TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する


鈴子はソファーの端に腰を下ろしたまま、指先を膝の上で絡めていた、爪が皮膚を抉るほど強く握りしめても痛みすら遠のいている



眠ろうとしても一睡もできない、クッションに顔を埋めれば浩二の匂いが残っていて・・・それが胸を抉る




―浩二・・・どこにいるの?まだ傷口が疼いているはずよ・・・歩けば血の気が引く顔を、何度も見ていたもの―



立ち上がって三宮の夜を彷徨いたい衝動にかられる、でも、もし彼が戻ってきて



—鈴子、もう一度話したい―



と彼が言ったら?そう思うとここから一歩も動けない・・・玄関のドアを叩いた時に、自分がいなかったら?その想像だけで喉の奥が熱くなった



すると次の瞬間インターフォンが鳴った、鈴子の体が跳ねた




「浩二!」




名前を叫びながら廊下を駆け、鍵をガチャリと回す、勢いよく開けたドアの向こうに立っていたのは大谷警部だった、コートの襟が夜露で濡れ、目の下のクマは鉛のように重そうだった、彼の疲労が全身から滲み出している




「今晩は、伊藤さん」





低く、掠れた声・・・鈴子の胸にたちまち憎悪が湧いた




「・・・警部さん」



怒りで鈴子の声が震える




「私が浩二を傷つけるために襲撃犯を雇った張本人だと言うんですか? それで私を逮捕しに?」



大谷は大きく息を吐いた



「そう言ったのは、あの場にいた吉田良平さんですよ、最も、彼の推察を姫野さんは信じていましたがね・・・」



警部は帽子を取り額の汗を手の甲で拭った




「中に入れてくれませんか?私は吉田さんとは少し違う意見を持っています、そしてきっと私の推理の方が当たっているでしょう・・・なにせ——」



彼の瞳が怪しく光る




「私は犯罪のプロなんでね」



鈴子は無言で左端に寄って彼を通した、リビングの明かりは薄暗く、泣きはらした目が痛い、頭痛がこめかみを抉る




「私は本当に何も知らないわ、知っているのは浩二の襲撃事件に自分は関係ないことだけ・・・」



大谷は何も答えなかった、ソファの反対側に腰を下ろし、鈴子をじっと見つめる、瞳は濁瓶の底のように深い、無数の事件を覗き込んできた眼だ、やがてゆっくりと口を開いた



「伊藤さんがこの事件にまったく関係ないとは言い切れません」



声は静かだが、刃のように鋭い、やっぱり自分を疑っているんだと鈴子は思った



「襲撃犯の報酬は『伊藤ホールディングス』から出ているのはご存知ですよね?」



鈴子の喉が鳴った


「それは・・・私もどうしてか身に覚えがありません、今、調べさせてるところです」



大谷は首を振った



「簡単ですよ、あなた以外に伊藤ホールディングスの金を動かせる人物を想像したらいい」




それを聞いて 鈴子の心臓が、一瞬、止まった




―まさか・・・―





「思い当たる人物がいますよね?」




大谷の声が、闇を裂くハッと鈴子が目を見開く



「まさか・・・増田が?」




彼なら出来る・・・というか彼しかいない・・・鈴子の表情に大谷は小さく頷いた




「だとしたら、姫野さんが危ないですよ」



この作品はいかがでしたか?

4

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