傍らに寄り添う彼女の髪を思わず撫でて、「……ぅん…」と小さく声が上がり、何をしているんだと手を引っ込めた。
自ら女性に手を出したいと思ったことなどもなく、不意の衝動にグッと握り締めた拳を呆然と眺めた。
運転手が到着を知らせて、タクシーを降り、
そこで初めて、今まで自分の部屋には誰も入れたことはないという事実に気づいた。
この部屋には、誰かを入れるつもりなどなかったはずだと……鍵を開けながら思う。
どうして彼女をここまで連れて来たのか自分自身でも納得し切れないまま、その身体をそっとベッドに横たわらせた。
いつまでも起きる気配のない彼女に、ベッドに上がりその顔を見下ろした。
食事の際には、あんなに嫌そうにしていたのに、眠っている顔はやはりどこか愛らしくも感じられて、
タクシーの中でのように、ふとまたその頬に触れてみた。
すると、彼女がふいに目を開けて、「…えっ…あっ、何!?」と、驚いたような声を発した。
動揺をしているのが見て取れて、
「……君が酔いつぶれてしまわれたんですよ。なので、私の部屋まで連れてきました。
あなたの自宅はわからないので、他に休ませる場所もありませんからね……」
もっともらしい言い訳をした。
「……だけど、どうしてベッドの上なんですか?」
問われて、「普通、眠っている方は、ベッドに寝かせるものなのでは?」いかにもそれらしく聞こえるセリフを重ねる。
「……見えないのですが、心配しているようには」
キッと睨み据えるような視線を向けられて、
「……だったら、どんな風に思われるのです?」
そう聞き返して、
「……私が、あなたを、襲おうとしてるとでも……?」
こう言えばどういう反応に出るのだろうかと、耳元に囁きかけた。
「……やっ!」
またしてもはっきりとした拒絶が返って、ベッドから起き上がろうとする。
その身体を上から強く押さえ付けて、
「……そんなに簡単に、私の元から帰れるとでも思っているのですか?」
そう告げた……かつてない反応を見せる彼女を、すぐには帰す気もなかった。
「……私にこうされたいと思う女性の方が多いのに、君はそうではないなど……私の、何が不服なのですか?」
組み敷いたままで尋ねると、
「不服とか、不服じゃないとかではなく、こんな風に無理やりされるのは、好きじゃないです。……別にあなたでなくても、他の誰でも……」
答えた彼女の表情に、僅かなはにかみが浮かんで見えるのに、
もう少し押してみれば、もしかしたら落とせるのかもしれないと感じた。
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