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episode19 破られた響宴
ブライドside
「ここ、、、本当に地獄か、?」
「あはは、一見そうは見えないよねぇ」
映矢輝はのほほんと答えるが、ここが私の想像していた地獄だとはとても思えないのだ。
人々は笑い合い、罪を償うための仕事も仲間と協力しながら取り組んでいるのである。
私が想像していた地獄はもっとこう、残忍な感じというか、、、、
あ、所夜はどうしたって?安全な空間の中に寝かせておいたよ。
「というか映矢輝。私はまだ信じねぇぞ」
「あはは、、まあ今の地獄はあたしが作り上げたみたいな所あるし。」
「あたし割と平和主義なところあるからさ、あんまり残酷な罰とかつけたくないんだよね、」
「お前、、、ちっこいのに懐深いのな」
「失礼な!コレでもえーちゃんの10倍くらい生きてるのよ?」
ただただ雑談をしているうちに着いてしまった。
映矢輝の家、、すなわちその閻魔も住んでいるバカみたいにでかい屋敷に。
いやデカすぎんだろ。城かよ。いや城だな。
洋風でシックな作り。地獄の雰囲気にあって無さすぎて笑えてしまう。
扉がデカ過ぎて私たちで開けられるかすら心配になる。
カチャ
「ほら!こっち!裏口からなら音を立てずに入れるから!」
「お、おう、!」
裏口、、、裏口ねぇ、、、
というか中もデカすぎんだろ。迷子になるわこんなの。
いかにも禍々しい雰囲気にほんの少し足がすくみそうになるが、またすぐに足を踏み出す。
映矢輝がこっちだよという方へ進むたびにその雰囲気は恐ろしさを増していく。自分の体から汗が出るのがよくわかる。
そして大きな階段の一番下まで降り、また大きな扉が現れる。入り口とそう変わらない大きさだ。
「えーちゃん、開けるよ。覚悟はいい?」
「もちろん。」
そう答えると、その小さな体で映矢輝は大きな扉を開けた
ギィィィィィ
ドォン!!!
「!?」
扉を開けたその瞬間、隕石に近いものが扉目掛けて突撃してきた。
扉は瞬く間に壊れたが、その瓦礫が私たちを守ってくれ、幸いかすり傷程度だ。
「映矢輝。どうしたんだ?人間を連れ込むなんて。気配を探った感じ、死人ではないだろう?」
「、、、うん。そう。この子はあたしの仲間だよ。」
「いまからパパを倒す、、その仲間だ!」
「私を倒す、、、?随分とまあ、短期間でわがままになってしまったようだ」
全身で感じる、圧とその風格。映矢輝が怖がるのも当然だ。
この風格を持つ相手によく今の言葉を言えたなと感心してしまう。それほどまでに悍ましい閻魔だ。
ギィィィィィと音をたて、後ろの扉がしまる。まるで逃がさないと言われているようだ。
だが、ここで引くほどヤワな人間じゃない。最後まで付き合ってくれと愛武器に言い聞かせる。
「さぁ、私の元へ戻っておいで、映矢輝。」
「はっ、残念ながら映矢輝を調教させるあのチョーカーは使えねえよ?」
「なに?」
「よく見てみろ。チョーカーに埋め込まれている宝石の色が違げぇんだよ」
「私は手先が器用でな。ここに来るまでの間にすり替えさせてもらったぜ。」
「たかが人間が、、こざかしいマネを、、!」
「その人間が、今からお前を倒すんだ。人間は人外とはまた違う強さを持っているからな。」
「さぁ、全力で行こうぜ!映矢輝!!私もやる気が湧いてきた。」
「うん!もっちろん!」
武器をもち、構える。
「失望したよ、、映矢輝。仕方があるまい、、、。」
閻魔は大きな鎌を取り出す。所夜の持っている小さなものと違い、大きくて派手な装飾の大鎌だ。
「いいか人間。よく覚えておけ。人間が人外に勝てる日は来るはず無いのだと。」
