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あたしはあわてて下をのぞきこんだ。なにもない。夜特有のブキミさだけしかない。
「なにもいないよ!?」
「え……紅音は聞こえないの……?」
え……?
言われてあたしは耳を澄ます。すると、意識していないと聞こえないくらいの小さな音が──
────チャキ…………チャキ……
「……!?」
全身の毛が逆立(さかだ)つような感覚を覚える。さすがのあたしもこの異質な音に警戒せざるをえない。
この米を床に落とすかのような音は……。
心当たりはひとつしかない。
「うさっちの足音……?」
「そうだよ……もうすぐ私たちを殺しにくるんだよ……!」
「そんなわけ……」
ない、とは言いきれなかった。
だって、初めてだったから。今までさまざなな都市伝説を試してきた。だけど1度だって異変に出会ったことはなかった。
ゴクリと口内にたまっていたツバを飲みこむ。
あたしは胸に手を当てて、騒ぐ心を落ち着かせるように息を吐き出した。
落ち着けあたし。あたしまでパニックになったら終わりだ。明澄を誘った責任は取らないと。
「うさっちが襲ってきたらあたしがなんとかするけど、気をつけていこう」
「…………」
明澄はなにか言いたそうだったが、なにも言わずこくりとうなずいた。
手を繋いで、なるべく足音を立てないように階段を下りる。
少しでも音を立てれば襲われるような気がして、緊張で冷や汗がほおを伝う。
階段を下りたらリビングは目の前だ。周りに視線をめぐらせながら、あたしたちはリビングにある台所にたどりついた。
「ハァ……よかった」
張っていた心がゆるむ。だけどまだ油断はできない。
あたしは急いでコップを2つ出し、塩水を作りにかかった。
「……ねえ紅音」
「ん?」
「変なこと聞くけど、ひとりかくれんぼが終わったあとぬいぐるみはどうしたの?」
本当に変なこと聞くね……。
「普通にゴミ袋につめて捨てたけど……もしかしてこの状況、あたしが適当にぬいぐるみを処分したせい?」
終わったあと塩をふって、必ず燃やさなければいけないことを知ったのはすでにゴミ収集車が持っていった後だった。
しばらくは霊が出てくるんじゃないかとカメラを持ち歩いていた時期があったものだよ。
「……それのせいなのかな……」
ポツリと、明澄は静かに呟いた。