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続きです!
諸々注意〜!!ではスタート
「組頭、連れてきました」
山本が部屋の外から声をかけると中から雑渡さんの声で「どうぞ」と聞こえてきた
「どうぞ」
『は、…はい…ありがとうございま、!』
長嶺は障子をゆっくり開けると中から手が出てきて引き込まれた
『わっ!』
「陣内、人払いよろしくね」
「はい、程々に」
『山本さん…!待っ…!』
パタンっと障子は閉められた
「………」
『あの、昆さん…?』
「落ち着いた?」
『さっきのは落ち着いたんですけどこの状況には落ち着いてません
離していただけませんか?』
「無理」
『あの身長など色々違うので私の上にのられると潰れてしまいます』
「逃げるでしょ」
『話がしたいなら座って話したいんですが…』
「…このままでいいよ」
『流石に落ち着かないですし横になってるの寝てしまいます』
「寝てもいいから質問に答えて」
『……わかりました…なんですか?』
「いつ人を殺した?」
『もう幼い時なので覚えてないです』
「理由は?」
『しょうもないことです
孤児だったので、人さらいに会った時に怖くて近くにあった木の枝で刺しました』
「…そうなのね…その時の感想は?」
『意地悪なこと聞きますね…感想は確か怖かったですかね…人を刺したときの感触や声が体にくっついてて…それが怖かったです』
「……で…何人殺した?」
『……それは忍術学園に入っての数ですか?』
「これまでの全部」
『多分10人です
学園に入ってからは忍務もそこまで殺すような忍務は来ません
戦い方を変えたので』
「…なるほどね……そっか…」
『汚れててすみません』
「そんなこと言ったら忍者はみんな汚れてるよ」
『そうですね…』
「君体は?」
『…あなたの言うとおり未遂です』
「…なんで?」
『1度金持ちに気に入れられて銭は多く貰えました…だけど怖くて逃げ出しました……
それから体売るといっても本番はしてません…』
「そっか…」
『…バイトも色々かけ持ちして忍者という存在を知って忍術学園に入れば身を守る方法がわかると思ってバイト代を貯めて入りました』
「…」
『……終わりですか』
「…保護者は?」
『一応土井先生です
山田夫妻がなってくれるとも言ってくれたんですが…土井先生の方がいいだろうと言うことで…土井になりました』
「なるほどね…婚約者っていうのは?」
『話が出ただけです』
「どこの誰?」
『利吉くんです
嫁になればいいと…利吉くんもいいと言ってくれましたがお断りしました』
「…そうなんだ…まだ話は出てるの?」
『もうでてません
利吉くんとはただの幼なじみで、土井先生は保護者です』
「……」
『…雑渡さん?』
「…やっぱり…結婚しよう…」
『…卒業まで待ってください』
「!」
『…それと土井先生や山田先生達にも話をしないと』
「いいの…?」
『ええ、…貴方の帰りを出迎える家族になります……ですが私家事全般できませんので、料理できる方に教えて欲しいです』
「ふふ、…私の屋敷には一人婆さんがいるんだ
その婆さんに婚姻後に教わるといい」
『まぁ…そうなんですね』
「うん、…もう逃がさないから」
『逃げる気はありませんよ
まず逃げても捕まえるでしょう?』
「もちろん…1度捕まえた獲物は逃がさない」
『ふふ…あ、でもタソガレドキ城主の黄昏甚兵衛殿にもお話を』
「それはもう大丈夫だよ」
『え?』
「もう話をしておいた
嫁に迎えたい者がいるってそしたらあっさりと承諾してくれたよ
また今度挨拶行こうね」
『ぷはははは!!!話を通すの早すぎますよ…!!私が承諾しなかったらどうするつもりだったんですか?』
「拉致」
『やめてください』
「まぁ結果的にしてくれたもの…結果オーライ」
『そうですね』
「でも先に謝っとくよ」
『なんですか?』
「結婚式は大々的に出来ない」
『全然いいです』
「い、いいの?」
『はい、私の方から呼ぶ方なんて山田夫妻と利吉くん、土井先生くらいです』
「同級生は呼ばないの?」
『…はい、私の知り合いっと言うことで何か厄介事に巻き込まれるのは嫌なので』
「ふふ、そうだね」
『ええ、手紙は出すつもりですけどね』
「そうしてあげて」
『…雑渡さん、私からももうひとつ伝えとかないといけません』
「なんだい?」
『後継ぎは期待しないでください』
「なぜだい?」
『昔から環境がいいとは言えなかったので月のモノがほとんど来ないんです
ですから今までは支障なかったんですが雑渡さんは組頭です…後継ぎは欲しいでしょう…?でも私は多分…』
「大丈夫、気にしなくていいよ」
『…分かりました……雑渡さん』
