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あの二人の事を知った次の日、陽煌さんが家に来る。
部屋に入ると、ベッドの端に陽煌さんが座る。
陽煌さんは上の服を脱ぐと、俺の方を見た。
「ほら、飲みな」
「はい」
陽煌さんの横に座り、首元に牙を入れる。
そして、ゴクゴクと血を飲む。
いつもと同じ顔をしかめたくなるほど苦い血。
しばらく飲んだ後、顔を上げる。
「ありがとうございました」
「ううん。いいよ」
陽煌さんはそう言って微笑む。
「あの、陽煌さん」
「何?」
「陽雅さんの事なんですけど…」
「うん」
「実は恭也くんと付き合う事になったみたいで」
「えっ?」
陽煌さんは低い声でそう言う。
「ちょっと詳しく聞かせてくれる?」
陽煌さんはそう言ってニコッと笑った。
「はい。って言っても、そんな詳しくは知らないんですけど、昨日の朝恭也くんがいて。夏祭り、一緒に行ったみたいです」
「そう。陽雅は行かないと思ってたんだけどな」
陽煌さんは不満そうな顔でそう言う。
「途中までは家にいましたよ。俺が風呂入りに下に降りた時、ソファーに座ってたんで」
「そっか。じゃあ誰が陽雅を説得したんだろう。また零斗くんかな」
「いや、零斗さんは恋人いるんで、その人と行ってましたよ。確か恭也くんの友達で、快って子だった気がします」
「快くんねぇ…」
陽煌さんは考える素振りを見せる。
「…まぁ、恭也くんとは別れさせればいっか」
冷めた目でそう言う陽煌さんを見て、俺は俯く。
俺は正直、陽煌さんのすることには納得できない。
陽煌さんが俺と付き合ってるのだって、全部陽雅さんの動きを監視するためだからで、俺が好きな訳じゃない。
別に本人に聞いた訳じゃない。でも、一緒にいるから分かる。俺に愛が無いことくらい。
でも俺は、陽煌さんのやる事には口を出さない。
俺は陽煌さんの事が好きだから。
「でも、陽雅に何しても無駄なんだよね。ターゲット変えてみようかな」
「ターゲット?」
「うん。恭也くんにちょっかいかければ陽雅の嫉妬心にも火が付くでしょ? 優真くんの時もそうだったからね」
陽煌さんはそう言ってニコッと笑う。
陽煌さんの思う通りになれば、きっと恭也くんは優真くんと同じ運命を辿る事になる。
止めなきゃいけないと頭では分かっているけど、陽煌さんが離れるのが怖くて、言えないんだ。
「泰輝も協力してくれる?」
「はい。もちろんです」
俺の返事を聞いて、陽煌さんは嬉しそうに笑う。
「ホントに泰輝はいい子だね。大好き」
俺の唇に陽煌さんの唇が触れる。
嘘だと分かっていても、嬉しくなってしまう。
「…俺も大好きです」
俺はそう言ってニコッと笑った。
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最後の講義が終わると、立ち上がった快に言う。
「快、行くよ」
そう言って歩き出すと、快が着いてくる。
「何。どこ行くの?」
「行けばわかるよ」
校門までの道を快と一緒に歩く。
校門を出ると、陽雅さんを見かける。
「陽雅さん!」
そしてその横には零斗さん。
そんな零斗さんを見て快が呟く。
「零斗さん?」
二人は俺たちに気付くと、それぞれ手を振った。
「恭也、お疲れ様」
「ありがとうございます」
「零斗さん、なんで居るんですか?」
「あおから聞いてねぇのか」
零斗さんの問いに俺は答える。
「言ってません。どうせならサプライズしちゃおうかなって思って」
「なんだよ。だったらどっか隠れてればよかった」
「甘いですね零斗さん。隠れてもオーラは見えるんでバレますよ」
「チートじゃねぇか」
零斗さんが不満そうにそう言うと、快が勝ち誇った顔をする。
「まぁ、フィールズにかかればそんなの余裕ですね」
「じゃあ、サプライズ成功って事でそろそろ行こっか。帰るつもりだったけどせっかくだしどこか行く?」
「いいですね。ご飯食べに行きましょうよ」
「いいね。でも何食べに行きます?」
「俺は何でもいいけど甘いもんがある所な」
「あぁ、そういえば甘党なんでしたっけ」
「そうそう。まぁ、快の熱が一番甘くて美味いけどな」
零斗さんの言葉を聞いて、快は満更でもなさそうに言う。
「ちょっともうやめてくださいよ〜」
「あ? なんでだよホントの事だろ」
「なんか照れちゃいます〜」
快は両頬に手を当ててそう言う。
