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「さて、では具体的な今後の行動について少し話していこうか」
色々と紆余曲折はあったが俺たちは今後の方針を具体的に決めていくことになった。とりあえず相手がどこにどんな攻撃を仕掛けてくるかが分からない以上、戦力を王都周辺に集めておくことが良いのではないかということになった。
冒険者ギルドとしての戦力として俺以外の現Sランク冒険者たちや一部の高ランク冒険者たちを中心にに召集をかけるそうだ。文字通りギルドが用意できる王国最高戦力になるだろう。
相手が超越種を人為的に作り出せる以上、戦力は多いに越したことはない。
それこそ魔物次第ではかなり王国滅亡レベルの危機になるだろう。
それと冒険者だけではなく王国騎士団にも協力を要請するつもりだそうだ。王族や貴族、そして国民たちの避難や守護を主に担当してもらうことになるだろうとグランドマスターは話していた。
やはり王国に関することは冒険者たちよりも騎士団が適任だろう。
ただこれらの作戦は国民には秘密裏に行う必要があるのであまり大々的に行動することは出来ない。なぜならまだいつどこにどんな形でローガンスが何を仕掛けてくるのか、そもそも仕掛けてくるのかも分からない。そんな状況で国民に知られてしまえばパニック状態になりかねない。そうなれば攻められる前に王国が危機的状態に陥ってしまいかねないのだ。
群衆のパニックというのはそれほどに恐ろしいものらしい。
「ということで今後の方針としては我々と一部の高ランク冒険者たち、そして王国騎士団たちだけで緊急時に備えて準備を進める。騎士団との連携は私とセレナ君、そしてロードウィズダム公爵で国王を通じて行うつもりだ」
「はい!任せてください!!」
セレナは嬉しそうにドヤ顔で答える。おそらくこの嘘みたいな話でも彼女の魔眼の力があればかなり信憑性を高めてくれるということなのだろう。こういう場面においてはかなり適任だ・
「だから騎士団の方は問題ないとして、一番の問題は冒険者たちだね」
「問題…とは?」
俺はグランドマスターの言う一番の問題が冒険者にあるという言葉に引っかかった。
「まあ、簡単な話だよ。高ランク冒険者たちは気ままな奴らが多いんだよね。そもそもSランクに関しては招集をかけても集まってくれるかどうか…」
そこでグランドマスターは大きくため息をつく。
どうやらSランク冒険者たちの扱いにはグランドマスターも手を焼いているようだ。
「…そんなに我が儘な人たちなんですか?」
「いや、我が儘とか悪い意味ではないんだけどね。ちょっとマイペースというか変わり者というか。もちろん私がSランク冒険者として認めた者たちだから人柄とか態度に関しては間違いなく心配する必要はないよ」
あぁ…何となくどんな感じか分かるかもしれない。まあでも、聞いた感じだと詳しい話さえ聞いてくれれば加勢してくれる頼もしい人たちであることは間違いないだろう。
「冒険者の皆さんのサポートはお任せください!受付嬢として全力で頑張ります…!」
レイナさんが頼もしいことを言ってくれた。
それぞれがそれぞれの出来ることを果たそうとしている。
俺も頑張らないと…!
「それとユウト君がターゲットかもしれないという話だけどね。一応これはここだけの話ということにしておこうか」
「それはどうしてですか?」
「君自身が狙われているかも不確定な状況でそんな話をしたらどんなことになるか想像できないかい?たぶん王国はまず君をこの国から追い出そうとするかもしれないからね」
…確かにその通りだろうな。例え不確定とはいえ狙われている可能性がある人物をそのままにしておくほど甘くはないだろうな。
「私たちは君の実力を知っているからこそ君を失うことが何よりも損失であることは分かっているんだけど、そのことを国がどこまで信じ理解できるかは分からないからね」
「…分かりました、そのようによろしくお願いします」
「もちろんだよ」
そうして今後の方針について話し合いをした俺たちは各自のやるべきことを進めることにした。
グランドマスターとセレナはロードウィズダム公爵に事情を説明したのちに国王へと謁見へ。レイナさんは他のギルド職員の人たちと共にSランクを含めた高ランクの冒険者たちの召集に動き出した。
そして俺は来たるローガンスとの戦いに備えるために修練を行うことにした。どれほどの時間が残されているかは分からないが二度も同じ相手を見逃すことだけは絶対にしたくない。
今度こそ奴を倒してみせる。