「?どうした?」
『嫁に来てもたまには手合わせしてくださいね』
「!…はははははは!!嗚呼、もちろん
時間が空いてる時ならばお相手しよっか」
『ふふ…』
「花嫁衣裳はとっても似合うよ…」
『…手がタコだらけで身体中傷だらけな花嫁でも幻滅しないでくださいよ』
「今更だよ」
『そうですね』
「…尊奈門の件はごめんね」
『いえ、私も桶を投げてしまってすみませんでした』
「伊作くんが言うにはただの脳震盪だって」
『ふふ、酒の飲み方教えてあげないんですか?』
「まさか飲むと思ってなかったからね」
『ふふ、また…教えてあげてください…また…問題おこしま、す…よ…』
「………おやすみ美桜」
会話の途中で長嶺は目を閉じて規則正しい寝息を立てていた
「…怜治、寝ましたか?」
縁側にいた雑渡へ話しかけのは伊作だった
「嗚呼、寝たよ」
「そうですか…尊奈門さん先程起きました
記憶など脳の障害はありませんでした」
「そ、ありがとうね」
「いえ、怜治がすみませんでした」
「君が謝ることじゃない
そうそう近いうちにそちらへ挨拶にいくよ」
「?挨拶?」
「怜治くんの保護者代わりの人がどうかって感じだけど婚約することになった」
「えっ…!」
「あの子にはちゃんと色々話してる」
「そ、うなんですか…!」
「…怜治は君たちに何も話さないんだね」
「…ええ本当に何も話さないので困りますよ…それでいて僕達じゃなく…雑渡さんへは話していることに少し苛立ってはいます」
「君って怒るんだね」
「そりゃあ怒りますよ
でもそれぐらい雑渡さんを信用しているって言うことでもあるので複雑です」
「…そっか…」
「…すみません…もう寝ます」
「うん、おやすみ
安心してゆっくり眠ってね」
「はい、雑渡さんもおやすみなさい」
「!…嗚呼…」
「怜治〜!」
『ッ…伊作…?』
「朝だよ」
『!』
長嶺は体を起こし障子を開けると朝日はちゃんと昇っていた
「いつも朝走り込んでるから起きてると思ってたんだけど見に来てよかったよ」
『…めっちゃ寝てた………いつもみたいに走り込もうと思ってたのに…なんで…』
「ふふ、タソガレドキが安心できたんじゃない?」
『……そうなのかな…』
「ほら忍び装束に着替えて大広間行こ
朝餉の準備してるんだって」
『寝坊とか最悪…!いつもなら絶対しねぇのに…!』
「そのままで行く?」
『さすがにこのままでは行けねぇから雑渡さんたちに着替えてから来るって伝えといて欲しい』
「一緒に…あ、そっかサラシがあるのか」
『嗚呼…だから先いっててくれ』
「わかったよ
ちゃんと巻いておいでよ」
『わかってるよ〜』
伊作は障子を閉め足音が少し聞こえ走っていった
『……隠れてないで出てきて手伝ってください』
「承知」
屋根裏から出てきたのは押都だった
「よくおきづきになりましたね」
『……伊作がいた時から視線があったのに僕が着替えようとしたら急に無くなったので気づきますよ』
「ふむ…で、何を手伝えばよろしいですか?」
『サラシ巻くの手伝ってください』
「……お手伝い出来かねます」
『どうせ今日で最後ですし人に巻かれるのもいいかと』
「組頭にころされます」
『そうなった場合は呼んでください
そして逃げてください
ちゃんと私が説明しますので』
「……善処はします」
『僕からのお願いだといえば大丈夫ですしこのことは2人の秘密にしましょう』
「…承知した…では巻きます」
『はい、お願いします』
長嶺は押都にお願いすると押都は慣れていない手つきで…でも丁寧に丁度いいキツさで巻いていた
『…ありがとうございます』
「いえ、…」
『…』
長嶺は立ち上がり忍び装束に着替えた
「…あの、」
『はい』
「せめて恥じらいを持ちませぬか」
『持ってますよ?』
「持っておるものは男がいるところで着替えぬ」
『少し年の離れた殿方はどうも男と認識しにくいんです
もちろん雑渡さんのことはしてるんですが…押都さんや山本さんなんか特に人の旦那ので恥じらいを持ちにくくて』
「尊奈門へは持っていたな」
『あれはほぼ同年代の方なので流石に同年代の方は恥ずかしいです』
「なるほど…」
『よし…問題なし…では朝餉食べに行きましょうか』
「承知」
長嶺と押都は一緒に大広間へ向かった
「おはよう怜治」
大広間の障子を開けると1番最初に雑渡が声をかけた
『…おはようございます昆さん』
「!…ふふ…順応早いね」
『だって僕も雑渡さんになるんですもの
そのままでは分かりにくいでしょうし元々そう呼んでま、す…し…?どうしたんですか』
「みんな、面白い顔してるね」
長嶺と雑渡が大広間にいる人間の顔を見ると伊作以外目を見開いて同じ顔をしていた
「ちょ、ちょっと待て昆!
