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ある晴れた日の朝。
その日は数日ぶりに雪がやみ、暗い監獄の壁には太陽の光が反射していた。
俺の名はKAITO。
死刑を待つ者だけが収容される「めろんぱん監獄」の看守として、日々働いている。
…なんて言ったけど、ここに収容されているのは、殺人とか強盗とか本当に処刑されるほどの罪を犯した人なんかじゃない。
ホームレス、障がい者、異国からの難民、他にも色々だけど、まあ要するに”普通”の暮らしをしてない人たち。
はっきりとした基準があるのかは知らないけど、とにかく「政府に都合が悪い人物」だなんて思われたら一発でアウト。
即、投獄されることになるだろう。
ちなみに、監獄なのにめろんぱんなどという可愛い名前がついたのは、初代看守長が大のめろんぱん好きだったかららしい。
「かいてぃー?早くしないと間に合わないよ!」
「おう、今行く!」
こいつはなろ屋。
常に二人一組で行動しなければならないこの監獄で、相棒ともいえる存在だ。
なろっちは俺が働き始めるずっと前からここにいるらしく、新人の頃は色々なことを教えてくれた。
「ねぇ、今日の処刑って340番だったよね?」
横に並び、2人で歩いていると、なろっちはいつもの笑顔で俺に話しかけてきた。
ここでは、1週間に1度処刑が行われる。
毎週土曜日の午後3時。
誰が処刑されるのかは、前日の夜まで担当の看守にさえ明かされない。
そして、今日がその土曜日だ。
「確かそうだったな。」
「最近300番台が一気にいかれてるよね…。担当の人たち、忙しそう。」
「ちょっと前は俺らの担当が4連続くらいで処刑されてたし、そんなもんだろ。」
「…そう、だよね。」
なろっちは少しだけ笑顔を曇らせ、そうつぶやいた。
俺がこの監獄で働き始めてから、もう4年が経とうとしている。
4年という月日は、人間が処刑される瞬間を目の当たりにしても何も思わなくなるくらいには、人の心を麻痺させるらしい。
なろっちは今でもたまに魘されることがあるみたいだけど、俺はもうすっかり慣れてしまった。
初めて自分の担当が処刑された日には、夜中に1人でトイレへ駆け込んでいたというのに。
ここに来てから、自分が作り変えられていくような、俺という人間が、存在ごと消えていくような、そんな錯覚を覚えることがある。
人の死をみて心が動くことなど、今ではほとんど無くなったように。
…もしかすると、俺はこれからどんどん人間でなくなっていくのかもしれない。
「…やばっ、もうバス来てるよ!?」
「え、ガチじゃん…。今日早くね?」
「そんなこといいから早く!走れかいてぃー!!」
「いやお前もな!?」
今日は、210の番号が与えられた囚人が新しくやってくる。
俺達の新しい担当だ。
新人が入ってくる日は、担当が処刑される日より余程忙しい。
広い監獄を案内したり、規則を説明したり、やることが山程あるのだ。
感傷に浸っている暇はない。
段々遠くなっていく背後の足音は置いていくことに決め、俺は一層足に力を込めた。
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