私は少女を忘れていない

仕事から帰ってきてテレビをつけるとバラエティー番組である事件について話していた。

｢桜山神隠し事件｣これは約20年ほど前に起きた行方不明事件で姉妹2人が夏休みに心霊スポットに行ってくると言ったまま帰って来なかったという事件だ。その心霊スポットは幽霊が出ると言われ過去にも6歳の少年が行方不明になり、翌日に近くのプールで死体が見つかったという。

この事件の被害者である姉妹2人は私の同級生でこの事件がニュースになった時は学校でも話題になっていた。20年前の事を思い出していると携帯の通知がなった。見てみると幼馴染の

芥川 隆二(あくたがわ りゅうじ)からだった。

彼もバラエティー番組を見ていたらしく改めて犯人探しをしようという話だった。馬鹿馬鹿しい。私達のような庶民が集まって解決出来るような簡単な問題ではない。でも興味が無いわけではなかった。行方不明になった姉妹2人から私も心霊スポットに行かないかと誘われていたからだ。彼の誘いに協力しようか悩んでいると。また彼からメッセージが来た。｢アイツらも協力してくるって｣アイツらというのは20年前、私が高校生の時に仲良くしていた5人のことだ。みんなが集まるならと思い、私も協力することにした。彼のメッセージに返信すると｢明日14時に桜山高校な｣と返ってきた。

翌日、私は約束の5分前に母校である桜山高校に着いた。懐かしのこの感じに胸を弾ましているとこちらに手を振って走ってくる女性が見えた。「キキちゃん！久しぶり」そう私を呼ぶのは学級委員を務めていた岡野 彩月(おかの さつき)だった。「久しぶり。みんなは？」そう聞くと彼女は笑顔でこう言った「隆くん以外は着てるよ」またあいつは遅刻か、情けない。そう思いながら私は彩月とみんなのところを向かった。

「松田じゃん！」と私を見るなり驚いた表情で手を振って来た男性とその大きな声に驚く女性2人が見えた。大きな声で私を呼んだのはクラスの問題児だった桐生 雅人(きりゅう まさと)だった。その声に驚いていた2人の女性はクラスのマドンナの大坪 佳恵(おおつぼ よしえ)と学年1の優等生、林 莉央(はやし りお)だ。佳恵は「桔梗は全然変わんないね」と安心したように笑顔を見せた。私達はたわいもない話をしていると「ごめんごめん」と隆二が駆け足で寄ってきた。「もう！遅いよ！」彩月は少し怒った表情で言った。「悪い悪い」と隆二は流し、急に真剣になってこういった。「お前ら覚えてるよな…花岡姉妹の事」花岡姉妹というのは今回の事件の被害者である姉妹2人の事だ。姉の花岡 真理(はなおか まり)は正義感が強くみんなのリーダー的存在で私達の1つ上の先輩だった。彩月と同じテニス部で彩月が最も尊敬している先輩だった。そのため花岡先輩が行方不明になった時は酷く悲しんでいた。妹の花岡 夢葉(はなおか ゆめは)は姉とは違い大人しい性格で部活にも入っていなかったが、面倒見が良くみんなからよく頼られていた。

「勿論だよ。忘れるわけない…」莉央は悲しそうに言った。「ねぇ、みんなでこの事件の犯人を探そう！」「そうだな！見つけたらとっちめてやる」佳恵と雅人は張り切っていた。その2人のやる気につられ、みんな笑顔になっていった。