昨日聞いていた話と違うぞ!」
「?どういうこと?」
「昨日は勝負に勝ったから聞くことがあるから人払いをと…!」
「え、うん
婚約するよ」
その日大広間に居た忍軍の人達の声が揃い
タソガレドキ詰所に驚きの声が響いた
「そういうことは早く言え!!!今日の朝餉赤飯にしたわ!!」
「しなくていいかなって思って」
『はい、赤飯あまり好きじゃないので』
「そういう話じゃない!
というか善法寺くんも知っていたなら…」
「知っていると思っていまして…」
「あ、今日学園行くね」
『はい』
「昆、もしかしてだが…」
「うん、そのもしかして
挨拶行ってくるよ」
「バカなのか?馬鹿だよな?」
「馬鹿じゃないよ」
「一応中立を取ってるとしても向こうからしたらいつ中立じゃなくなるか分からない相手だぞ!?
そんな所に大事な娘やれると思うか!?
私ならやれん!」
「ちょ、…陣内落ち着いて」
「落ち着いてられるか!!怜治くん!」
『は、はい!』
「大丈夫か?昆に脅されて了承したんじゃないのか?」
「ねぇ私をなんだと思ってるの?」
『え、…わ、私も…好き…なの、で…その…脅されてる…とかじゃ…ありま、せん…』
「!…」
山本に聞かれたことに答えた長嶺の表情は見る見る赤くなってその反対に雑渡はニヤニヤしていた
『…あま、り見られるのは…はずかしい、…です…』
「あ、すまん…ほ、本当にこいつでいいのか?」
「ねぇ陣内?そろそろ泣いちゃうよ?」
『は、…はい……』
「…わぁ…」
『わ?』
「わぁーい!」
『わっ!!?』
山本は嬉しさのあまり長嶺の脇に手を通し小さい子のように上にあげた
『ちょ、山本さん!?』
「ありがとうございます!長嶺怜治殿!!」
『ちょ、おろ、して!こ、昆さん!山本さんどうにかしてください!』
「ふふ、しばらく付き合ってやって
こんな陣内久々に見た」
「はは…!ありがとう…ありがとうございます…!」
『…ふっ、…こちらこそ…ありがとうございます』
山本による長嶺をかつぎ上げるのはしばらくつづいた
雑渡、長嶺、伊作、高坂、山本の一行は忍術学園へ向かった
「2人とも大丈夫そ〜?」
『「大丈夫です!!」』
「ならもう少しあげようか」
『はは!!』
「これ以上…!?」(やっぱり手加減してたんだ…思い知らされるなぁ…)
「疲れたら全然言ってね〜」
「遠慮なく言ってください」
『まだ大丈夫です
伊作もまだ行けるでしょ』
「うん…!」
「ふふ…」
「大丈夫??」
『だ、大丈夫…です…』
「ッ…ハァハァハァ…!」
『あ”ッ〜…!』(伊作も僕も6年までちゃんと残ってきた…なのに僕らは息が上がってるのにこの人達は息もだが汗もかいてない…!)