それに前回と違って一人じゃないのだから心強い。
そうして各自が準備を進め始めてから約2週間ほどが過ぎた。未だ不穏な気配一つ感じられない平和な日々が続いてはいるが、その時は刻一刻と近づいてきているのだろう。
グランドマスターとセレナは国王の理解を得ることができ、有事には王国騎士団と冒険者が連携を取る手筈が決まったとのことだ。
やはりそう簡単には信じてもらえなかったらしいが、ロードウィズダム公爵の進言に魔眼による真偽の鑑定、そしてグランドマスターの説得によってとりあえずの理解は得られたようだ。
そしてレイナさんたちによって招集をかけていた高ランク冒険者たちだが、少しずつではあるが着実に集まってきているようだ。
Bランク以上の冒険者が続々と集まってくる中、そこにはかつてゴブリン・イクシードとの戦いの際に一緒だった仲間たちの姿もあった。
Bランク冒険者パーティ、もといAランク冒険者パーティとなった「明星の剣」のアレンにローナ、デニムにカレン。彼らもしばらく見ないうちにランクも上がって実力もかなりのものとなっていた。
そして元Aランク冒険者でサウスプリング支部のギルドマスターであるアースルドさんも招集に応じて王都へと駆けつけてくれたようだ。サウスプリングのことはアンさんたち受付嬢とサブギルドマスターに任せてきたとのこと。非常に頼もしい人が来てくれた。
…というか、サブギルドマスターなんて居たんだ。
最後に、彼も駆けつけていたのだ。
「おう、ユウト。久しぶりだな」
「ゲングさん?!」
そう、あのゲングさんも王都へと招集に応じて駆けつけて来てくれていたのだ。話を聞いてみると彼もしばらく会わないうちにCランクからBランクへと昇格しており、そして今回の召集の対象となっていたようだ。
「Bランク以上の冒険者に王都での特別依頼の募集がかかったって聞いてよ。王都と言えばユウトが行ってるって聞いてたから、もしかしたらお前も何か関わってるんじゃないかって思って急いで来てみたんだよ」
「ゲングさん…ありがとうございます!」
俺はゲングさんと強い握手を交わす。
しばらく会ってなかったゲングさんの思いやりの深さに改めて嬉しさが込み上げてくる。
その後少し二人で語り合って懐かしい話をしたりもした。初めて会った時の事やゴブリン・イクシードの戦いのことなども今となってはいい思い出話である。
「そういえばお前、Sランクに昇格したんだってな」
「えっ、一体それはどこで…?!」
「どこでって、さっきレイナに会ったんだよ。その時に聞いたさ」
あー、なるほどね。
まあ別に隠しているわけでもないしSランクにもなったら隠せないか。
「それにしても本当にすごいな、こんな短期間でSランクにまで上り詰めるなんてさ。流石、俺の尊敬している男だぜ」
「そ、尊敬?!」
「ああ、もちろんだろ?俺はお前に二度も助けてもらってるんだ、恩人も恩人だからな。尊敬しない訳がないだろ」
二度も助けてもらった?
たしかにゴブリン・イクシードの時に瀕死のゲングさんを助けたことはあったけど…
「二度ってあの戦いのときと…あと、いつのことでしたっけ?」
「いつって、最初だよ最初。お前が初めて俺とまともに接してくれたじゃないか。俺はあのおかげでひねくれ続けずに生きることが出来るようになったんだよ。確かにゴブリンのときに命を救ってもらったのもあるが、俺はお前に生き方も助けてもらってんだよ」
「ゲングさん…」
俺はゲングさんの話を聞きながら目頭が熱くなる。
そんな風に思ってくれていたんだと嬉しさもまた溢れ出てくる。
「だからこそお前を助けることが出来るときには全力で俺はお前を助ける。だからいつでも呼べよ」
「ありがとうございます!!」
おそらくゲングさんは今回の件は俺が関わっているのだと勘づいているのだろう。
本当にゲングさんと出会えて良かったと思う。
そうしてしばらく語り合った後、俺はレイナさんに呼ばれて共にグランドマスターのもとへと向かうことになった。どうやらついにあの人たちも到着したのかもしれない。
「グランドマスター、もしかして集まったのですか?」
「つい先ほど最後の一人が到着したところだよ」
そう高ランク冒険者たちが招集されている中で特に俺たちが待っていた人物たち、現役のSランク冒険者たちがついにこの王都へと集まってきたようだ。
「では、これからSランクの者たちと話し合いといこうか」
「はいっ!」
俺は気を引き締めて会議室へと向かう。
これまでよりも一癖も二癖もある人たちとの邂逅となるだろう。
俺は不安とワクワク、そして緊張で少し胸の鼓動が速くなっていた。