰ろう
タクシーを捕まえ、家まで行く
車に揺られながら、俺は外を眺めていた
辺りはもう暗くて、帰宅中のサラリーマンがほとんどだった
時々、幼い子供と母親と父親が歩いていたり
カップルが手を繋いで歩いていたり
どれも、楽しそうで、明るく彩られていた
……俺の心とは、正反対だ
どす黒く染まって、数え切れないほどの人々を殺して、
……恋人も、殺さなければならない
せめて最後は、最後だけは
一緒に居たいなぁ
家に入ると、美味しそうな匂いが漂ってきた
「いい匂い〜」
キッチンに行こうとすると、
「ダメだよ?手洗ってきて」
「はーい」
咎められ、洗面所に手を洗いに行く
鏡の前で”宮舘涼太の恋人”の表情を作る
これで、”裏”の仮面から”恋人”の仮面へと変わった
リビングに行くと、箸が並べられていた
キッチンへ行くと皿に盛り付けていた
もう少しで、殺さなきゃなのか……
やっぱり、寂しい
と、ポケットに入れっぱなしだったスマホが震える
電話のようだった
俺は、階段を上がり、自分の部屋に行く
もちろん、鍵を閉める
画面を見ると、琥珀からだった
「もしもし?」
「柘榴が、帰ってこない」
今にも泣きそうな声で、俺に伝えた
「柘榴が……?」
それは、信じられないことだった
柘榴は俺たちの同期で、組織の中でもトップクラスに位置する奴だ
今日は、最近目立ってきた組織へ調査に行ったと聞いた
柘榴に、そんなことがあるなんて……
「俺が柘榴を探すんだけど、一緒に探してくんねぇ?」
だてさんが、料理を作ってくれた
柘榴を、探したい
けど……
「今どこ?」
「来てくれんの…?」
「同期のピンチだもんね」
琥珀の居場所を聞き、俺はリビングに戻る
「誰から?」
「高校の友達。今から遊べるかって」
「いいじゃん。行ってきなよ」
「せっかくご飯作ってくれたのにごめんね」
「いいよ。行ってらっしゃい」
コートを掴み、家を出る
近くに車が停めてあった
見た事のある車だったので近づく
中を覗くと琥珀が運転席に座っていた
俺は助手席の扉を開けると車の中に入った
「お待たせ」
「シートベルトしろよ?」
「分かってるって」
カチッと音を立てると車は動き出す
琥珀の顔を見れば、焦っているように思えた
「大丈夫だから」
そう声をかける
「俺らにはこれがついてる」
そう言って、ブレスレットをさわる
俺のブレスレットには翠玉石
琥珀のブレスレットには琥珀石
柘榴のブレスレットには柘榴石
翠玉の石言葉は「幸運」「成功」「繁栄」
俺らが組織に入りたてのころ、俺が3人の中で1番能力が劣っていた
だから、成功を願い、幸運を願い、
“翠玉”という名前にした
琥珀の石言葉は「活性」「繁栄」「長寿」
琥珀は3人の中で1番元気だった
いっつも笑顔で、笑わせてくれた
琥珀石にはポジティブさを取り戻す効果があるとされている
だから、”琥珀”
柘榴石の石言葉は「情熱」「真実」「友愛」
柘榴は3人の中で1番情熱的だった
柘榴も、神楽と同様、殺し屋に殺された
でも神楽とは少し違う
殺した殺し屋に復讐をするために、この組織に入った
いつも、真実ばかりを求め、本当に殺すべきなのか
そんなことばかり考え、俺らのことを大事にしてくれた
「情熱」と「真実」と「友愛」の石
だから”柘榴”
「きっと、柘榴なら大丈夫」
そう思えたのは、何故だろう
『はいオッケー!!』
どっ、と力が抜ける気がした
「お疲れ様です」
琥珀役の人が優しく微笑みかけてくれる
次の話ってどうなるんだろう
みんながいるところに行って台本を探すけど、ない
鞄の中にもないから、もしかしたら……
と青ざめていると、
「阿部ちゃんごめん、借りてた」
「お前かよ!!」
めめが俺の台本を持ってこちらにやってきた
俺の焦りを返せ
コメント
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なんか、頭こんがらがってきた笑
やっぱりドラマの撮影だった! ドラマじゃなくて現実でもあべだてが付き合ってたらいいな✨️ 続き楽しみにしてます!