「落ち着いたら行こうか
伊作くんは部屋戻るでしょ?」
「は、はい」
『…土井先生と山田先生呼んできます』
「うん、私たちは先に大川平次渦正殿の所へ行っているね」
『はい、行っててください』
門をくぐると小松田さんが外泊の件を少し怒っていたが笑顔で出迎えてくれた
長嶺は雑渡達と別れ職員室へ向かった
『失礼します』
「長嶺か、どうした?」
『土井先生、山田先生に用事があり来ました』
「どうした?」
2人はとても優しい顔をして尋ねてくれた
『学園長先生の庵へ来てはくれませんか』
「?何か今日ありましたっけ」
「今日は何も聞いてないぞ」
『その…大事な話があるので学園長先生を交えた話し合いを…そこには土井先生と山田先生が必要なんです…』
「…とりあえずわかった」
「行こう」
『はい…ありがとうございます』
3人は学園長先生の庵へ向かった
「…ちょっと待てどういう事だ」
「なんでタソガレドキの方々が…」
「大事な話ですので」
「とりあえず山田先生、土井先生、長嶺怜治座りなさい」
『失礼します…』
学園長と雑渡が向き合っており長嶺は雑渡の隣に座り山田と土井は両者の間に座った
「それでお話というのは…」
「…怜治、言える?」
『はい…山田先生、土井先生、学園長先生…タソガレドキ忍軍組頭雑渡昆奈門さんと結婚したいです』
「「!!?」」
「ちょちょ、…ちょっと待ってくれ」
「本気か怜治…!」
『無論本気です…!元々お話は頂いておりました…
決心がつきました。タソガレドキ忍軍組頭の嫁になることで命を狙われるのも覚悟の上です』
「もちろん、そのようなことにはさせない所存です
私は殿か家族かと言われると殿第一で動きます。なので家族を守れない場合もある…それは本人も承知の上です」
『……どうかお認めになっては貰えないでしょうか…』
長嶺と雑渡は頭を下げ後ろに待機していた山本と高坂も頭を下げ部屋には沈黙で静まり返っていた
その沈黙を破ったのは山田だった
「怜治、」
『はい、』
「本当にいいのか?」
『はい…拾ってもらい育てていただいたのにこのような形で返してしまい申し訳ありません…!』
「…私は半助が許すなら何も言うまい
お前の保護者は半助だからな」
「わしも土井先生の決定に従おう」
「えっ、」
『……』
「…怜治、ちゃんと雑渡さんには話したのか?」
『はい、長嶺怜治ではなく長嶺美桜であることは話しました』
「じゃあ素顔は?」
「素顔…?」
『それは…まだです……』
「なら認められない」
『… ッ……!』
「…」
「美桜、素顔を見せるのは恥ずかしいかもしれないけど一生を添い遂げる伴侶にはちゃんと見せるべきだ」
『それは……』
「…」
『…む、…無理です…』
「「「えっ」」」
『…ッ……』
「!美桜!」
長嶺は障子を開け外へ飛び出して言った
「美桜…」
「あの子はまだ克服しておらんようだな…」
「どういう…」
「それは本人に聞くべきではありませんか?」
『…』
「…美桜、父上や土井先生探してると思うよ」
『……嫌だよ……いくら結婚するからと言って全部さらけ出せない』
「話は聞いてわかったけど……」
長嶺は学園長の庵から飛び出し学園を抜け出し少し離れた利吉のところへ来ていた
「というかどうやってきたんだい?」
『…クロと紅を使って探した…』
「そうかい…」(どうしたもんかな…)
『…素顔は見せたくない…鉢屋に面の作り方を教えて貰ってより高度に隠せるようになったのに……雑渡さんに拒絶されるのは…嫌だな…』
「……」(雑渡さんならしないと思うけど…絶対教えてやらない…)
『……利吉くん、どうしよう…結婚はしたい…でも顔は見せたくない…』
「…どうするって言ってもね…あ、じゃあさこういうのはどう?耳貸して」
『??』
「ゴニョゴニョ…」
『!…え、それ…え、失敗したら僕結構心にキそうなんだけど…』
「その時はその程度の愛だったってことで潔く諦めな」
『ッ…辛辣…』
「はは、そんなこと言うなら大人しく顔を見せればいい」
『……試す価値はありそうだね…』
長嶺は利吉のいた廃寺から雑渡さん宛に文を書いた
文は紅に持って行ってもらった
文にはこう書いていた
“逃げ出し申し訳ありませんでした。しっかりお話をしたいのとタソガレドキ城下を見てみたい。待ち合わせをしませんか?”と…
その返事は了承だった。
そして何回か文のやり取りで日時と場所が決まった
『…』
「不安かい?」
『そりゃあそうでしょう…拒絶されたら利吉くんが私の旦那さんになってね』
そういう長嶺の顔は酷く悲しそうな顔をしていた
「仮定の話のするのは良くない
どうしても悲観的に捉えてしまうからね…ほらちゃんと可愛いし綺麗だ!誰かに泣かされたら私にいいなさい」
『ふっはは!お父さんみたい!行ってきます』
「行ってらっしゃい」
長嶺は女人の服を着て素顔で宿からタソガレドキ領へ走って向かった
「…さてと…」
「……」(美桜が来ない……)
雑渡は待ち合わせ場所で忍び装束ではなく着物を着て顔を隠して長嶺を待っていたが時間なっても長嶺は来ない
「…」(タソガレドキ城下で待ち合わせをするのは間違っちゃったかなぁ…入口とかにしとけば分かりやすかったかなぁ?)
