テラーノベル
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それから、体内時計の目覚ましが鳴り目が覚めた。
借りた浴衣は汗で軽く濡れていた。
「よぉ、うなされてたぜ」
自分よりも早く優也が起きていた。多分、僕がうなされていて目が覚めたのだろう。
「そうか‥‥」
「なに?あの時の夢?」
「あぁ。」
何度も見る。何度も。何度も。何度見たか覚えていないほどに見た夢。
天気は絶好のバイク日和の快晴。しかし、心は曇天。最悪だ。それから軽い朝食をいただいて宿を出た。宿から軽くバイクを走らせると、人魚の浜にはすぐについた。二人ともピースで人魚の浜をバックに自撮りをして、バイクにまたがり家に帰った。
今日は襲撃を受けなかった。しかし、昨晩闘った場所は封鎖されていた。
それから数日たって、始業式になった。始業式といえば、校長の話が長いイメージがあるが、この学校は違った。校長のあいさつ4文字。
「がんばっ」
大丈夫?夏休み明けだよ。2学期の始まりだよ。文化祭とかいろいろあるじゃん。一年で一番長い学期じゃん。主語ないし、生徒への敬意もなければ、文字もない。いろいろと大丈夫だろうか。
まぁいいか。早く帰れるし。
次の日もまた次の日も授業。変わらぬ人生。襲撃は来ない。平賀さんの世界には行く。当たり前の日々。
唯一、萩野さんから、『cakeの手記のコピー』とやらの捜索を頼まれたが、どこを探せばいいんだよ案件すぎて、探す気にもなれない。警察に頼っていただけると助かるのだが、変異者についての内容が書かれているらしく。真面目に探さないといけない。命令が出てからはや、3週間。萩野さんがそれだけ探して見つからないのだから、焼却場に行ったと考えた方がいいだろう。
『cakeの手記のコピー』を探すにあたって、一応情報はもらっている。黒革製ノートタイプで、それに手記のコピーを挟んでいるものらしい。
見つかるはずのないそれは、思わぬところで発見した。それは、現代史の授業の終わりだった。
「皆さん。僕の研究が証明されるんです。見てください。」
飯田先生はポケットに入るほどの黒革製ノートを、胸ポケットから取り出した。
「僕はずっと、『東京大震災と東京大震災の時に、超能力者が関与している』という研究をしてきました。」
クラスでどっと、笑いが起こる。しかし、優也と僕だけは笑うことはできなかった。
「そこで、前にこんなものを茶屋で見つけたんですよ。」
いっそう強調するように、ポケットに入るほどの黒革製ノートを前に押し出して生徒に見せた。
「これには、こう書かれているんですよ。『私は変異者だ。私は、4つのライフを使いきっている。全てがわかったうえで生きる人生ほど面白くないものはない。私はそんな人生が嫌で、嫌で仕方がない。だから、これから、自殺して5つ目のライフを使いきるところだ。これで私は本当の意味で死ぬ。後、5年後に東京大震災がある。頑張ってください。みんななら攻略できるから。』」
先生は、結構な早口でこれを読み、ゼーハーゼーハーと肩で息をしている。
変異者について書かれているか‥‥おそらくこれが、『cakeの手記のコピー』だろう。僕はそう予想した。
頼んでも渡してくれるわけがなく、逆に変異者だと疑われる。買い取るか?いや、変異者だと疑われて終わりだ。どうしよう。盗む?たぶんどこかに厳重に保管するはず。萩野さんに後で伝えておこう。いや、その前に、今先生に対してそれを偽物だと考えさせて手放させればいい。
「先生」
「どうした?畠中君?」
「それが通俗小説の類の可能性は?」
「東京大震災と富士山の噴火を予見しているんだぞ」
「東京大震災と富士山の噴火が起きた後からも作り出せます。」
「そもそも君は、東京大震災と富士山の噴火という複合災害の少ない死者・行方不明者数。避難所での記憶障害の症状がみられるクラスターが発生し、しかし、即座に開発された新薬で収束したことを、ただただ、たまたまだといえるかね?」
「可能性は無きにしもあらずです」
いやなところをついてくる。いや、相手にとってもそうか。
「もういい。知らん。」
手に持っていたチョークを、僕に向けて投げかけて、やめた。おそらく、生徒に暴力をふるったなどとばれては、学校の評価が下がり飯田先生は解雇。そして、飯田先生は解雇されても次の職場などなくなるだろう。せめてもの当てつけのように、教室を出るときに大きな音を立ててドアを閉めた。
やらかした。否定しようとするあまり、教師からの印象が悪くなった。どうしよう。盗もうか。いや、萩野さんに伝えようか。しかし、萩野さんはどうする?どうやって学校に入れる?僕らで行うか。ばれたら殺せばいい。
「Let‘s enjoy」
優也の耳もとでそうささやいた。
「了。天気いいから屋上で飯食べない?」
教室全体気に超えるほどの声量で、『今日』と『了』を3対1で混ぜたような言葉で、了承の意を表してきた。
昼時の屋上はいつも空いている。学食がものすごく豪華だからだ。
「にしても、幸人。飯田先生を殺せる?」
「殺せるよ。盗む予定だけど。」
「了。」
「まったく。物騒だね。私に頼るという手段を捨ててもらっちゃ困るよ。畠中君」
ガチャリと屋上のドアを開けて北上先生が入ってきた。
「やってくれるなら万々歳ですよ。」
「やるよ。やらなきゃ私たちの存在がばれる。だから、やるっきゃない。」
「先生。ネタが古いです。」
「明日。ここにきて。渡すから。」
「ありがとうございます。信じますよ。」
僕がそういうと、北上先生は購買で買ってきたのだろうパンの袋を開けながら、『おうよ。任せとけ』と返事をした。
「ねぇ、幸人と北上先生って、どういう関係なの?」
「北上先生も、僕と優也と同じ変異者」
「あぁ、なるほどね。だから、変異者に関する手記を回収しようとしてるんだね。」
「そうそう。」
北上先生は食べていたパンをごくりと飲み込み、そう返した。
「私はまだ仕事が残ってるから。じゃぁ、また明日。」
北上先生はほとんど食べていないパンを片手に、屋上を出て行った。
コメント
1件
読み終えました。今回は「先生がまさかの手記保持者」で一気に緊張感が走りましたね。飯田先生の早口で熱弁する姿が妙にリアルで、クラスの笑い声との温度差がゾワッとしました。それに、北上先生も変異者だったという伏線回収も気持ちいい。優也の「Let‘s enjoy」からの屋上飯の流れとか、日常の空気を残しつつ物騒な計画が進むバランスが絶妙でした。明日、本当に渡されるのか…続きが気になります。
ウィド&ディレ
92
榎本くもり
10,056
#面白くないかも
如月玲
37
谷崎爽奈
81