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百日草の同期

11 - Case2ー01 進路先

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2024年12月03日

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五年前――



「おーい、明智。お前進路どうするよ」

「ああ?」



ビシッと机を叩かれ、俺はせっかく気持ちよく寝ていたのに起こされ不機嫌に顔を上げる。それが同級生の男子らに伝わったのか「うわっ、寝起き悪っ」と若干引かれてしまった。まあ、いつもの事だしと、俺は窓の方を向けば、話を聞いているのかと、また机を叩かれる。

高校三年生の春頃だったか。

まだ進級したばかりだというのに、やれ受験だ就職だと教師らに煩く言われ、俺はイラついていた。

とっくの昔に進路を決め、そのためにやれることはやってきたのに教師らには「あの大学はどうだ」とか「国公立の推薦狙えるな」などと言われ、うんざりしていたのだ。

俺としては、やりたいことがあって、頭の中でしっかりと将来設計をしっかりとたてていて。なのに、それを否定……までは行かずとも、足下を崩そうとしてくるその悪意のない言葉に俺は、怒鳴り散らかしたい気持ちを抑えるので必死だった。

大体は、皆、私立か国公立の四年制大学を目指すだろう。

俺の通っている黒勇高校は国内で名の上がる有名私立高校でその偏差値もかなり高い。また、部活動にも力を入れているため、毎年のように何処かしらの部活は全国に行っている。隣町である双馬市の同じく私立の白瑛高校には劣るが、それでもあそこと肩を並べられるぐらいの成績優秀学校だった。

そんな黒勇高校の、エリートコースである黒勇コースの生徒である俺は、勿論のこと国公立を教師から勧められていた。

それを知ってか知らずか、同級生達は俺の周りに群がって何処に行くんだよ。としつこく聞いてくる。



「何処でもいいだろうが。お前らに関係ねえんだし」

「そう言うなって、参考までに」



と、俺が適当にあしらうと別の奴が答えを求める。それに俺は面倒くさいなと思いつつも、ふて寝をかましてやろうかと考えていれば、それを許さないとでも言うようにすかさず違う奴が口を開いた。



「だって明智、この間の模試で、あの難関国公立の百華大学の判定Aだっただろ? やっぱ、そこ狙いなんだろ」

「今の時点でAって凄えわ。尊敬する」



そんな風に、俺を理想化してぺらぺらと喋る同級生を見ていて、何だか馬鹿らしくなった俺はため息をつく。そして、少し苛立ちながら口には出さなかったが、出る寸前の所まできていた。

もう、いい加減にしてくれと。

俺は、そんなに偉くないし、天才でもない。

普通に努力して、それなりに勉強して、それなりの結果を出しただけなのだ。お前らもやっているだろうと。

そう言いたかった。でも、それは確実に上から目線で感じの悪い奴になるから俺は口にしなかった。

それに、もっと天才を知っていたから。



(恭……何してんだろうな……)



青い空を見上げながら俺は、遠くにいる幼馴染みであり恋人のことを考えていた。高校に上がってからも音沙汰なし。何処で何をやっているのか分からない。母親同士は連絡を取り合っているようだが、コソッと耳にするだけでとくにあっちが話したがっている様子もないようだった。

俺の事など気にならないぐらい忙しいと言うことなのだろうか。



(それだったら、泣けるな……)



そんなことを思いつつ、まだ俺の周りを離れようとしない同級生に目をやった。

どうやらまだ、俺の進路について聞きたいようだ。



「百華大学じゃないなら何処行くんだよ。黒勇大学はそこまで偏差値高くないんじゃないか?」

「あのなぁ、凄くしつこいぞ、お前ら」



俺はいい加減頭にきて、睨みを利かせながら低い声で言った。しかし、それで怯むような同級生達ではないのは分かっていたのだが。案の定、俺の威圧に臆することなくへらっと笑ってみせる。それが余計に腹立たしくて俺は舌打ちをした。

言ってもどうせ、あり得ないだろと否定されるような気がしたからだ。

何でこんなにも感じの悪い奴なのか、苛立っているのか自分でもよく分からない。

同級生や教師が勧めてくる百華大学は国内でも有名な国公立の大学であり、そこの法学部には少しばかり興味があった。だが、四年間という時間を費やして学びたいかと言えば、それを上回るほどのことがあり、そこまで興味をそそられなかった。

はあ……ともう一度ため息をついて、これ以上構うなという意味で俺は仕方なく自分の目指しているものについて口にする。



「んな、聞きたいなら教えてやるよ。俺が進路希望で出してんのはな、警察だよ」



案の定ポカンとされたのは、言うまでもない。

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