コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
目に見える形でここでこいつらを全滅させる――それは簡単なことだ。だが、魔法防御だけが強いという認識を改めさせる為にも生き残らせて本隊に伝えてもらう。
近接戦闘が得意な傭兵ばかり集めても何の脅威にもならないってことを知らしめておくために。
「デバフ効果がついた武器ってのは興味があるが、こっちもおたくらと似たスキルがある。バフの持続効果《パッシブスキル》ってやつだが、これを上書きしてもいいか?」
装備している防具の恩恵を受けているに過ぎないとはいえ、スキルの重ねがけは不可能じゃない。この際はっきりと力の差を見せつけてやった方が連中のためにもなるはずだ。
「パッシブスキルだぁ? 卑怯野郎だったわけか。……ってことは、それがかかってる限りオレらが何をしようが無駄じゃねえかよ!!」
「ガキがふざけたこと抜かしてやがる!! スキルなんぞを重ねたところで強さの質が上がるわけねーだろーが!」
「ハッタリ野郎が!! オレらが見てぇのは、てめぇのふざけたバリアだ! 今すぐそれを解除しやがれ!!」
バリアなんてものは無いのだが、目に見えない物理無効を説明するのは難しい。
「仕方ない……、体の力を目一杯まで抜くから、試しにその剣を目の前で振り下ろしてくれないか?」
まずは全身から力を抜き、防御力を下げるように見せつける。そうすれば、おれの言葉通り片手剣を手にしている男たちが試し斬りをしてくれるはず。
物理無効そのものは消えないが、風圧で当たったような感触を作り出す。攻撃が通じるということが分かれば、恐れずに思いきり踏み込んで来るだろう。
その時を待って、奴等の武器を魔剣に喰わせる。奴らの剣がおれの体に突き刺さるように見せる為にも、誤魔化しの霧を出しておく。
「お、おい、どうするよ?」
「見りゃあ分かんだろうが! こんな気の抜けた構えをしたってことは、観念したってことだ! これなら、ガキに対してデバフがかかりまくるだろうぜ!!」
「やってやるぞ、くそが!」
――などなど、短刀持ちの男以外がまとめてかかって来るらしい。一斉に襲い掛かって来る前に左右の手で握り拳を作り、腰の辺りで適当な構えのポーズを作り出す。
「けっ、抵抗のポーズをしたって、今さら遅え!!」
七人のうちの一人が突出しておれの正面に立った。剣を頭上から垂直に振り下ろして来るようだ。残りの男たちは、左右に散らばって側面から斬り込みを図るつもりがあるらしい。
「う、うおおおおおおお!!! くたばりやがれーーー!!」
右と左の側面の攻撃に合わせるように正面の男が剣を振り下ろして来る。その直後、奴等の剣はものの見事におれの全身に突き刺さった。
痛くもかゆくもないが、悲鳴だけでも出しておこう。
「ぐ、ぐうぅぅ……!!」
間近の奴らは手ごたえを感じたのか、ニヤリとしながら突き刺しの剣をさらに深く押し込んでくる。短刀持ちリーダーの男からは全員の攻撃が全て命中したように見えているはずだ。
「へへ、へへへへへっ……! や、やった! ざまぁねえな!!」
「ズブズブと突き刺さりやがったぜ!」
「こ、こんなもんかよ」
どうやら満足してもらえたようだ。そう見えているだけで、実際は風で作り出した真空の壁で受け止めているだけに過ぎない。それに、わざわざ近接攻撃を当てさせたのも理由がある。
魔剣ルストは敵の武器を吸収するわけだが、ルストはフィーサとの争いでずっと大人しいままになっていた。それもあったので、敵の剣を間近で感じさせ強引にでも目覚めさせる必要があった。
その甲斐あってルストは奴らの剣をことごとく喰い出した。腰にぶら下げたままだと見境なく喰いそうなので、地面に放って矛先を向けさせることに。
「――ひぃぃぃ!? ば、化け物だぁぁぁぁぁ!!」
「剣が、オレの剣があぁぁぁぁぁぁ……」
「バ、バカな……突き刺したはずなのに、き、効いてねえってのか!?」
腰を抜かしたまま、連中は後ずさりを始めた。その視線は魔剣に向いていて、もはやおれではなくなっているようだ。