テラーノベル
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家に帰ってからも、若井の手は止まらなかった。
ベッドに寝転がりながら、スマホを顔の上にかざす。
さっきの続き——気づけば何話も読み進めていた。
「ははっ……なにこれ、展開早すぎだろ」
思わず声に出して笑う。
現実じゃありえないやり取り、都合のいい会話。
なのに、不思議と嫌じゃない。
むしろ、どこかで期待して次を開いてしまう自分がいる。
「……やば」
小さく呟いたその時だった。
ふと、昼間の涼ちゃんの顔が頭に浮かぶ。
——「気持ち悪い」
あの、はっきりとした拒否。
若井の指が、ぴたりと止まった。
「……いや、でもさ」
スマホを少し下ろして、天井を見る。
「これ、涼ちゃんにこんなことしたら絶対嫌じゃん」
自分でも分かってる。
物語の中とはいえ、勝手に性格や行動を作られてる。
今日、見せただけであんな顔してたのに。
「……さすがに、な」
さっきまでの笑いが、少しだけ引いていく。
しばらく黙ったあと、若井はスマホを持ち直した。
「……元貴ならどう思うんだろ」
ぽつりと呟いて、そのままメッセージを送る。
──ちょっとこれ見て
数分後。
既読がついて、通話がかかってきた。
「もしもし?」
『見たよ』
元貴の声は、どこか楽しそうだった。
『ふふ、確かに面白いね』
「だろ?」
さっきまでの迷いが少しだけ軽くなる。
「いやもうツッコミどころ多すぎてさ」
『でもさ』
元貴が、少しだけ声のトーンを落とした。
『これ、本人が見たらどう思うんだろうね』
「……」
一瞬、言葉が詰まる。
「……まぁ、涼ちゃんは普通に嫌がってた」
『だよね』
くすっと小さく笑う気配。
『若井は?』
「俺?」
少しだけ間が空く。
「……最初は、普通に面白いなって思った」
正直に言う。
「でもさっき、ちょっと考えた」
スマホを握る手に、少し力が入る。
「自分が逆だったら、どうなんだろって」
『うん』
元貴は急かさず、ただ聞いている。
「……なんか、変な感じするよな」
完全に否定もできないし、肯定もしきれない。
そんな曖昧な感覚。
通話の向こうで、元貴が小さく笑った。
『でもさ』
「ん?」
『それでも見ちゃってるんでしょ?』
「……」
一拍。
「……まぁな」
苦笑が漏れる。
『人ってそんなもんだよ』
軽く言うその言葉に、少しだけ救われる。
若井はスマホの画面を見つめる。
さっき途中で止まっていたページ。
「……なぁ」
『うん?』
「続き、読む?」
少しだけ悪びれた声。
一瞬の間のあと——
『読むでしょ』
即答だった。
若井は吹き出しながら、またスクロールを始めた。
さっきより少しだけ、意識しながら。
それでもやっぱり、止められないまま。
次回500
コメント
3件
🎤さんもこちら側の世界にようこそようこそですね 。 腐の良さを知って仕舞えば後戻りは出来ないんですよねこれが 。
(>ω<)b