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イリア「私はイリア。貴方が殺すべき対象よ。ノア。」
ノア「………。」
ノアは何も答えない。ただイリアの横に座る。
イリア「…正気?私は貴方達を絶滅寸前に追いやったきっかけの張本人よ。」
ノアはただ呆れた顔をする。
イリア「…そう。馬鹿ね。」
ノア「……君を殺しはしない。」
イリア「…喋って大丈夫なの?」
ノアは首を横に振る。
イリア「そう…それはどうしても伝えなければいけないことなの?」
ノアは首を縦に振り、まっすぐイリアを見つめる。
イリア「貴方の言うことを断る権利は私には無いわ。私は全て貴方に従う。…それがせめてもの出来ることだから。言って。」
ノア「…あの子を守って欲しい。」
イリア「…あの子って…どっち…」
イリアの話を遮ってノアは咳き込む。それはとても美しいとはかけ離れた声で、咳と共に血液が口から出ていた。
イリア「…だから言ったのよ。私は。…でもいいわ。貴方の状態を見て大体分かった。できる限り努力してみるわ。」
イリアがそう言うと、ノアは青白い顔で、でもどこかほっとしたような表情を浮かべていた。
イリア「貴方はもう休んでて。目の前で死なれたら夢見が悪いわ。」
ノアはこくりと頷き、テントの中に戻っていく。
イリア「そう…そういうことなのね…。…本人はどこに行っちゃったのかしらね。」
(上手く考えがまとまらない。それに私も少し眠くなってきた。そろそろ交代時ね。)
イリア「アリィ、見張りの交代してくれるかしら。」
アリィ「ん〜…はーい…」
アリィは起きようと、目を擦る。
イリア「擦ったらダメよ。」
(ノアは居ない…居るのはポルポル…)
アリィ「だってぇ〜…ふぁ…顔を洗えたらいいのに…」
イリア「ここじゃ砂でしか洗えないわよ。」
アリィ「む……あ、段々目開いてきた。イリア…でいいのかな?」
イリア「ええ。」
アリィ「もう交代できるよ。イリアはゆっくり休んでて。」
イリア「お言葉に甘えさせてもらうわ。」
イリアはそう言うとテントの中に入っていく。
イリア(シリルにも伝えないと…でも今は…しっかり寝る…べき…ね…)
瞼がゆっくりと落ちていく。
アリィ「……。」
アリィはサボテンをナイフで切る。
シリル「おはよう。水分補充?いいね。多めに持ってるとはいえ、何があるか分からないからね。」
アリィ「どわあああ!?」
シリル「驚かせるつもりはなかったんだけど…」
アリィ「す、凄い早起きだね…」
シリル「そうかな?…そうかも。誘拐される前は朝早くから仕事していたから。まだ涼しいし、ほんとに早かったみたい。アリィちゃん、少しだけしか眠れないだろうけど、僕が代わろうか?」
アリィ「それはダメ!イリアに言われたんだ。戦えるのはシリルとジークの2人だからなるべくコンディションがいい状態にしてなきゃいけないって。だからダメ。」
シリル「そう言われてるなら仕方がないね。でも君達もしっかり1晩眠れてないと辛いでしょ?次は僕達が見張りをやるよ。」
アリィ「イリアもそう言ってた。うん、お願い。」
シリル「…君って凄く素直だね。」
アリィ「そうかな?」
シリル「うん。いい事だよ。愛嬌があるってことだから。話をしっかりまともに聞いてくれるから嬉しくてもっと話したくなるし可愛がりたくなる。」
アリィ「…もしかしてなにかあった?」
シリル「それが聞いてよ!夢でさぁ!実際にあったことなんだけど…依頼しといて、まともに話が通じない依頼人がいて…おまけに依頼完了後もクレームだらけで…」
アリィ「嫌な人と夢で再会してしまったと…」
シリル「そうなんだよ…アリィちゃんみてると心が癒されるよ。マスコットみたいで。」
アリィ「それは喜んでいいのかなぁ?…もしかして早起きした理由は案外それだったりして。」
シリル「否定しきれないなぁ。」
アリィ「2度寝しないならご飯作るの手伝ってもらってもいい?」
シリル「うん、いいよ。目は覚めきってるから。」
アリィ「ありがとう。」
イリア「ん…」
イリアがぱちりと目を開ける。
イリア(いい匂いがする…もしかして、アリィ朝ごはん作ってくれたのかしら…。)
イリアがテントから外を除く。
シリル「おはよう。イリア。」
アリィ「おはよう。朝ごはん作ってあるよ。」
イリア「シリルも起きてたのね。朝ごはんもう作ってくれちゃったの?ありがとう。2人も起こしてくる。」
アリィ「うん、お願い。気を使って自分の時だけイリアは長めに見張りしてくれてたみたいだからせめてものね。」
イリア(気づいてたのね…)
シリル「よく時計もないのに分かったね。」
アリィ「逃走で培われた経験かな…。」
シリル「嫌な経験だ…。」
2人は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
イリア「何してるんだか…ジーク、…ポルポルちゃん、起きて。」
ポルポルは本当に生きてるのか怪しいほどに泥のように、ぐっすり眠っている。対照的にジークはガバッと起き上がる。流石にここまですぐ起きるとは思っていなかった為、イリアは少し驚く。
ジーク「おはよう。」
イリア「お、おはよう…起きてた…?」
ジーク「いや全然。爆睡してた。」
イリア「ほんとに…?」
ジーク「何で嘘つく必要があるんだ…。あとその化け物を見るような目はやめろ。」
シリル「ねぇあれ。」
シリルはテントを指さし、アリィを見る。
アリィ「あれでも本当に寝れてるから大丈夫だよ。職業病みたいなもの。…ただあれ脊髄反射で起きてるから、血がたまに間に合わなくて貧血起こすんだよね。」
シリル「ダメじゃん。」
ジーク「アリィ。」
アリィ「どうしたの?」
ジーク「今イリアと起こそうとしてるんだが、ポルポルが全然起きない。」
アリィ「あれま。」
イリア「…まぁきっと疲れてるのよ。ゆっくり寝させてあげましょう。」
ジーク「…そうだな。」
アリィ「じゃあ一足先に朝ごはん食べちゃおっか。」