雑渡は待ち合わせ場所で何度も何度も自問自答をしていた
「組頭」
「陣内か、何?」
「……長嶺くんのことを悪くいうつもりはありませんが…ここまで待っても来ないとなると…」
「もう少しだけ待ってみるよ
道に迷っただけかもしれないから」
「……」
「一応探してきてくれない?あの子どうも保健委員の不運を引き寄せちゃうようだから」
「承知しました」
「……」(大丈夫だ、あの子はちゃんと来る)
そしてまた半刻が過ぎた
「組頭、また今度にされてみてはどうでしょうか…」
「……」
「今度する時は忍術学園へ迎えに行き一緒に歩いて行かれるのがよろしいかと…」
「そうだね、そろそろ戻って仕事をするよ
悪いね、仕事でもないのに使って」
「いえ、」
「…少し心配だ、な…!」
「組頭…?どうなさ、」
「君待って…!」
「ちょ、昆!!?」
雑渡は雑渡の目の前を通った女子の手を握って引き止めた
「美桜…!」
『!……ッ……きづ、いて、…くれ、た……』
「大丈夫かい?怪我してない?」
『へ、……この傷…気持ち悪くないんですか…?』
「?どこが気持ち悪いの?」
『!…』
「とても綺麗だよ」
『あぁ、…ははは…』(…やっぱりこの人と生涯を共にしたい……)
「それに君は私の火傷を怖がらず普通に接してくれた
なんなら労わってくれただろ?」
『あ、…』
「強者と本気で戦いたいからだとしても私はとても嬉しかった」
『…』
「…ちゃんと顔見せてくれるかい?」
『……ここでは……嫌です…みんな…怖がってしまいます……』
「承知した…詰所でもいいかな?」
『…個室があるのであれば…』
「うん、安心しなさい…連れて行ってもいいかな?」
『…お願いします…』
雑渡は長嶺を抱え人目を気にせず詰所へ向かった
「…ここなら誰も来ないよ美桜」
『……ッ…』
長嶺は雑渡からゆっくりと離れ顔を上げる
「!……やっぱり…」
『ッ…!』
「やっぱりとっても綺麗だよ美桜」
『へ、……?』
「なんだい?その腑抜けた声は」
『…綺麗って…おっしゃるので……』
「こんな顔の中心にできてしまって隠したくもなるね」(右の眉頭から左頬までのこの傷は男でもこんな傷隠したくもなるのに女となれば余計に隠したくなるよね…少し悪い事をしたな…)
『…昆、さん…』
「?」
『こんな、…私と結婚して、くれます、か?』
「!…ふふ!先を越されてしまったね…もちろん…結婚しよう…それに君」
『?』
「こんな火傷まみれのおじさんでいいのかい?」
『火傷まみれ…でもそれは仲間を助けた勲章です…そんなかっこいい雑渡さんと結婚したいんです……』
「!」
『わっ、…!!』
「…あ〜…今の顔絶対他の人に見せちゃダメだよ」
『?あの、昆さ、ん…苦しいで、す…』
「ごめん、もう少しこうさせて…こうしてないと襲いそう…」
『!、…それ、は…まだ…こまり、ます……』
「うん、在学中は出さないから…ちゃんとそこは守るよ」
『…これ、から…よろしく…お願いします…』
「うん、よろしくね」
『あと…約束の時間遅れてすみません』
「いいよ、可愛い嫁の遅刻くらい許すさ」
2人は翌日忍術学園へ赴いた
「土井半助殿、教職というお忙しい職業でありながらも本日時間を取っていただき誠に感謝を申し上げます。
私、長嶺美桜さんとお付き合いさせていただいております、タソガレドキ忍び組頭雑渡昆奈門と申します」
「…」
「単刀直入に申し上げます、先日の 婚約の件で来させていただきました。改めてご結婚の了承を頂きたいと思っております。」
「…その様子だと顔お見せになったようですね」
「はい、僭越ながら」
「…雑渡さん」
「はい」
「美桜をよろしくお願いします」
「『!!』」
『いい、の…本当に』
「なんで本人が1番驚いてるんだよ美桜」
