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みえりな@多忙の為あまり居ない
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YouTubeの撮影は何事もなく終わった。不自然なくらいに。さっきのはなんだったのか。撮影中そのことしか頭になかった吉田は撮影が終わってすぐに佐野を人気のない場所に呼び出した。今、目の前にいる佐野から発せられる冷気は異常だ。事務所の中はどんなとこでも暖房が行き届いているため凍えることは無い。なのに今佐野と目が合うだけで背筋にゾクリと悪寒が走る。
「仁人。何?」
朝とは全く違う、暗く低いトーンの声にビクリと身体が強ばるのを感じた。二人でいる時はだいたい砂糖のように甘えた声で溶けた笑顔を見せてくれるのに。今対峙してる佐野は別人のようだった。いや、別人だと思いたかった。
「勇斗、なんかあった?なんでそんな怖い感じなの?楽屋で舜太と太智のこと睨んだでしょ。勇斗らしくないよ。」
「はぁ…。めんどくさ。」
ギリギリ聞こえる程の音量で佐野は言った。もちろん静かなこの空間で聞こえていないわけないが、聞き間違いだと、幻聴だと思いたくて吉田は聞き返す。
「……は?今なんて言った?」
「だから。めんどくさいって言ったんだよ。お前のそのお節介なとこまじでうざい。」
「お前、ほんとに勇斗?急にどうしたんだよまじで。そんなこと今まで1回も……」
「言わなかっただけでずっと思ってたんだよ。」
捲し立てるように早口で佐野は食い気味に言う。吉田に話す隙を与えないようにすぐさま続けて今まで思っていたという吉田への文句を冷淡な目と声で話し出した。
「お前さぁ、俺のなんだと思ってるわけ?もう我慢の限界だわ。その恋人づらやめろよ。気持ち悪い。」
「は、は?マジで何言ってんの?頭おかしくなったんじゃ、」
「だからぁ!!それやめろっつってんだよ!!」
今までは怖いほど落ち着いていた佐野の突然の大声に吉田は肩をすくめ怯える。
こんな勇斗初めて。見たことない。
怖い。
明確にそう感じた。今まで少し吉田のイタズラの度がすぎてちょっと怒られることはあったが『怖い』なんて思ったことは無かった。佐野は舌打ちだけその場に残し何も言えなくなった吉田に背を向け歩き出す。ここで佐野を引き止めないともう会えない気がした吉田は腕を伸ばした。が、足早に去っていく佐野には届かなかった。空を切る腕は力を失ったようにだらりと垂れ下がった。吉田の頬を一滴の雫が流れ落ちる。
「なんで、……勇斗、?」
佐野の大声を聞きつけて集まってきたスタッフの声に吉田は我を取り戻した。急いで頬の水滴を拭い払うとその場から逃げるように男子トイレに向かった。唯一1人になれる場所がそこしか浮かばなかったからだ。急いで1番奥の個室に入り、震える手でガチャガチャと鍵を閉める。
便器にヘナヘナと座り込むと空間は暖かいはずなのに体の芯から震え出した。ガタガタと震える体を両手で懸命にさすり、自分自身を落ち着かせようと何度も深く呼吸をする。その間、涙は止まらなかった。
山中から心配の連絡が来るまでの間、吉田はずっと全身をさすっていた。
コメント
2件
コメント失礼します。 桃さんに何が起きたのかわからず戸惑っています。 続きが気になります!
のりもちさん、第4話読ませていただきました……! 佐野くんの急な豹変、本当にぞっとしました。あの甘えた声が「めんどくさい」に変わる瞬間の温度差、狡猾なくらい自然で怖かったです。吉田くんがトイレの個室で震えながら必死に自分を落ち着かせようとするシーン、細かい仕草ひとつひとつに胸が締め付けられました。特に「ガチャガチャと鍵を閉める」音が、余計に孤独を引き立てていて。 まだ何か佐野くんの真意がありそうで、続きが気になります。この空気、どう動くんでしょう……。