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ナチスは冷徹な男だった。いや、正確には、人に感情を見せないだけだ。無機質な会議室で、日帝が笑う。
計算された微笑み。人を安心させるためだけに作られた、美しい仮面。
「今回の件は、俺が動く。その方が成功率は上がるからいいだろ?」
淡々と告げる日帝を、ナチは冷たい目で見下ろした。
「……お前がやる必要はない。消耗するだけだ」
それは忠告だった。
だが日帝は気づかないふりをして、軽く肩をすくめる。
「目的のためなら安い代償だ。俺はそのために存在してる」
その言葉が、ナチの胸を小さく刺した。
――どうして、そんな顔で言える。
日帝はいつも綺麗だった。
傷ついても、汚れても、目的のためなら躊躇なく自分を差し出す。
「……勝手にしろ」
ナチスは背を向けた。
本当は止めたかった。だが、それを口にする理由を、ナチスは持たない。
夜、作戦後の廊下で、ナチスは壁にもたれかかる日帝を見つけた。
血の匂い。抑えきれない痛みを、微笑みで誤魔化している。
「だから言っただろ」
ナチは苛立ちを隠すことなく言い放つ。
「……心配してるのか?」
日帝がからかうように尋ねる。
「するわけない」
即答だった。
けれど手は、日帝の腕を掴んでいた。
「ナチは優しいな」
「黙れ」
日帝を支えながら歩く廊下で、ナチは気づいてしまう。
自分が恐れているのは、任務の失敗じゃない。
――こいつが、壊れることだ。
目的のためにすべてを捧げる日帝と冷徹であることにしがみつくナチス。
二人の関係は、まだ名前を持たない。
ただ、確実に歪んだ形で、互いを求め始めていた。