『ッ…あり、がとう、ございま、す…』
「誠に感謝申し上げます……」
「ただ、美桜を泣かせた時はわかってますね?」
「肝に銘じます」
『ありがと、土井先生…!』
「いい人が見つかって良かったな」
『はい!』
「じゃあ私はこれで帰るね」
『はい、部屋まで送って下さりありがとうございます』
「いいよ、また文を送っても?」
『もちろんです!私も送りますね』
「うん、またね美桜」
『おやすみなさい、気をつけてお帰りください』
「うん」
長嶺は部屋の戸を閉め、雑渡は門へ向かった
「出門票にサインお願いします」
「はーい」
雑渡は門前へいた小松田さんに呼び止められ出門表にサインをし門を出た
「おや、これは珍しい人だ」
「ええ、お久しぶりです雑渡さん」
「久しぶりだね、利吉くん」
「ご婚姻おめでとうございます」
「耳が早いね」
「情報をどこよりも早く抜き伝えるのが忍びですので」
「ふふそうだね…では私はこれで失礼するよ」
「美桜の事大事にしてくださいね」
「…もちろん、大事に大事にするさ」
「泣かせたりしたりタソガレドキへ乗り込みますから」
「嗚呼」
「美桜に定期的に会いに行きますから!」
「妹離れしないも嫌われるよ?」
「余計なお世話です」
「ふふ、美桜にも確認したよ」
「何を」
「もう逃がしてあげられないけどいいかと問うたらいいと答えた」
「…そうですか」
「獲物が手に入るとよく男は興味が無くなると言うが私はどうやら逆のようだ」
「は?」
「手に入れてもまだ、もっともっと美桜のことを知りたい、なんなら人と会わせないようにどこかに閉じ込めたい
でもそんなことしたら本格的に嫌われちゃって笑顔見せてくれないと思ってやらないけどね」
「…それ美桜には」
「言うわけないでしょ」
「うわぁ…猫被ってるんですね」
「もちろん、好きな人の前では余裕のある大人でいたいだろ?」
「まぁそうですが、あの子ある程度相手が甘えてこないとあの子も甘えませんよ」
「それは弱ったな〜…じゃあ君たちがいないところで甘えるとするよ」
「ふふ、邪魔します」
「嫌な姑だ」
「誰が姑ですか!!」
「はは!!では失礼」
雑渡は風のように姿を消した。
そして日が経ち6年生の卒業式の日となった…
この日はとてもよく晴れ暖かく桜もほぼ満開に近かった
「…早いですね」
「そうですね」
山田と土井は6年生の背中を見ながら感傷に浸っていた
『山田先生、土井先生、』
「怜治か、どうした?みんなの所へ…」
「!」
『ここまで育てていただきありがとうございました…!』
長嶺は深々と頭を下げた
『こんな私を拾っていただき面倒をかけました……』
「そんなことは…」
『でも!これから親孝行できるように幸せになります』
「「!!」」
『結婚式は小さいものですがお2人お呼びします!胸を張って堂々とタソガレドキ忍び組頭の雑渡さんの隣にいても恥ずかしくない妻となります…!』
「嗚呼、」
『それにたまに会いに来ます…!みんなとも…敵になっちゃうかもしれない、…ですが、…僕は…』
「ふふ、顔涙でぐちゃぐちゃじゃないか」
『ひっ、…ぅう”ッ…』
「怜治」
『は”ぃ”!』
「ちゃんと幸せにしてもらうんだよ」
『!』
土井はそういうと長嶺を強く抱きしめた
『はぃ、…ちゃんと…幸せにして、もらいまず、…!』
「酷いことや嫌なことあったらすぐに帰ってきなさい
それかぶん殴りなさい」
『ぶん殴ちゃ、ダメですよ』
「はは!!そうだな!!」
「美桜」
『!昆さん!!』
長嶺は土井から抜け出し雑渡の方へ駆け寄り抱きついた
「ふふ、無事卒業おめでとう」
『ありがとうございます…!』
「目元真っ赤だね」
『恥ずかしいです…』
「クロと紅以外はもう私の屋敷の君の部屋の近くの小屋に運んだよ」