「あー、陽雅さん。もう行きましょう。この人たちイチャイチャしだしたんで」
「そうだね。とりあえず飲食店がある方に行こっか」
陽雅さんが歩き出し、俺も隣を歩く。
「あっ、ちょっと! 置いてかないでよ〜」
「そうだよ。一声かけろよな」
「二人がイチャイチャしてるからでしょ〜」
陽雅さんの言葉を聞いて快は嬉しそうに言う。
「そんな褒めないでくださいよ〜」
「褒めてないでしょ」
冷めた目でそう言うと、快は甘えた声で言う。
「え〜ん。零斗さん。恭也に意地悪されました〜」
「あ? 大丈夫か? ほら、手繋いでやるからそんな顔すんな」
「あー。なんかもう、恭也の事なんてどうでも良くなりました」
「そりゃあ良かったぜ」
二人の会話を聞いていると、俺の手に陽雅さんの手が触れる。
「俺達も」
そう言う陽雅さんの手を俺は握り返した。
「はい」
そして俺達は相談してファミレスに入った。
席に着くと、隣に座る陽雅さんとメニュー表を見る。
「どれにしようかな」
「いっぱいあるから迷うね」
「そうですねぇ…」
俺達が迷っていると、斜め前に座る零斗さんが言う。
「俺はこれだな」
「えっ。もうデザートですか?」
向かいに座る快がそう問う。
「もうってか、ずっと?」
「デザートしか頼まないんですか?」
「おう。甘いもんにしか目が無いからな」
「じゃあスイパラとか行ったらどうですか? ここファミレスなんですけど」
「スイパラ?」
零斗さんは不思議そうに快を見る。
「スイーツパラダイスです。ケーキとか食べ放題なんですよ」
「なんだそれ最高じゃねぇか。今すぐ行くぞ」
「零斗さん、予約しないとめっちゃ待たされますよ。今度二人で行きましょう?」
「そうだな。それがいいわ」
そんな二人の会話を聞いて、俺は快に言う。
「うわ。快、俺たちがいるのに零斗さんにデート誘ってんの?」
「そうだよ。別にいいでしょ。恭也も陽雅さんデートに誘ったら?」
「えっ」
ふと陽雅さんを見ると、期待に満ちた顔で俺を見ていた。
「えっと…今度二人でどっか行きませんか?」
「もちろんいいよ。どこ行きたいかまた考えといて」
陽雅さんはそう言って嬉しそうに笑った。
ファミレスを出て、歩き出す。
「お腹いっぱい…」
「俺も調子乗って沢山食べちゃった」
「俺は快の熱の分残してるぜ」
「おぉ。さすがですね。デザートばっかり食べてましたけど」
「俺にとっては快の熱がデザートだからな。今食ったのは主食」
「俺が食べたハンバーグ、めっちゃ美味かったのに」
快が残念そうにそう言うと、零斗さんが慌てて言う。
「今度はちゃんとご飯も食うから。ほらっ、手」
「しょうがないですね」
「また手繋いでる。じゃあ俺達も」
「はい」
そして俺たちは駅まで手を繋いで歩いた。
四人で電車に乗って朝凪駅で俺だけ降りる。
陽雅さんが家まで送ると言ってくれたけど、さすがに悪いので断り、快達と一緒に帰ってもらった。
それから数日後。
大学の講義を終えた俺は、いつものように陽雅さんの家へ向かった。
夜ご飯を一緒に食べ、ゆっくりと二人だけの時間を過ごした後、陽雅さんの部屋で一つになった。
眠ってしまった陽雅さんを置いて、俺は部屋を出る。
シャワーを浴びてリビングに戻ると、ソファーに泰輝さんと陽煌さんが座っていた。
陽煌さんは俺に気が付くと、立ち上がってこっちへ来る。
「恭也くん。こんばんは」
「こんばんは」
「実は恭也くんにお話があってさ」
「はい。なんですか?」
「ちょっと二人で話したいから、泰輝の部屋借りよっか。泰輝、いい?」
陽煌さんの言葉に泰輝さんは頷く。
陽煌さんは泰輝さんを見たあと、俺の方に目を向ける。
「じゃあ行こっか」
そう言って歩き出す陽煌さんに俺は着いて行った。
コメント
1件
あー、もうこの回はいろいろ感情がぐちゃぐちゃになったわ…。 陽煌さんの「恭也くんとは別れさせればいっか」の冷めた目、マジで怖かった。そして泰輝さん、自分が利用されてるって分かってるのに「大好きです」って笑顔で返すの、切なすぎるでしょ…。 一方で恭也&陽雅さんの甘い時間は眩しかったな。ファミレスで手繋ぐシーン、零斗さんと快のイチャイチャも相変わらず微笑ましいし。でも最後の「二人で話したい」で終わるの、続きが気になって仕方ないわ。ターゲットが恭也くんになったってことは、またあのパターンが繰り返されるのか…? 泰輝さんの葛藤も含めて、次回が怖いけど楽しみ。