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✦ ─────── ✦
少しずつ。
本当に少しずつ。
距離を取ろうとしている。
そのはずだった。
だけど。
長年続いた習慣は。
簡単には変えられなかった。
◌ ───── ◌
朝。
大学へ向かう道。
今日はいつも通りの時間だった。
🩵(昨日は早く行ったけど)
🩵(毎日は無理だなぁ)
そんなことを考えながら歩く。
すると。
見慣れた姿が見えた。
💜「お」
🩵「おはよ〜」
💜「おはよ」
自然に隣へ並ぶ。
当たり前みたいに。
昔からずっとそうだった。
💜「今日は普通なんだな」
🩵「何が?」
💜「昨日」
💜「珍しく早かったじゃん」
🩵「たまにはね」
💜「ふーん」
それだけだった。
深い意味なんてない。
ただの雑談。
だけど。
少しだけ安心している自分がいた。
◌ ───── ◌
講義開始前。
💜「レポート終わった?」
🩵「終わったよ」
💜「見せろ」
🩵「嫌です」
💜「なんで」
🩵「自分でやって」
💜「冷てぇ」
いつも通りのやり取り。
だけど。
最近は少しだけ変わった。
前なら。
こさめが先に助けていた。
今は少し考える。
少しだけ距離を置く。
ほんの少しだけ。
💜「ケチ」
🩵「頑張れ〜」
💜「めんど」
そう言いながらも。
結局いるまは自分で始めた。
◌
後ろの席。
❤️「見た?」
🩷「見た」
❤️「少し変わったな」
🩷「うん」
二人は気付いていた。
こさめが頑張っていることに。
少しずつ。
少しずつ。
離れようとしていることに。
◌ ───── ◌
昼休み。
💗「いるま!」
💜「おう」
彼女がやって来る。
最近は当たり前の光景。
💗「今日学食?」
💜「そう」
💗「一緒行こ!」
💜「いいよ」
二人が並んで歩き出す。
その様子を見ながら。
🩵「行こっか」
❤️「おう」
🩷「今日は俺ハンバーグ」
❤️「聞いてねぇ」
🩷「聞いて」
三人で食堂へ向かう。
その途中。
💜「あ」
何気なく振り返る。
理由はない。
本当に。
特になかった。
ただ。
後ろにいたはずのこさめがいなかったから。
💜(なつらんと飯か)
別に珍しいことじゃない。
そう思って前を向いた。
◌
食堂。
❤️「最近どう?」
🩵「何が?」
❤️「少しは慣れたか」
質問の意味は分かっていた。
🩵「どうだろ」
🩷「正直だ」
🩵「嘘ついてもばれるし」
❤️「当たり前」
少しだけ笑う。
前よりは平気になった。
そう思う。
彼女といるまを見ても。
胸が苦しくなる回数は減った。
……気がする。
🩵(慣れただけかな)
分からなかった。
◌ ───── ◌
午後。
講義中。
スマホが震える。
画面を見る。
💜『ペン忘れた』
思わず笑った。
🩵『知らない』
💜『貸して』
🩵『彼女に借りれば?』
送った瞬間。
少しだけ後悔した。
嫌味みたいだったかもしれない。
けれど。
返ってきたのは。
💜『今日別の講義』
💜『だから貸せ』
いつも通りだった。
何も気にしていない。
何も知らない。
🩵『一本だけね』
💜『神』
思わず笑ってしまう。
本当に。
調子が狂う。
◌ ───── ◌
放課後。
💗「いるまー!」
💜「おう」
今日も彼女が迎えに来る。
💗「帰ろ!」
💜「ん」
二人は並んで教室を出ていった。
🩵「……」
見送る。
もう追いかけない。
もう期待しない。
そう決めたから。
❤️「帰るか」
🩷「甘い物食べたい」
❤️「毎日言ってるな」
🩷「毎日食べたいからね」
🩵「太るよ〜」
🩷「幸せだから大丈夫」
また同じことを言っている。
思わず笑った。
こんな時間があるから。
なんとか頑張れている気がした。
◌ ───── ◌
その日の帰り道。
彼女と並んで歩きながら。
いるまはふと昼間のことを思い出していた。
💜(最近)
💜(こさ変だな)
前みたいにすぐ隣に来ない。
前みたいに何でも手伝ってくれない。
別に喧嘩したわけじゃない。
避けられているわけでもない。
普通に話している。
笑っている。
それなのに。
なんとなく。
少しだけ。
距離ができた気がした。
💜(まぁいいか)
考えても分からない。
本人が何も言わないなら。
きっと大したことじゃない。
そう結論付けて。
いるまはすぐにその違和感を頭の隅へ追いやった。
✦
まだ。
誰も知らない。
少しずつ変わり始めた日常に。
気付いていないのは――
いるまだけだった。
✦
りんご
7,915
#🍵👑
コメント
1件
あいさん、第15話読んだよ〜!こさめが「少しずつ距離を取ろう」としてるのに、いるまからの「ペン忘れた」連絡に笑っちゃって貸しちゃうの、めっちゃ分かる…癖ってなかなか抜けないよね😭💕 最後の「気付いていないのはいるまだけ」でゾクッときたよ。続きどうなるのか気になりすぎる〜!!