(ああ、退屈だわ。)
シドニア国の女王ロカは闘技場で男達が素手で殺し合う様子を眺めながらふわりと 欠伸をした。
女王ロカは傾国の美女としてその悪名を国中に轟かせている。
ロカは王族の血筋ではない。
当時の皇太子バルザード十二世と仮面舞踏会で 出会ったロカはバルザード十二世を籠絡し 女王の座に君臨した。そしてロカは現在の国王バルザード十三世を産み、女王としての座を欲しいままにした。
その後バルザード十二世は何者かの手によって毒殺された。こうして王位はバルザード十三世に受け継がれ、ロカは国王バルザード十三世の母として邪智暴虐の限りを尽くした。若返りのためといい毎月一度国の処女を処刑しその生き血を飲み、国の血税で闘技場を建て、そこで屈強な男達を殺し合わせた。
「どちらかが死ぬまで殴り合いなさい、
生き残った方に私を抱かせてあげる。」
女王ロカがけだるげにそう言い微笑すると
屈強な男二人は男性器を奮い立たせ咆哮し互いに掴みかかった。
ロカの肉体は男どもを狂わせるほどの魅力があった。
色気を纏う憂いをおびた瞳、ぷっくりとした唇、煌びやかなドレスの上からでも分かる適度に熟れた豊満な乳房、 彫刻のような美しいボディライン。
それら全てが男の欲情を掻き立て男共を破滅へと導いた。
(バル、私を置いて逝くなんて、馬鹿な男。)
あまりにも退屈な殺し合いを眺めながら、ロカは毒殺されたバルザード十二世に思いを馳せた。バルザード十二世と始めて出会ったのは とある地方の仮面舞踏会だった。
その時、 ロカはまだあどけない少女だった。ロカは 当時流行していたガラスの靴を履き、仮面を身に付け、言い寄ってくる男達を軽くあしらっていた。刺激を求めて赴いた仮面舞踏会も 彼女にとっては退屈なものだった。
「はじめまして、素敵なお嬢さん。僕とどうか踊っていただけませんか?」
そんなありきたりな口説き文句で当時青年だったバルザード十二世はロカをダンスに誘った。
…….それは直感的なものだった。手をとり、 腰を抱かれ、バルザード十二世と社交ダンスを 踊った時、ロカは
(ああ、私はきっと、この人と結婚するん
だな。)
と思った。実際、その直感は当たっていた。
後にロカはその男がシドニア国の皇子バルザード十二世であることを知ったが、そんなことはロカにとってどうでも良かった。
国中の反対を乗り切りバルザード十二世とロカは結婚した。
バルザード十二世はロカが望む全てをくれた。
欲しい服も宝石もすべて取り揃えてくれた。何よりも、バルザード十二世は いつだって眠る時に必ずロカのことを慈しむように抱きしめてくれた。
バルザード十二世の腕に抱かれている時だけロカは全てを忘れて眠ることが出来た。
バルザード十二世はいつだってロカの心を満たしてくれた。
(バル、あなたはシドニア国の国王だからきっと遅かれ早かれこうなっていたのでしょう? …….私より先に死ぬなんて、本当に馬鹿な男。あなたを殺した愚か者は私が必ず見つけ出して火炙りにしてあげるわ。)
ロカの暗い深海のような瞳の奥底で青い炎の形をした復讐心が燃えていた。
涙はとっくに渇き果てていた。
闘技場で生き 残った男を秘密の快楽部屋へと呼び込み セックスした。
男はロカが腹筋に愛撫されるだけで
簡単に射精した。
(バル、見てるかしら?私今こんなくだらない男に抱かれているわよ。悔しかったら墓場から出てきなさい。)
男の上にまたがり腰を動かしながらロカは喘ぐふりをした。男は途方もない快楽に呑み込まれすでに理性を失っていた。
ひとしきり行為を終えたあと、ロカは男の処刑 の手筈を整えた。
屈強な男は鎖に縛られ、大粒の涙と鼻水と糞尿を垂れ流し惨めに命乞いをした。
処刑人の良く手入れされた斧がギラギラと光っていた。
女王ロカがふわりと欠伸をする。
麻布を被った処刑人キャッスリングの斧が無駄のない洗練 された動きで男の首めがけて振り降ろされた。
【頭と首が泣き別れになる音】
(バル、ちゃんと見てるかしら。)
男の首が飛び、ぱっくり開いた断面から派手に鮮血が吹き上がった。
【激しく飛ぶ血渋きの音】
ロカの顔に返り血がついた。
(必ず地獄で逢いましょう。)
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