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一話目は、なんとか終わった。
カットがかかるたびに、
体の芯が抜けていく感覚はあったけど、
涼ちゃんは最後まで立っていた。
「お疲れさま」
その一言で全部が報われるほど、単純じゃなかったけど、
“終わらせた”という事実だけが、支えだった。
三日後。
編集された一話目が、公開された。
通知が鳴る。
話題になってる、という連絡。
演技がいい、と。
雰囲気が役に合ってる、と。
でも涼ちゃんは、
画面の中の自分をまともに見られなかった。
——細い。
思っていたより、ずっと。
実家では、両親がテレビの前に座っていた。
「……あら」
母親が言葉を失う。
「しばらく見てなかったら……こんなに痩せちゃって」
父親は何も言わず、
画面から目を離さなかった。
褒めるでも、責めるでもない沈黙が、
一番、胸に残る。
別の場所では、
元貴の親と若井の親が、同じ映像を見ていた。
「涼架、めっちゃ痩せたな」
ぽつりと出たその一言に、
空気が一瞬止まる。
「役作り……だよな?」
確認するような声。
誰も否定できなかった。
その夜、元貴からメッセージが来る。
【一話、見た】
【演技はほんとに良かった】
少し間を置いて、
【でもさ】
涼ちゃんは、その続きを開けなかった。
“良かった”と“痩せた”が、
同時に並ぶ世界で、
自分が何を失って、何を得たのか、
もう分からなくなっていた。
ベッドに横になって、
天井を見つめる。
「……一話目は、終わったよ」
頑張った、という言葉は出てこない。
代わりに浮かんだのは、
次の撮影日と、
次に減らさなきゃいけない“何か”。
評価はされた。
でも、
安心は、どこにもなかった。
涼ちゃんは目を閉じた。
眠れるかどうかは分からないまま。