「ねぇ、アイク」
真夜中、リビングにて。
漸く執筆から解放されて自由の身となったアイク──炭酸を飲みながら、ソファに座り深夜番組をぼんやりと見ていた──に、後ろから声がかかった。
「何?シュウ」
ちょうど口に含んだ炭酸をこくりと飲み込んで、アイクは振り返る。
いつも通りの笑顔を浮かべている、どこか楽しそうなシュウと、その後ろにヴォックスの姿も見つけた。
そういえば、シュウは今日解呪の依頼があったらしく、朝から居なかった。なかなか帰ってこないので心配していたアイクだったが、見たところ怪我などは見られなかったので、こっそりと安堵の息を吐く。
でも、ヴォックスも同伴していたのは知らなかった。鬼の手も借りたい、といったところだろうか。
シュウはくすりと笑うと、「お願いがあるんだけど」とだけ言った。
「お願い…?」
シュウがお願いだなんて言うのは珍しい。
内容は皆目見当もつかないし、後ろのヴォックスは相変わらず黙ったままだ。ただ、なんというか…例えるなら、これから怒られると分かっている子犬…、と言ったところか。無論、400歳越えの鬼であるのだが。
ヴォックスの様子が少し気になるものの、シュウが言う事なら突飛なことでは無いだろう、とアイクは判断した。彼は、このLuxiemの中で数少ない常識人だから。
「勿論、僕に手伝えることだったら」
アイクがそう言うと、シュウの目が楽しげに細められた。
あ、まずいかも。アイクは咄嗟にそう思った。これは多分、何かを企んでる目だ。
「ぼ、僕にもできることと出来ないことがあるからね…?」
恐る恐る、言ってみる。
シュウは満面の笑みを浮かべた。
「当然、アイクに無茶なんて頼まないよ!
ただ数日だけ───」
その次の言葉に、アイクは”お願い”を気安く請け負ったことを死ぬほど後悔した。
「数日だけ、ヴォックスとピッタリくっついて生活してもらうだけだから!」
コメント
4件
ヤバイです…神すぎるんですけど… これって続きありますか…? 続きあるんだったら楽しみにしていますっ!!
なう(2023/01/08 04:10:40) 続き待ってます!