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「お姉ちゃんは、ALTAIR《アルタイル》に行った事あるの? 」
「まぁね、ちょっと昔、色々あってね…… 」
六本木4丁目に有る【club ALTAIR《最上級ダンジョン》】最近うちの店がランクアップを果たし高級店へと名告《なの》りを上げたが、まだまだ高級店の中でも5本の指にやっと入るレベル。そのトップを独走するのが六本木の老舗キャバクラ《古のダンジョン》のALTAIR《アルタイル》だ。
「いちか君の仲の良い娘を連れて来て構わないから、少しこっちに遊びに来ないかい? 」
黒川から出勤前にそう連絡があり、今タクシーでライバル店のALTAIR《アルタイル》へと向かっている。この誘いの意味合いは、こっちに来て一緒に飲んでくれたら後で君たちの店にも行くよと言う意味合いが含まれている。断るなんて事はナンセンスだ。
「敵の本拠地に乗り込むんだから当然値踏みもされる。黒川さんの顔に泥を塗るような事だけは、避けなければならないわよ? わかってるわね? ちか? 」
「うん――― 」
「いらっしゃいませ。三条様と、愛咲様で御座いますね? 承っておりますどうぞ中へ」
インカムを付けた落ち着いた年齢のセキュリティ役の黒服がダンジョン《キャバクラ》の扉を開くと、甘い香りがフワリと鼻腔を酔わす。勿論こちらも戦闘服《ドレス》で装備《見た目》を整えて来た。怖がる事は無い、後は鬼が出るか蛇が出るか―――
「社長すみません問題が…… 」
時を同じくしてこちらは【Club クロノス東京】の店内。慌てた顔を強張らせ店長が社長に縋《すが》って来た―――
「どうしたのかね? 」
「ケツ持ちの龍神会《不良》が若衆を引き連れて来てまして」
社長は少し溜息を付くと、慌てもせずに指示を出す。
「相談役の天城《あまぎ》さんに連絡して、その後に三ツ和会の新島さんにも至急連絡して来て頂く様に。内容を簡単に説明してくださいね」
「あっあのっ、天城さんは歌舞伎町なのでは? 時間が掛かってしまうのではないのでしょうか? 」
「大丈夫です。彼は直ぐに来ますよ」