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#TL
瀬名 紫陽花
14,533
#BL
多 動 症 .
30
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車内という密室の温度が、一気に上がったような気がする。
「じゃあ、セックスはあるんだ?」
「セっ───!?」
あまりにも唐突で破廉恥な核心の単語に、頭が真っ白になる。
「だって、経験豊富なんだから、当然あるでしょ?」
「あ、あるよ……っ!もちろん!」
苦し紛れに、最大の嘘を上書きしてしまった。
心臓がうるさいくらいに脈打つ。
「へえ、誰としたの?」
「そ、それは…会社の人とか……」
「ふーん。じゃあ、フェラもしてあげたんだ?」
「ッ!?そ、それは……っ」
「え?セックスしたことあるなら、フェラくらいしたことあるのが普通じゃないの?経験豊富なんでしょ?」
「も……もちろん、したことあるに決まってるでしょっ!」
もう完全にパニック状態だった。
頭の中は羞恥心と焦燥感で爆発寸前だ。
(どうしよう、これ以上突っ込まれたら絶対に嘘がバレる……!)
しかし、私のそんな焦りを見透かしたように
叶人くんは不意に車を路肩に滑らせて停車させた。
いつの間にか、車は私の自宅マンションの前に到着していたのだ。
彼はハザードランプを点けると、シートベルトを外し
私の方に信じられないほどの至近距離まで身体を寄せて、ニヤリと底意地の悪い笑みを浮かべた。
「ふふっ…本当に、さっちゃんって分かりやすいね」
「えっ……」
「お家、着いたよ。…寝室まで、送るね?」
「え……!?わ、悪いって!もう酔いも冷めたし、1人で歩けるから──」
「いいから。送らせて」
拒絶を許さない、有無を言わせぬ優しい声で囁くと
叶人くんは素早く車を降りて助手席側に回り、ドアを開けた。
そして、まるでお姫様をエスコートするように手を差し出してくる。
私はその圧倒的な覇気に呑まれるようにして、彼の手を取って立ち上がるしかなかった。
◆◇◆◇
エントランスを抜け、エレベーターを降りて我が家の玄関へ。
叶人くんはごく自然な動作で私の肩に腕を回し、支えるフリをしながら廊下を進んでいく。
彼の大きな体躯から放たれる体温と香水の香りが、狭い廊下に充満して息が苦しい。
そのまま彼は、迷うことなく私の寝室へと私を連れていき
ベッドの縁に優しく座らせてくれた。
ふわりと柔らかいマットレスの感触に身体が沈み込む。
「んっ…ありがとう、叶人くん」
「これくらい、お易い御用だよ」
ベッドに腰掛けたものの
急激に大量のアルコールを摂取したせいか
自分の頬がリンゴのように紅潮して熱を持っているのが分かった。
「ごめん、叶人くん。ちょっと、身体が熱いから脱ぎたいんだけど…」
そう言って、私が上着のボタンに手をかけた
そのときだった。
叶人くんは私の隣にそっと腰を下ろすと
一気にトーンの落ちた、低い声で呟いた。
「あのさ…」
「…え?」
「さっちゃん、ちょっと…無防備すぎない?」