毎日欠かさず牛乳を飲む少年がいる。
同じクラスの”長尾謙杜”くん
彼はモテる。
・スポーツ万能
・イケメン
・優しい
・面白い
・オシャレ
学年では収まらず、校内、他校にまで人気な完璧男子だ。
芸能人並みの顔立ちはとてもじゃ無いけど直視できないし、笑った時の破壊力と来たらすごい。
けれどそんな彼にもコンプレックスがあるようだ。
それは”身長”。
彼の幼なじみの女の子はモデルで、170cm程の身長を持つ。
しかし彼は166cmときた
なんとも微妙なこと
長「あぁ”ぁ”〜身長あと1cm伸びへんかな〜」
毎日この調子である。
私とは別世界の人ってレベルのかっこよさだし、そんな1cmを気なしなくてもいいと思うのに。
女A「けんとくんはなんでそんなに身長伸ばしたいのー?」
女B「やっぱり楓ちゃんのため!?好きなの〜!?」
“楓ちゃん”とは、例の幼なじみの女の子。
そして今私の目の前にいる。
楓「ちょっとやめてよねー!?周りが勘違いするでしょ!!」
貴「お似合いだけどね」
楓「またそういう事言う…無いから!」
楓の方が多少身長は高いが、ぶっちゃけそんなの気にならないほどお似合い。
なのに楓は全く興味がない。
貴「長尾くんは好きなんじゃないの?」
楓「ッだから違う!!もう、考えるのやめて!!」
いつも頑なに否定するので、多分ほんとに無いのだと思う。
貴「長尾くん、牛乳毎日ってお腹壊しそう」
楓「身長伸ばしたいらしいからねー…やっぱさ、身長高い人がタイプ?」
貴「えっ私?」
楓「うん。私は気にしないなー」
貴「私は前から言ってるけど10cm以上高い人がいいな〜」
楓「…そっかー!今何センチだっけ?」
貴「うーんと、一昨日の検査で157だったよ」
楓「そっかー、男子は今日だよね?」
貴「だねー、長尾くん伸びてるといいね」
楓「ぁ…ぃcm…((ボソッ」
貴「、?なに?」
楓「いやいや、なんでもないよ!ほんと、謙杜伸びてるといいよねー!」
長「ッ…..」
楓「男子計測終わったらしいよ!」
貴「やっと?2時間もかかったんだー流石多いだけあるね。」
楓「…ねぇ、謙杜の事どう思う?」
この質問は最近されて居なかったから油断していた。
貴「かっこいいよね」
素直に、思っている事が口に出た。
楓「…えぇ!?かっか、かっこいい!?そう思う?!ほんと!?」
今まで何度もこの質問をされてきた。
いつも興味が無いと返していた。
嘘をついていた。
私なんかが好きになっていい相手じゃ無いから。
貴「…好きとかじゃなくて、みんな思ってるでしょ?かっこいいって」
楓「…あぁ、そう、、だね」
私は周りの取り巻きとは違う人で居たい。
長尾くんが何処と無く取り巻きを嫌っているのは知ってる。
私はあんなふうに思われたくない。
好きって言ったら迷惑かけちゃう。
楓「…あ、謙杜」
長「楓…ちょっといい?」
楓「えっ、なに?」
女A「なになに告白ー!?」
女B「とうとう来た!?楓と長尾の恋愛発展〜!?」
女C「ついに身長は諦めて恋まっしぐらー!?」
女D「きゃぁぁあ!お似合いすぎる〜!」
あぁ、お似合い
楓が、長尾くんに腕を引かれて扉から出ていく。
ドラマみたいなワンシーン。
綺麗で、切ない。
放課後___,
気分は落ち着いたけど、あの後どうなったのか聞けなかった。
楓はHRの後すぐまた席を離れた。
私は下駄箱で1人立ちすくんでいる。
貴「…先に帰っておこうかな」
2人で帰るよねきっと。
スマホで一言連絡を入れようと開いた瞬間、一通のメッセージが届いた。
楓《そのまま下駄箱に居てね💕》
貴「こわ…見えてる?」
もはや見られてるとしか思えないメッセージに鳥肌が止まらないけど、大人しく待った。
10分後〜
長「…ねぇ」
貴「ッ…びっくりした」
突然ヌルッと現れたのは、楓じゃなく長尾くんだった。
貴「あ…あの、なにか?楓は…」
長「俺ッ身長、167になってん!」
貴「え?」
突然の身長伸びました宣言。
なに…どういうこと?
貴「おめ…おめでとうございます」
長「…10cm以上の身長差が必要なんやろ?」
貴「え?」
長「ッやから、身長は10cm以上自分より上の人がタイプ…なんやろ!?」
貴「あ…」
思い出して、聞かれていたと分かって少し顔に熱がこもる。
貴「えっと、それで…?」
長「その…俺とはちょうど10cm差やん…?」
貴「…はい」
長「その…俺とか、彼氏に…どう…?」
夕方、廊下に差し込むわずかな光に照らされている彼の顔は、耳まで真っ赤だった。
《10cm》
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