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今の会社に入って五年目だけど大学卒業して新卒で入ったデザイン会社でブラックすぎて社畜になり心身ともにボロボロであった。
私は子供のころからいじられやすいから同じく社畜たちのいじめ相手になっていたと思う。私はニコニコしてて言い返さないし言い返せないのを分かってるから酷いサンドバッグ状態。
終電ギリギリ、食事や飲み物を飲むタイミングどころかトイレ行くタイミングも……今みたいに急に生理が来てもトイレに行けなくてしょっちゅう服を汚してたっけ。
なんだかんだで同期も次々と辞めて行って一年で半分に減って。それに合わせて私も逃げるようにやめた。本当に今でもなんであの会社に入ろうとしたんだろう。
自分の希望していた大手の会社の就職に失敗したから……どんどん届く内定報告を聞いて焦って焦って名前は聞いたことがあるデザイン会社にあまり下調べもせずに受けて今までの不採用が嘘かのようにすんなり採用まで行って内定会でも好待遇……でも入社後から地獄だった。
もし今、この入社式の前日に戻っていたら最悪だ。いやもう地獄と分かっていたから絶対入社式にはいかず内定取り消しして逃げたと思う。でも他に行く当てなんてなかっただろうし。
……って人生なんて簡単にやり直しなんてきかないんだから。
それにあそこを命からがら辞めたおかげで今のこの会社にいるといってもおかしくない。取引先として出入りしていたあの人ににここを紹介してもらったんだっけ。
あの人、安田。
あぁ、嫌だ嫌だ。このタイミングでまた思い出すだなんて。謙太と結婚したから忘れたつもりだったけどこの仕事の初めのころのこととセットで結びついているから無理よね。
彼とは入社して半年で出会って少ししたら連絡先貰って。背もすらっとして狐顔、十歳上で頼れるお兄さんだった。お兄さんと言ってもあの頃にはもう35近くだったけども。
一度飲みに行こうという誘い文句を何回かかわしていたけどもう私はボロボロで何かに救いを求めていたんだと思う。
安田と初めて飲みに行って話を聞いてもらってその夜に彼とセックスして……男女の関係になった。お酒の力もあったけどなんで飲みに行っちゃったんだろ、と後悔するくらい仕事以外の態度めっちゃよくなくて。
でもこの会社にいたから謙太と出会えた。だから思い出したくない。あんな男の事。
「あなたはやり直したい過去はありますか?」
あのキャッチコピーを聞いて安田と飲みに行く前だったり新卒の会社に入る前……いやいやもっとそれよりも前からやり直したい。
きりがない。
「顔色悪いけど大丈夫ですか」
大城さんが心配してくれた。こう一緒に働く人から心配されることってないのよね。気が利くなぁ。
この会社に来てからすぐ今のように働けるようになったのも時間がかかったよね。
転職、中途採用の私。しかも新卒一年で病んで退職だなんて心象悪いし。同い年の新卒社員はもうコミュニティも出来上がっていたし上司も最悪、大魔神の山田課長になってからましになったかな。そこで謙太の会社と交流があって
謙太とかかわるようになってからかな。彼と出会ってから過去に戻ってやり直したいだなんてなくなった。反対に過去に戻りたくない。謙太と出会ってから私の人生は変わったんだ。
「ありがとう」
「これからは私達も白沢さんをサポートします」
「ありがとう、とても頼りになる」
そういうと大城さんはイヤぁ、それほどでもーと照れた。こんな彼女の一面初めて見た。他のメンバーとも目が合った。私はもっと周りに頼ればいいんだ。今まではがむしゃらだった。
メールの着信。画面に表示された名前を見てぎょっとした。
謙太のお姉さんの美濃里さんだったのだ。謙太があまり姉からのメールを返さないらしくって。なんで私に来るんだろうとか思いつつも。
「今日家に行っていい?」
今日の今日? 悪い人じゃないんだけどさ……ちょっと押しが強くって。私は苦手。話始めると彼女の妊活ストーリー聞かされるし、同じ話はしてこないけど最近はママ友の愚痴が多い。
そして何かと早いうちに病院で診てもらって早いうちに妊娠できるようにしなさいって。
だからこういうお誘いも少し間を置いてから色々理由付けて断っていたんだよね。
でも今夜って……謙太家にいないんだよなぁ。接待。
そうだ。美濃里さん、誘ってみるっていうのもいいのか? もっと妊活の話するべきなのか。ヒントが見つかるかも。大城さんをこうして仲間に入った時の事のように何かあるかもしれない。
「白沢さん、ちょっとすいません。これ脱字が」
大城さんが渡してきた資料を確認すると確かに! 明日の講習会で使うやつなのに! てかこれ担当したのは。
「すまん。俺がやっちまった」
山田課長! しかも配布分全部。
やっぱ今日は無理。美濃里さんには仕事が遅くなります! とメールを送って私は 訂正作業に取り掛かった。