「翔太、おかえり!」
先にLINEで【もうすぐ帰る】と連絡を入れていた事もあり
岩本が玄関で出迎えてくれた
【外へ出たついでに何か買ってく?】の問い掛けにも
【そんなの良いから早く帰って来てよ】いつも通りの返信が来て、笑ってしまったのは…俺だけの秘密
「うん。ただいま」
岩本の家なのに【ただいま・おかえり】が定着してしまう程
今の自分にとって馴染み深いこの部屋…
ここに帰って来て、肩の力が抜けて…安心してしている自分に気付いて
先程までは緊張していたんだと、今更気付く…
「どう…だった?舘さん、何て?」
「何って?」
「まさか、あの…告白されたりしてないよね?」
以前、宮舘に【翔太と付き合っているのか】と確認された時の事を思い出し…
胸騒ぎがしたので聞いてみると
「あぁ…もう断ったから…」
サラリとそう答えた渡辺に、岩本が隣で驚いている…
まさ自分自身も、あんな事になるとは思っておらず
【思い出話でも出来たら良いな…】等と簡単に思っていた
だけど、宮舘の方は違った様で…
◇◆◇◆
「やっぱり、涼太の手料理は最高だな…」
渡辺は、先程食べた料理を思い出し嬉しそうに呟いた
「そう?そんなに喜んでくれたなら、良かった」
実は全て恋人の頃…渡辺が喜んで食べてくれたモノの中から厳選し、時間を掛けて作った自信作ばかり
「もう、腹一杯」
場所を食卓からテーブルに移し
ソファーに座った渡辺は、当たり前の様に寛いでいる
「はい、コーヒー」
「ありがとう」
そう言って受け取ったカップにも見覚えがあり…
「それも、俺の宝物」
そう告げた宮舘が、渡辺の横に腰掛けた
「あのさ、翔太…」
「ん〜?」
「あの…翔太って今、照と付き合ってるの?」
今のこの良い雰囲気を壊したくなかったが…
一応、確認しておかないと話が前に進まない
「えっ…ちょっ…熱っ!」
動揺した渡辺が、手にコーヒーを溢してしまう
「えっ!火傷してない?水道で冷やそう!」
入れ立てのコーヒーは、熱かった様で
慌てて渡辺を立たせると、そのまま流し台まで連れて行き…腕を掴んで、水で冷やす
「はぁ…大丈夫みたい、良かった…」
少々、赤くなっていたものの…酷い火傷はしていなかった
「俺よりも、涼太の方が慌ててたな」
冷やかす様に笑われて
「当たり前だろ…好きな相手が火傷なんてしたら、俺は凄く心配なんだよ」
思わず、言ってしまった言葉に…今更、誤魔化しは効かない
「…好きな相手?」
【好きだった相手】ではなく【好きな相手】…過去形ではなく、現在進行形の言葉に違和感を覚える
「あのさ、翔太…2人の間に、俺が入り込める余地は無いかな…?」
自分でも、最低の事を言っていると思う
側で渡辺の息を呑む音が聞こえ
「俺は、まだ翔太が好きなんだ…もう一度、俺と付き合って下さい」
腕に触れたまま、顔を見つめてそう告げる
「………」
続く沈黙…
こういう時の渡辺は、驚き過ぎて思考がパニックになっている事が多い
「………」
宮舘は、大人しくその返答を待つ
「あのさ、涼太…」
そう言いながら、触れている腕に手を添える
「うん…」
それを視線で追いながら、成り行きを見守る
「ごめん…俺、涼太とは付き合えない…」
ゆっくりと腕に絡まる指を剥がし、2人の距離が…ほんの少し遠くなる
「そう…分かった」
初めから、答えは出ていたのかも知れない
相思相愛の恋人同士の2人…
そこに、ずる賢く横から入って掻っ攫おうだなんて
悪い事はするもんじゃ無い…
俯いてしまった宮舘に
「ご飯、ご馳走様。…俺、今日はもう帰る…」
そう言い残した渡辺は、そのまま部屋を出て行った
コメント
5件
ふっかも舘もあっさりしてて男?らしい!!!!