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続きが楽しみ
「お前が一般人を殺害したとの通報があった」
「、、、は?」
息を呑む、そんな筈ないだろう、私が罪なき一般人を殺害するだなんて。だのに、どうして皆そんな目で見るの、やめてよ、違う、違うから。
青年はひゅうと小さく音を立てて息を吸い、焦った声色で問う、いつもとは違う、恐る様な笑みを貼り付けて。
「なんで私だと分かるんだい?何か証拠でも__」
「目撃情報があるんだ、癖のある茶髪で砂色の外套、180以上の背丈、胸元に青のアクセサリー、手首と首には包帯が伺えたと」
言葉を遮り、早口で告げられる。茶髪の青年の顔から色が抜け、元より白かった肌が更に青白くなる。そんな様子など気にもせず、長い金髪を後ろに結んだ男が咎める。
「お前しか、有り得ないだろう」
更に鋭くされた目つきに、青年は冷や汗が止まらない、微かに見開かれた瞳に映った絶望の色には、誰も気付かなかった。
「、、、正直に、話してください」
黙っていた白髪の少年が緊張感のある声で咎める。青年は口を開き、掠れた声で呟く。
「違う、、、私じゃない」
ギリ、と歯を噛み締める音が聞こえた、微かに青年の身体が震える。赤い着物の少女は言った。
「うそつき」
凛と響くあどけない音で紡がれる四字が耳に刺さった、思わず眉を顰める。
「貴方は元マフィアだから、今更人を殺す事に抵抗なんてしない」
違う、そう言いたかったが声が出なかった、蚊が飛ぶ様な微かな呼吸音が乱れ始める。彼女を見遣ると、キッと睨み返される、額には汗が滲んでいた。続けて口を開くと。
「だから、私に『たかが35人』なんて言えた」
少女を救う為にかけたいつかの言葉に、足を掬われた。手が、震えてきた。目頭が熱くなる。視界が滲む。
「違う、違う!本当に違うんだ!私はやってない」
そう叫んでも目線は鋭くなるばかりだった、眼球になんとか押し込んで堪えていた涙が、耐えきれずボロボロと波のように押し寄せる。チッ、舌を打つ音が聞こえた。
「泣いて許される事じゃない!人が死んだのだぞ!他でも無いお前のせいで!!」
怒声が帰ってきた、いつも違う、心から怨むような、拒絶するような。敵意を剥き出した声で、耳を塞ぎたくなる言葉が相棒だった筈の彼の口から吐いて出た。灰色の瞳には、いつか見た青い、蒼い炎が燃え滾っていた。魔女を狩る 炎の如く、酷く勇ましく。
「ボクらにも、嘘吐くンですか」
頬に汗を滲ませた橙色の髪の後輩が、睨みを効かせ言った。
お前に何が判る、咄嗟に吐き出しそうな言葉を、呑み込んだ。心中で悪態をつく、大して関わった事の無いお前に何が判るんだ。
「仲間だと思ってたのに」
僕だって、思っていた。
「どうして私達を裏切ったの」
突き放したのは
「そんな人だとは、思っていませんでした」
捨てたのは君達だろ。
震えていた手を握りしめ、ふっと力を抜く。悲しかった、ただ悲しかった。
信じていたのに
呟いた声は見つけて貰えなかった。
「太宰、お前の様な穢れ者は探偵社に要らぬ」
ふと彼が告げた、相棒、否___
「此処から出て行け、太宰治」
元相棒が。