京都での激戦の後、雅也と橘は新たな戦場である大阪へと足を進めた。京都の瓦礫の街並みを背にしながら、二人の間には新たな緊張が生まれていた。雅也はまだ異能の力に翻弄され、橘はその暴走を止める方法を模索していた。
大阪の街に足を踏み入れた瞬間、橘はその活気に驚いた。市場では商人たちが声を張り上げ、食べ物の香りが漂う。京都での静けさとは対照的に、この街はエネルギーに満ち溢れていた。
「ええやろ、大阪。わしはここでも試されるんや。」
雅也は刀を握りしめ、目を輝かせた。橘はその言葉に嫌悪感を抱きながらも、雅也を止める決意を固めていた。
「ここでも同じことを繰り返すつもりか?」
「そやな。けど、この街の人らは怯えへん。むしろ、立ち向かう準備をしてるやろ。」
橘が見渡すと、大阪の住民は武器を手にして集まり始めていた。中心には、華やかな衣装を身にまとった女戦士が立っていた。
女戦士は名前を「鶴姫」と名乗り、雅也に鋭い視線を向けた。
「お前が噂の異能持ちか。ここは大阪や。京都や江戸みたいに好きにはさせへんで。」
雅也は鶴姫の言葉に興味深そうに微笑む。
「ほう、あんたが大阪を守るんかいな。ええやないか、一度試させてもらおか。」
鶴姫は扇子を広げると、それを風へと変え、雅也に向けて放った。雅也は刀で切り裂くが、鶴姫の攻撃は止まらない。彼女はさらに速い動きで雅也を翻弄し始める。
橘はその戦闘を見ながら、鶴姫の力が単なる技巧だけでなく、雅也と同じような異能であることに気づいた。
大阪の街中で繰り広げられる戦いは、まるで祭りのように人々を引き寄せた。住民たちは戦いを見守りながらも、街を守るために瓦礫を運び出し、火の手を抑えるなど協力を始めていた。
橘は拳銃を構えながら戦況を観察していたが、鶴姫と雅也の戦闘が激しさを増すにつれて、危険にさらされることに気づいた。
「もうやめろ!このままだと街が崩壊する!」
橘の叫びに、鶴姫が一瞬だけ動きを止めた。
「お前も止めたいなら、手を貸し!」
鶴姫の言葉に、橘は拳銃を構え直し、雅也に向かって撃ち始めた。
しかし、雅也は鶴姫と橘の連携攻撃をものともせず、異能の力を限界まで解放した。刀から放たれる切断の力は空間そのものを裂き、大阪城を切り崩してしまう。
「この力がすべてや!誰にも否定させへん!」
雅也の叫びとともに、大阪の街は震え上がる。だがその時、鶴姫が静かに言葉を放った。
「お前がその力に縛られとるんは、お前自身が自由やない証拠や。」
その言葉に、雅也の目が一瞬だけ揺らいだ。橘はその隙を見逃さず、拳銃の一撃を雅也の足元に撃ち込んだ。
雅也はその場に倒れ込み、異能の暴走がようやく止まる。鶴姫はその場に立ち尽くし、深い溜息をついた。
「終わったんか?」
橘がそう尋ねると、鶴姫は力強くうなずいた。
「けど、これが終わりとは限らん。雅也の力を狙う連中はまだおるはずや。」
倒れ込んだ雅也は微笑を浮かべながら静かに言った。
「次は、どこやろな。橘、お前も準備しときや。」