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後日──4月1日…エイプリルフールの日


今日俺は仁さんに近況を報告するべく、カフェで待ち合わせをしていた。


窓際の二人席に腰掛ける。


ガラス越しに見える街並みは、春の陽射しに照らされて穏やかだ。


桜の花びらが風に舞って、歩道を歩く人々の足取りも軽やかに見える。


新しい季節の始まりを感じさせる


そんな暖かな午後だった。


コーヒーを片手に仁さんを待つ時間は、少し緊張していたものの、どこか期待に満ちていた。


カップの縁を指でなぞりながら、この前の出来事を思い返す。


兄との和解、そして仁さんの涙……


あの時見せてくれた本当の気持ちを思い出すだけで、胸が暖かくなる。


今日はエイプリルフールだけど、俺が仁さんに伝えたいことは真実だけだ。


嘘なんてつけない。


この人の前では、いつだって本当の自分でいたいから。


しばらくしてドアベルが控えめに鳴り、仁さんが入ってきた。


今日は白いシャツに黒いパンツ姿だった。


シンプルな装いが程よいヌケ感を醸し出していて、相変わらず絵になる人だ。


店内を見回す仁さんの横顔は、いつものようにクールで端正で、思わず見とれてしまう。


春の陽射しが仁さんの横顔を照らして、まるで映画のワンシーンみたいに美しい。


「仁さん、こっちです!」


と声をかけると、仁さんも軽く手を挙げて応えてくれた。


俺の方に向かって歩いてくる仁さんの姿を見ているだけで、なんだか心が躍る。


歩き方一つとっても、この人は本当に様になっている。


彼の表情は普段通りクールで感情を読み取りにくいが、つい先日の仁さんの涙を思い出すと、別人のように思えてくる。


あの時見せてくれた本当の仁さんを知ってから、この人への想いがより一層深くなった気さえする。


仁さんが俺の向かいの席に座ると、近くにいたウェイターさんに声をかけて


俺と仁さんのアイスコーヒーを注文した。


春とはいえ、日差しが強くて少し暑いくらいだったから、冷たい飲み物が欲しかった。


「お疲れ様です」と仁さんが言うと


「こちらこそ、お忙しい中ありがとうございます」と俺も返す。


何度会っても、仁さんを前にすると少し緊張してしまう自分がいる。


でも、それも含めて、この人といる時間が愛おしい。


カフェの中は程よく賑わっていて、周りからは他のお客さんたちの楽しそうな会話が聞こえてくる。


でも俺の意識は、目の前に座る仁さんだけに集中していた。



◆◇◆◇


数分後、ウェイターさんがアイスコーヒーを運んできてくれた。


グラスに注がれた濃いコーヒーに氷がカラカラと音を立てて、涼しげな音が響く。


仁さんは一口飲んでから、いつものようにゆっくりとしたペースでコーヒーを味わっている。


その仕草も、どこか上品で洗練されていて、やっぱりこの人は何をしても絵になる。


俺も少し緊張をほぐすために、アイスコーヒーを一口飲んだ。


冷たくて苦味の効いたコーヒーが喉を通っていくと、少しだけ落ち着いた気がした。


「LINEじゃ、ちゃんとお兄さんと話せたって言ってたけど…」


仁さんが半分ほど飲み干したアイスコーヒーのカップを机に置いて、尋ねてきた。


その声には微かな心配の色が滲んでいるように聞こえた。


仁さんの表情を見ると、俺のことを本当に気遣ってくれているのが分かる。


「はい、おかげさまで。なんとか、兄とは和解できたんです」


俺が少し肩の力を抜いて答えると、仁さんの表情が僅かに柔らかくなったのが分かった。


きっと俺のことを心配してくれていたんだろう。


「そりゃ良かったな」


と、仁さんも僅かに眉間の皺を緩ませてくれた。


その安堵の表情を見ていると、仁さんが俺のことを本当に心配してくれていたんだということが改めて実感できて、胸がじんわりと暖かくなる。


「はい、それでそのあとに仁さんのこと、謝られて」


そう言った瞬間、仁さんの表情が微かに変わったのが見えた。


「俺のこと?」


仁さんの眉がピクッと上がった。少し驚いたような、でもどこか興味深そうな表情だった。


コーヒーカップを持つ手も、一瞬だけ止まったように見える。


俺は昨日の出来事を思い出すように話し始めた。


あの時の兄の表情、言葉の一つ一つを思い返しながら。


兄が仁さんのことを誤解していたこと、そしてそれを解こうとしてくれたこと。


「その、それて仁さんと俺と兄さんの3人で会って話がしたいという話になって」


と俺が続けた。すると仁さんの眉がピクッと動いた。明らかに関心を示している様子だった。


「本当か?」


どこか嬉しそうに聞いてきた。


仁さんのその反応を見て、俺も嬉しくなる。


きっと仁さんも、兄に認めてもらいたいと思ってくれているんだろう。


この人が俺との関係を真剣に考えてくれているからこそ、兄との関係も大切にしたいと思ってくれているんだ。


「はい、それで…先に確認したいことがあって、今日はお呼びしたんです」


そう言いながら、俺の心臓は早鐘を打ち始めていた。


これから仁さんに話すことは、俺たちの関係にとって本当に重要なことだ。


嘘偽りない俺の気持ちを彼に、改めて伝えるときが来たということだ。

向日葵が散る前に。

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