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大森 元貴(おおもり もとき)
28歳。静かな町の片隅にある小さな香水専門店「MORI」店主。香りに異常なまでのこだわりがあり、調香師としての腕も超一流。だがその分人間関係は不器用で空気が読めない。穏やかな雰囲気だがたまに毒を吐く。
藤澤 涼架(ふじさわ りょうか)
30歳。都内の某ブラック企業勤務。日々終電、休日出勤、理不尽な上司の指示と叱責の嵐で疲弊している。その結果不眠症になってしまった。感情を押し殺すことに慣れてしまっているが、本来は繊細で心優しい性格。趣味は夜の散歩。
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Prolog
香水店「MORI」は繁華街から少し離れた路地裏にある。外観は地味で通りすがりにふらりと入るような人はほとんどいない。だが、そこに並ぶ香水たちはどれも他にはない匂いを持っていた。
ある日、深い隈を携え、疲れ切ったサラリーマン風の青年が、ふらりとその店の扉を開けた。
「香水屋、なんてあったんだここに」
彼――藤澤 涼架は、今日も会社で上司に怒鳴られ、後輩の尻拭いをし、終電を逃した帰り道だった。
「いらっしゃいませ。….お客様恐れ入りますが眠れない夜が続いているのではないでしょうか。睡眠用と回復用、どちらの香りをお作りしましょうか?」
声をかけてきた男ー店主の大森は、藤澤をまるで香りを嗅ぎ取るような目で見つめた。
「…どっちも、っていうのはダメですか?」
藤澤の答えに、大森は小さく笑った。
「世界に一つだけのお客様のためだけの香り、作ってみましょうか」