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私と賢一の向かいには新二が器用にパスタをフォークでクルクルと巻いている。
「それで、お前が雪に何の用だ?」
「別に、雪さんと話をしたかったけど連絡先を知らないしCrowにもいつ来るか分からないから会社を見にくるついでに雪さんに会えないかと思って」
「雪は常務付きの秘書なんだ、たまたま今日は予定が入っていなかったが基本は当日に来てランチを誘うなんて事は出来ない、学生のお前とは立場が違うんだ」
「でも、予定が無かったんだし結果オーライだろ?」
「お前のその短絡的な考え方が問題を引き起こすし、大ごとにもなるんだろ」
二人の関係性が分からないから口を挟むのは憚れる。
ただ、賢一がすごくお兄さんなんだと思った。
弟である新二さんは奔放というかすこし常識が欠けているというか、学生だから仕方がないと思うには賢一との差が大きいような気がする。
それとも、賢一は会社に入って社会に揉まれて今の賢一が形作られたのだろうか。
いやきっと、賢一は子供の頃から“お兄さん”だったんだろう。
私は花にとってきちんと“お姉さん”になれているだろうか。
なんにせよ、会話に入れないからひたすらパスタを口に運ぶ。
ベーコンとアスパラのクリームソースのパスタは見た目も綺麗で味はもちろん頬が落ちそうなほど美味い。
「雪ごめん、もうこいつのことはいいから食べたら出よう」
「大丈夫よ、なんだかんだ言って兄弟仲がいいんだなって思って」
「そういう訳でもないよ、家族だからね」
「賢一も早く食べなよ、パスタ美味しいよ」
「そうだな」というと賢一は自分が頼んだボンゴレをクルッと一巻きすると口に運んだ。
その所作がスマートでつい口元に目線がいくと
「何?食べたい?」と言って少なめにフォークに巻きつけると私の口元に持ってくる。
反射的についそのパスタにパクりと食いついてしまった。
その時
カシャ