「そばが食べたいです。」
夏のある日最高気温が37℃近くある中、彼はその言葉を口にした。
ざる蕎麦、冷たい蕎麦色んな種類を思い浮かべて私はすかさずならそばにしようと伝えた。その観光地でそばといえば1つしかないと私は解釈している。お店を伝えるとすんなり彼は「いいですよ」と言ってくれた。
カウンターの席。彼はチューハイとそば。私はビールとそば。高校野球の話や他愛でもない話をしながら食べるそばは美味しかった。
食べたあとは少し散歩をして神社でおみくじをひいた。私のおみくじの結果は凶。彼のおみくじは吉。人生で初めての凶は好きな人の横で引いた。
帰り道。海を眺めながらこんな話をした。
「私の好きな人分かった?」
「すみません。知っていました。」
その言葉に私は驚きもしなかった。
きっと分かっているだろう。気づいているだろうと思っていたからだ。しかしその後は何事もなく話した。家に帰り諦めるからと連絡をすると、すみません。お願いします。と連絡あった。
この恋はきっとこれから先忘れないだろう。
きっと夏が来なくても忘れることは無い。
むさ苦しい夏のある日。
むさ苦しい鉄板のカウンターの前。
冷たいビールとチューハイ。
そしてお好み焼き。
私は彼と冷たいそばを食べることは無いだろう。
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