そう言うと、鎌を持ち突進してくる。
早い。もしかすると所夜よりも。とっさに反応しなければ当たっていたかもしれない。
閻魔が鎌を振り上げる。その隙に回り込み、自分も刃を突き刺す。
しかし、相手の反応速度は異常と言っていい。避けられたのだ。これは手強いと再認識させてくれる。
映矢輝も魔法を使って応戦するが、傷一つすらつかない。まるで魔法を脅威とすら思っていない。
「どうした人間、そんな程度か。」
余裕そうな顔で言われる。
「最初っから本気出すわけねぇだろ!」
「あとな、よく聞いておけ閻魔!油断していると、人間に殺されるぞ!!」
閻魔side
一目見た時から少し感じていた。
映矢輝が連れてきた人間。なにか普通の人間とは違う。
戦えるだけでは無い。映矢輝に合わせて戦ってはいるがそんなことでは無い。
私に、、この私に付いてきているのだ。私の速度は誰にも負けたことがない。ずっと人を驚かせてきた脅威の速度のはずだ。
私の攻撃を避けるだけで普通ではない。ましてや、私がその都度大きく避けなければならない攻撃をしてくるのだ。
心底腹立たしい。たかが人間ふぜいが映矢輝を操り、私に応用できる戦い方をしているのだ。
しかも、苦しそうな顔ひとつしていない。映矢輝の魔法も相まってものすごく厄介だ。
体格からしてもまだ20歳にも満たない小娘。なぜだ、何故こんなにも身体能力が高いのだ。
「はぁっ!!」
まずい。と思った時には遅かった。私は一発この小娘にくらってしまったのだ。
だが、これは好都合。さっさと反撃と行こうじゃあないか。
ブライドside
なんとかやっとの思いで一発喰らわせた。が、わたしの体力がだいぶ減ってきている。
このままじゃ、体力が全部なくなって終わりだ。なんとか次の手段を考えないと、、、。
「まずい、、、!えーちゃんっ、、!!」
「どうしt」
ズドッ
考える前に、肩に激痛が走った。
なんだ、何が起こった。
何をくらった。どうやってこの間合いでわたしに攻撃を、、、
ふと肩を見てはっとした。血液だ。奴は血液を刃物に変換させたのだ。
信じられない。だが、大魔法使いを操っていた男だ。習得していたと言われても不思議ではない。
もう左手は動かせない。だが利き手じゃないのは唯一の幸いだ。
素早く止血し、反撃をしなければ。長いスカート丈をちぎろうとしたその時。
足に着いた血が目に入った。これは私の血か?いや、足は出血をするような怪我はしていない。
はっとした時には、既に遅かった。今度は足に激痛が走った。
出血の量が多い。早く止血して立ち上がらなければ、、、!
「えーちゃん!!大丈夫!?」
心配そうにこちらを見つめる映矢輝。大丈夫だと告げ、止血を慌てて行う。
だが、止血したとてどうする。足はもう歩くだけでも精一杯だ。走って攻撃を避けることなんてできやしねぇ。
反撃の方法を考えなければ。私ならできるはずだ!
映矢輝の魔法と私の斬撃を上手く噛み合せる方法、、、。以前、私が苦戦させられた魔法と言えば、、
「、、、、!!映矢輝、火の魔法だ!!」
「火?!」
「お前が相手の鎌を熱で弱らせて私が切る!いけるか?」
「なるほどね、、、!もちろん!大魔法使いにかかればお茶の子さいさいよ!」
体力的にこの作戦は一か八かだ。なんとか力を振り絞れ!
まだ戦いは始まったばかりだ。足ひとつ、手ひとつ使えなくなったからなんだ。あの戦場で負った怪我に比べりゃなんともないも同然。
私は私の戦い方で絶対にお前を倒してみせる!!
「行くぞ映矢輝!!お前の全力をわたしに見せてみやがれ!!!」
「言われなくても、もちろんそのつもりだよ!!」