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昭和84年9月2日21時13分 ――配信開始後、約1時間経過――
「えっ、知らなかったんですか!?」
「このいわくつきゲームを? 知らずに選んだ?ww」
「実況中に死んだって噂、聞いてません?」
「いやしょうがない、オカルト界隈でしか知られてないし」
「私も知りませんでした。そんなゲームなんですか?」
視聴者から怒涛の勢いで寄せられるコメントの数々。
……発売前にディレクターが自殺
……ゲーム実況者が配信中に不自然な途中離脱
……死体で発見
……浴室で感電死……。
次々と寄せられる情報の洪水に当てられて俺の顔中に嫌な汗が溢れ出る。
鼓動がドクドクと脈打ち、ゲームパッドを持つ腕が震え始める。
――『配信すると死ぬゲーム』??
そんな馬鹿な話があるか? 呪い? 都市伝説?
いやいや、待ってくれ。
仮に百歩譲って『配信すると死ぬゲーム』が事実だとしよう。
でもそれなら、なんで……
――なんでコイツは既に死んでるんだ!?
そう、俺の足下には「庵藤圭司だったモノ」が横たわっている。
俺は何度も深呼吸をして必死に自分を落ち着かせようとした。
コメントでは「ビビりすぎw」などと煽られていたが、いや、本当にビビっているのだからしょうがない。
こっちは殺人事件一つでもうイッパイイッパイなんだよ、妙な都市伝説が相乗りしてくんなよ……。
いや……だが。
冷静に考えろ、若色涼太。
あまりの展開にビビったが、それでもこれは単なる偶然に過ぎない。
人死にの出た不吉なゲームの実況をたまたますることになったのと、たまたま俺が殺人を犯したのが重なっただけだ。
よし、オーケー、何の問題もない。
ないぞ。
改めてコメント欄を確認すると、『配信すると死ぬゲーム』の都市伝説に驚いている人たちが一定数見受けられた。
知らなかったのは俺だけではないようだ。
カンペにも何も書かれてなかったし庵藤のヤツも知らなかったのではないか?
怒涛のコメントを寄せてきていたのは、主にオカルト界隈の視聴者たちで、今回、このゲームを取り扱ったことで初めて俺のチャンネルを見に来たという人もいた。
さっきコメントしていた「NIRA†NEGI」なる人物もその一人のようで、事情通なのか、かなり事細かにこのゲームにまつわる都市伝説を書き込んでくれた。
その「NIRA†NEGI」だが、俺が心底ビビっていたことを察したようで、こんなことも言っていた。
「大丈夫ですよ、このゲームの実況も若色さんが初めてじゃないし。みんな今もピンピンしてますから」
ありがとう、ニラネギ!
足下で友達死んでるけど、俺、気を取り直してゲームを進めるよ!
速やかにゲームをクリアして早く死体を隠蔽したい!
「えっと、じゃあ、改めて再開します。オープニングムービー、本当にうぜえな……」
相変わらずスキップ不可なオープニングムービーを見つめながら、俺はゲーム攻略に意識を集中した。
さっきの女性キャラが突然死したのは全く意味不明だったが、(このゲームが本当に救いどころのないクソゲーでなければ)あの展開にもきっと何か理由があるはずだ。
普通に考えれば、あのカギがゲームを進めるための文字通りのキーアイテムなはずで、しかし、それを受け取った瞬間になぜか女性が死んだのだから……
そこにはきっと何かしらの因果がある。
俺がそう呟くと、即座にいくつもの推理コメントが寄せられてきた。
「開かずのテナントに潜む何かが妨害してきて殺された?」
「あのカギにお守りみたいな力があって、手放したから呪われたんじゃない」
「実はカギは全然関係なくて、主人公がオフィスの外から何かを連れて来てしまったのでは?」
等々……。
なるほど、みんなすごいな。
唐突な展開に面食らって先程はクソゲーだと断定してしまったが、こうして真面目に考えてみればホラーらしい因果関係が見えてこなくもない。
特に気になったのがハンドルネーム「ヘルアネゴ」による次の意見だ。
「OLが他テナントのカギ持ってるの不自然すぎるでしょ。この人、どこでカギを手に入れたの?」
なるほど、この視点は重要かもな……。
クソゲーだから不自然なこともあるだろう、くらいに思っていたが、確かに不自然すぎる。
そもそも主人公に対して、
「お願い、”開かずのテナント”の様子を見てきて」
なんて突然言い出すのも訳が分からない。
どうしてそんな事を言いだした?
俺がそれを考えていると、コメント欄で、
「あれ? ……赤ちゃんの声が聞こえませんか」
ニラネギが怖いことを言い出した。
オープニングムービーの後、俺がオフィス内を歩き回っていた時のことだ。
「マジ?」
「聞こえない」
「今一瞬聞こえたかも?」
「あ、聞こえる! 聞こえる!」
「さっきのとこ! あの場所でだけ聞こえる!」
他の視聴者たちからも次々とコメントが寄せられてきた。
俺も音量を上げて聞き耳を立てると……
――ォギャ……ォギャ……。
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