ニャー
「あー、分かった。分かったってば」
7月某日。
ジメジメとした部屋の中を見回し、ゆっくりと起き上がった。
「…」
もういない愛猫の事を思うと、私は軽く片手で顔を覆った。
そして、少しため息をついた。
何の鳥かは分からないが、此の小さなアパートには、朝を迎える鳴き声が響いている。テーブル、ベット、テレビ。其れ位しかない、粗末な部屋だ。
『今日の気温は、27度と、暖かく過ごしやすい気候になるでしょう。続いては…------』
チンッ
トースターの合図が聞こえて、私はパンを取り出した。
「今日も仕事か…」
何とも憂鬱そうに着替え、パンをくわえる。
「いってきまーす」
愛猫がいた頃は、もっとも、名残惜しそうになったものだ。
一瞬寂しそうな顔をすると、私はドアを開き、鍵を閉めた。
アパートの駐車場には、場違いなほどの存在感を放つ、深い紺色の自転車があり、私はその自転車に、迷うこと無く足を掛けた。
「おはようございま~す」
「、おはよう」
いつものように笑顔で小学生に挨拶をする。
愛猫の亡くなった悲しみを隠すように。晴らすように。
信号に差し掛かり、自転車をこぐ足を休めていると、突然荷台の部分がのしっと重くなった。
「せぇ~んせっ!」
後ろを振り向くと、ランドセルを背負った、 短髪で元気なオーラをまとっている生徒が当然のように乗っていた。
「こら、自転車の2人乗りはダメでしょう~」
「だって、せんせいがいたんだもん」
私は困ったように眉を下げると、信号を確認し、一枚の写真を取り出した。
「?」
そこには、私の愛猫の【七(なな)】が写っていた。
「猫だ!かわいい」
「でしょう。先生の愛猫なの。」
私は愛おしそうに、其れを勘づかれないように、そっと写真を撫でた。
「あいびょうって何」
「愛犬みたいなもの。その猫バージョン」
「ほ~ん…」
そこで信号が青に代わり、私は自転車を止めて後ろの生徒を下ろすと、急いでまた自転車に飛び乗った。
「じゃあ、また学校でね」
「うん。」
生徒は名残惜しそうに自転車を見つめると、手を元気良く振って、歩きだした。
そのまま道路脇をしばらく走っていると、1台の車が、目の前を曲がっていった。
その後
車が通り過ぎた後、気づくと、草むらが生い茂っていた。
(こんな所あったっけ)
私は道を間違えたのかと辺りを見回した。
全面、草むらだった。
(何コレ、遅刻してしまう)
今来た道を戻るように、行くはずだった方向から自転車を反転させ、反対方向に走った。
通常だと、信号があるはずだ。
信号があるどころか、大分走っても、いつまでも草むらで、周りが見えなくなっていた。
(ここは…どこ…………?)
自転車の籠の中の鞄を漁ると、スマホが入っていた。
ホッとしたように顔認証で鍵を開けると、電波は圏外な事に気付いた。
(そんな…)
私は途方にくれて、そのままたちずさんだ。
すると、
声が聞こえた。
コメント
4件
ファッ!?😱
簡潔に言うね 天才かよ