『!何から何までありがとうございます』
「ふふいいよ、今日は簪つけてるんだね」
『はい、少し派手かと思いましたがどうしても付けたくて』
「とても綺麗だ」
『はは!ありがとうございます!』
「みんなにお別れはいいのかい?」
『あ、まだです!ちょっと待っててください!』
「嗚呼、転けないでよ〜」
長嶺は6年生の元へ走って向かった
「見せつけてきますね」
「ふふ、なんのことか」
「雑渡さん」
「はい?」
「長嶺美桜のことをよろしくお願いします…」
「「!」」
「土井殿!?顔を上げてください!」
「いえ、保護者として務めです」
「え、あー…そうですか…美桜の事は心配しないでください
絶対という保証はできません…でも美桜がこれから顔を隠さずに生活して欲しいとは願っています」
「!…ははそうですか…ありがとうございます…よろしくお願い致します…」
「はい」
『土井先生ー!!!山田先生ー!!!』
「「?どうし…!?」」
『受け取ってください…!』
長嶺が持っていたのは大きな花束だった。
「こ、これどうしたんだ…?」
『野の花を取るのはちょっと抵抗あったんですけど…どうしても感謝を込め伝えたくて…』
「…」
『そ、それで若王寺先輩と桜木先輩に協力してもらって一緒に取ってもらい持ってきても貰ってしまってあの二人にも何か感謝を伝えないといけないんですけど…!まずお2人に伝えたく…』
「…美桜……」
『はい』
「…ありがとう…」
『!感謝はこちらの台詞です…!拾っていただいただけでもありがたいのに…ここまで無事に育てていただいて…ありがとうございます…!』
「…ッ……何回言うんだよ…」
『何回で言いますよ!』
「こら、半助ちゃんとせんか!」
「…はい、…美桜、受け取るよ」
『!ありがとうございます!!』
「美桜」
『はい』
「幸せになるんだぞ」
『何回言うんですか…!あはは!!』
「…何回でも言うさ……」
「美桜」
『なんですか?昆さん』
「ふふ、その呼び方も嬉しいけど式終わったら旦那様かあなた、がいいな」
「雑渡さん、ここで話すのはやめてください」
「そうですぞ」
『…』
「え、何その反応可愛い」
長嶺の顔は傍から見てわかるほど真っ赤になっていた
『ッ…!伊作〜!!!!』
「あ、ちょ!!美桜!?」
「振られましたね」
「式まじかに控えているのにやめてくださいよ」
「失敬」
『もぉぉ〜…昆さんのバカぁ…!』
「はは!怜治顔真っ赤だね」
『仕方ないじゃん…!』
「「怜治」」
『あ、若王寺先輩!桜木先輩!』
「成功したか?」
『はい!そりゃあもう大成功です!』
「そりゃあ良かった」
「で、なんでそんなに顔が真っ赤なんだ?」
『えっ、と…これ、は…』
「ふふ」
『…先輩たちならいいかな…?』
「うーんどうだろうね
怜治がいいならいいんじゃない?」
『…驚かないでくださいね先輩たち…』
「そりゃあ聞く内容によるな」
「嗚呼」
『…実は結婚するんです…』
「…ほう、良かったな」
「もう嫁さん見つけたのか、流石だな」
『…嫁さんというか…』
「怜治がお嫁さんなんです」
『ちょ、伊作ぅ〜…!』
「………」
「……ん?お婿さんじゃなくて?」
「はい、怜治がお嫁さんです」
「……??お相手は誰なんだ?」
『……タソガレドキ忍び組頭の雑渡昆奈門さんです…』
「た、タソガレドキ忍び組頭ぁ!!?」
「待て待て待て怜治、落ち着け」
『僕は落ち着いてます』
「そうだけどそうじゃない」
「どうしてもそうなった!」
「第一お前男だろ」
『女の子です』
「「…?」」
『ですから女です』
本日二回目である
「女であるならくノ一の方ではないのか…??」
『手に職と言いますか、女でも忍びをやってもおかしくはないと思いまして、あと普通に身を守れますのでくノ一ではなく忍たまの方へ』
