空回り –side:Luffy–
「お前の好きと俺の好きは違う」
あの一言が、ずっと頭から離れねぇ。
なぁトラ男、そんなに難しいことなのか?
“好き”って、おれにとってはすげェ簡単なことなんだけどな。お前がいて嬉しい、お前が笑ってると安心する、そんだけでいいんだって思ってた。
でも、どうやら違うらしい。
⸻
「ねぇルフィ。悩みがあるなら、話してみたら?」
ロビンの声に、ばっくり返りながらおれは黙り込んだ。
悩みってほどでもねェけど、なんかずっともやもやしてる。
「トラ男がさ…変なんだ」
「ふふ、彼はいつも変よ?」
「そうじゃなくてさ、逃げるっていうか…目を合わせなくなったっていうか」
「……ルフィ、それってあなたの方が何か変わったんじゃない?」
「え?」
「ルフィが“いつもと違う”としたら、それはきっと“気持ち”のせいよ」
気持ち?
ロビンは柔らかく笑った。
「誰かのことを“特別”に思うのって、意外と自分では気づかないものよ。でも、気づいた時にはもう止められない。あなたの“好き”がどんなものか、ちゃんと見つけてみたら?」
——“特別”か。
⸻
その夜、おれは空を見上げて考えてた。
トラ男のこと考えると、胸が熱くなる。声が聞こえると笑っちまう。
気づいたら探してるし、いないと落ち着かない。
そっか。
「……おれ、トラ男のことが、好きなんだ」
口に出したらスッとした。でもすぐに走りたくなった。
止まってなんていられねェ。思ったらすぐ行動。それがおれだ!
⸻
「おいトラ男!!」
甲板で風に吹かれてる背中が見えた。逃がすかって気持ちで飛びついたら、案の定、
「話せ、麦わら屋……!」
「やだ!」
腕に力を込めて離さない。
なんでお前が逃げんだよ。
おれは今、ちゃんと気づいたんだ。
「おれ、お前のこと好きだ!!」
言ってやった。ドンッて感じで。
「トラ男がそういう目でおれを見てなくても、関係ねェ。おれはもうそうなっちまったんだ!」
黙り込むトラ男の顔は、ちょっと怖かった。でもそれ以上に、嬉しそうにも見えた。
「……お前の“好き”と俺の“好き”は違う」
またそれ…..
でも今回は引かねェ、だって気づいちまったからだ。
「違っててもいい!おれはお前が好きなんだ、トラ男!」
なんか、顔が熱いしモヤモヤする。でも、言わなきゃ絶対もっとモヤモヤする。
「敵とか味方とか、そんなのどうでもいいんだ!おれはお前が欲しいって思った、それだけだ!」
「……バカかお前は」
「知ってる!」
おれの叫びは空に響いて、トラ男の肩が少しだけ震えた。
⸻
そのあと、トラ男は黙っておれの頭をぐしゃっと撫でてきた。
びっくりしたけど、嬉しかった。
それだけで充分だった。今はまだ、答えなんていらねェ。
おれは好きになっちまったんだ。
それだけは、誰にも負けないくらい本気だ。
「シッシッシッ!覚悟しろよ!トラ男ぉー!!」
—
To be continued…
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