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ゆゆゆゆ
#Paycheck
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アパート。
エリオットは制服に着替えている。
シャツ。
ネクタイ。
いつもの手つきで整える。
チャンスはソファに座っている。
コインを指で回しながら見ている。
カラン
ミアはその様子をじっと見ている。
「お兄ちゃん」
エリオット。
「ん?」
ミア。
「どこ行くの?」
エリオット。
「仕事」
ミア。
「ピザ屋?」
エリオット。
「そう」
ミアの目が少し輝く。
「行きたい」
エリオット。
「は?」
ミア。
「ピザ食べたい」
エリオットは少し困った顔。
「子どもだけで――」
ミア。
「一人じゃない」
エリオット。
「……」
ミア。
「お兄ちゃんいる」
チャンスが小さく笑う。
「連れてけばいいだろ」
エリオット。
「軽いな」
チャンス。
「どうせ見てる」
ミアはチャンスを見る。
「チャンスも来る?」
チャンス。
「行かねぇ」
ミア。
「なんで」
チャンス。
「客じゃねぇし」
エリオットはにこっと笑う。
ネクタイ。
ぐい
チャンスが少し前に引かれる。
「来るでしょ」
チャンス。
「……」
エリオット。
「常連」
チャンスはため息。
「……仕方ねぇな」
ミア。
「やった!」
⸻
ピザ屋。
昼前。
まだ少し静か。
エリオットはカウンターの中。
ミアは席に座っている。
足をぶらぶら。
チャンスはその向かい。
ミアが言う。
「お兄ちゃん」
エリオット。
「ん?」
ミア。
「ピザ作って」
エリオット。
「注文は?」
ミア。
「お兄ちゃんのやつ」
エリオットは少し笑う。
「任せて」
オーブンの前に立つ。
手際よく生地を伸ばす。
その姿。
ミアはじっと見ている。
「すごい」
チャンス。
「慣れてるからな」
ミアは小さく頷く。
それからぽつり。
「ねぇ」
チャンス。
「なんだ」
ミア。
「私ね」
少し間。
「大人になったら」
エリオットの背中を見る。
「マフィアになる」
チャンス。
「……は?」
エリオットの手が一瞬止まる。
ミアは続ける。
「強くなって」
「お兄ちゃんたち守る」
店の中。
一瞬だけ静かになる。
エリオットはゆっくり振り返る。
「ミア」
ミアは真っ直ぐな目。
「だから」
にこっと笑う。
「お兄ちゃんはピザ作って」
エリオット。
「……」
チャンスも少し驚いた顔。
ミアは続ける。
「疲れるまで働くの好きなんでしょ?」
エリオットの目が少し揺れる。
ミア。
「じゃあそれやってて」
小さく胸を張る。
「危ないのは私がやる」
沈黙。
数秒。
エリオットはゆっくり歩いてくる。
ミアの前まで。
少ししゃがむ。
目線を合わせる。
そして。
ネクタイ。
ぐい
チャンスが後ろから軽く引かれる。
チャンス。
「……巻き込むな」
エリオットは少し笑う。
それからミアに言う。
「ミア」
「ん?」
「それ」
少し間。
「俺の役目」
ミア。
「でも」
エリオットは優しく頭を撫でる。
「守るのは俺」
ミア。
「……」
エリオット。
「ミアは」
にこっと笑う。
「ピザ食べて笑ってる方がいい」
ミアは少し黙る。
それから。
少しだけ悔しそうに。
でも。
嬉しそうに笑う。
「……じゃあ」
フォークを持つ。
「いっぱい作って」
エリオット。
「任せて」
チャンスはその様子を見ている。
静かに。
小さく呟く。
「似てるな」
エリオット。
ミア。
どっちも。
守る側に立とうとする。
強引で。
真っ直ぐで。
チャンスは少しだけ笑う。
「面倒な兄妹だ」
でも。
その目は優しかった。