「………」
「よし、それは分かった」
『ありがとうございます』
「でも、タソガレドキ忍び組頭はやめておけ」
『なぜ?』
「タソガレドキ忍び組頭だからだ」
「その嫁となれば数え切れんほど狙われるぞ」
『ですからそういう時のためにこうして忍たまで鍛えたんではありませんか』
「そうだけどそうじゃない…!」
「お前利吉さんじゃないのか」
『利吉くんとは兄弟のつもりですし向こうもその意識です』
「…本当にあの雑渡昆奈門でいいのか」
『はい、もうちゃんと決めました
それにもし刺客に殺されたら殺された時だと思っています
その時はその刺客諸共道ずれにします』
「いい意気込みだ」
「桜木待て、そうだけどそうじゃない」
『ふふ、先輩達がここまで焦ってるの初めて見ました』
「「当たり前だ焦る」」
「ふふ、本当に子供は可愛いね」
「「!!?」」
『昆さん!』
「怜治、もうそろそろ行こうか」
『はい』
「もう行かれるのですか」
「嗚呼、帰ってからやることが山のようにあるからね」
「ふふ、大変ですね」
「うん、大変だよ…でもそれよりも楽しみで仕方がない」
『ふふ、』
「怜治」
『何?伊作』
「これ、プレゼント」
『!これ、…紅じゃんか…!高かっただろ…!』
「キミどうせ式には呼んでくれないだろ?」
『ギクッ…』
「だから呼ばれないなら呼ばれないなりに考えてね
ね、みんな」
『え、?わっ!!!?』
長嶺が振り返ると伊作以外の6年が飛び乗った
『痛ッ〜!なにこれ!重いし!』
「…私たちに隠し事とはいい度胸だな怜治」
『…は?』
「お前と同じで忍びであり6年間共にした学友だ
お前の隠していることなんかすぐわかる」
「1番気づくの遅かったのはお前だろ文次郎」
「なんだと留三郎!!?」
「やめんか」
「私たちに隠し事をして隠し通せるとでも思っているのか」
「もそ」
「そうだと言っている」
『……はははは!!!頑張って隠してたの馬鹿みたいじゃないか』
「そうだ」
「お前は阿呆だ」
『馬鹿だけど阿呆ではない』
「ふふ、」
『なーんだ……知ってたのか』
「嗚呼、」
「だから私たちはお前にプレゼントを見繕った!」
『え…?』
「全員で金を出し合って反物だ」
『!……なんで、桜の柄に…したの、…?』
「なんででって」
「「「「「「好きだろ?桜」」」」」」
『!…バレてんのかよ…』
「みんな、桜で間違えないと思ってたけど一応雑渡さんにも確認済みだよ」
「はははあの時はびっくりしたね
全員でこっちに向かってくるものだから」
『…ッ……ありがとう……頑張って作って着るね…!』
「嗚呼、」
「作ってあるのじゃなくて悪いな」
『ううん、凄く…嬉しい…』
「じゃあ私はその着物に合う帯類をあげるよ」
『!…はは!貰ってばっかだなぁ…』
「ふふ、さ、じゃあ本当にそろそろ行こうか」
『はい…』
「…怜治」
『仙蔵、文次郎、伊作、留三郎、小平太、長次、桜木先輩、若王寺先輩、土井先生、山田先生!!幸せになりますししてもらいます!!!』
「!」
「嗚呼!してもらえ!」
「泣かされたらいつでも帰ってこい」
「雑渡さんに酷いことされたら言ってね
いつでも薬作るから」
『ダメだろ』
「鍛錬怠るなよ!」
『わかってる!』
「もそ」
「元気が1番と言っているぞ」
『うん』
「何かあったらちゃんと私たちにも知らせてくれ」
『うん、小平太わかってるよ』
「達者でな」
『はい、』
「また式でな」
『はい、お父さん』
「!……嗚呼」
『また』
「よいしょっ、と…!」
雑渡は長嶺を抱っこし風のように消えた…
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