「おはようアーサー」
「,,,,,,早く帰れよ」
「冷たいなぁ」
7月3日深夜。アルフレッドがアメリカ国内にいないと記念日は始まらない。そして案の定、俺は体調が悪いのと産後の体力も重なって余計に悪化している。
「行ってくるよベイビーズ。」
頭を人なでし、軽くキスをして次はこっちに来た。横になっているままなので呼び寄せて抱き合う。
「気をつけて」
「君もね。何かあったらすぐに連絡するんだよ。あぁそうだ。あっちでベビー用品なんかも見てくるね」
「無理して来なくてもいいんだぞ。今日はお前が主役なんだからな 」
「俺が欲しいのは君たちといる時間だから。」
キスではなく、おでこをこつんとくっつける。
「じゃあ俺からのはお前が帰ってきた時にあげてやるよ」
「,,,,,,楽しみにしてるね」
実は子供たちをすぐに引き渡すことは辞めたのだ。半年。半年だけ自分たちで育てると。もちろん、言語が異なっているので大丈夫かとは言われたが、魔法を使えば上手くいけるかもしれない。そう連絡した結果、【来年の1月、元気な子達が私たちの元に訪れることを楽しみにしています】ときた。双子の乗っているカートをベッドのすぐ横に引き寄せ、両手で頭をなでる。
赤子の記憶は残る子と残らない子がいる。もしも残っていたとしたら、すれ違いが起こってしまう。よって、俺とアルフレッドの記憶を養父と養母にすり替える。これが条件の中でも最優先とされていた。
ぷぅぷぅと鼻息が漏れながらも穏やかに幸せそうに眠っている。例え記憶が残らなくたって、産んだということが残る。本当に勝手な事だと分かっているが、だからこそこの手で育ててみたいと思ったのだ。兄のほうがすぅっと目を開けたので抱き抱える。弟はまだぐっすりである。
「,,,,よしよし。可愛い俺の子。お腹空いたか?」
しかし、抱きかかえられているまま、また寝ようとしている。
「いいぞ。寝ててもいいから、聞いてくれ」
「アメリカ!おめでとう!」
「おめでとうございます!」
「ありがとうみんな!!」
朝からずっと紙吹雪などが舞い、会場には隙間がほぼないほど民間人が訪れている。少女に花を貰っては少年に自作のプラモデルを貰っていたりと手には大量のプレゼントを抱えていた。
「おめでとう兄弟。何か手伝ってあげようか?」
「マシュー」
いつもより少し色が淡いスーツを着てにこやかに言ってくる。
「ほら、次は政治家さんのほうに挨拶いくんでしょ?控え室にそれ持ってってあげるよ」
「あ、ありがとうマシュー。それと,,,,」
この間のごめんと言いかけた時、人差し指を自分の唇の前に置いてシーっと言う。
「主役が謝ってどうする。言っただろ?全部胸の中に込めておくんだって。じゃっ、今日はおめでと」
ポカンとした隙にメアリーがサッと腕を引いて重役の元へと連れていく。マシューの周りにも沢山の国が集まって話をしていた。
「おめでとうございますアルフレッドさん」
「ありがとう!本田!」
あまり国の化身ということを知られないためにここでは名前で呼んでいる。菊からは日本食をプレゼントとしてご馳走になった。キラキラとした和食を眺めていると黒い影が上に被さる。無礼だと思って顔を上げると生憎、欧州連中がいた。
「そんな顔すんなって。この場で2番目のイケメンお兄さんが来たんだからさ」
「へー珍しいやんフランシスさん。2番目になりにいくときもあるんやな!」
「こんなに人いるんだから顔面偏差値は競えないよベル。」
フランシスとベルギーだ。ルクセンブルクも後ろでニコニコと箱を持っている。
「それが君たちのプレゼントかい?」
「まぁアルフレッド【たち】になるんだけどねー。家に帰ってから開けなよ?」
「え?」
ニマニマとベルギーに見つめられる。コソコソとフランシスと話している。だがフランスは首を横に振っているため少しムスッとした顔をする。
「今いっちゃん欲しいやつやと思うから楽しみにしといてや!今日はおめでと!」
「?あぁありがとう!,,,,あれ?オランダはいないのかい?」
「兄さんはあっちの,,,,まぁ勧誘でしょうね」
「人の誕生日にまで金稼ぎを目的にしないでほしいね」
「言っとくわ!アルフレッドは楽しんどき!」
日本も一緒に行ったため、一気に周りは静かになる。
「それじゃ、俺は次あっちに」
「まあまあ落ち着きな?あれはオランダ一味のやつで、こっちは俺のな」
と、封筒を渡してきた。
「アーサーに見せるかはお前次第だよ。それだけ。じゃーねー」
颯爽と去っていくフランシスの背中はなぜか軽そうに見えた。その後も名前を呼ばれたので走って向かう。
「,,,,あぁおかえり。無理すんなっつったのに」
「俺はヒーローだぞ!疲れなんか感じないからなー」「はいはい」
騒がしくしたせいか、2人とも起き出した。
「あーもう。さっきやっと寝たのに」
「ごめんごめん。俺も世話するから。ほらおいで」
アルフレッドは大量のプレゼントを持って室内に入ってきた。
「これお前のだろ?家に置いてくりゃ良かったじゃん。」
「えそれがさ?アーサーと一緒に見なって言われちゃって。」
「なんだそりゃ」
「まー開けましょう!」
ベルギーから貰ったものには沢山のマタニティグッズが入っていた。アルフレッドがポカンとしている中、俺は目を輝かせながら漁る。
「目当てのものはあったかい?」
「これベルからだろ?話してたんだよこれのこと!ルクセンとかも相談のってくれてたから尚更充実してるよ。あとで何か送ってあげよう」
中をゴソゴソしているとアルフレッドが急に思い出したような顔をする。抱いていた子を俺に渡して山のプレゼントの中から封筒をだしてきた。
「これ誰から貰ったんだ?」
「フランシスだよ。開けてみようか」
その瞬間双子が一斉に泣き出す。あやしても泣き止む様子がない。
「お腹空いたのか,,,,?アルフレッド。1回外出てってくれ」
「えっ俺もいたい」
「ダメだ出てろ」
さすがにあげているところは見せたくないため退出してもらう。
締め出され口をつねらす。
「いーもんね!先に見ちゃうから!」
中身を外に出す。だが、もう一度中にしまってもう一度確認する。目を抑えてしゃがむ。
「,,,,,,,,ほんっっっとーに,,,,最低なんだぞ,,,,」
「,,,,何してんだお前」
双子にあげて兄を寝かしつけたところでアルフレッドを呼んでおこうかと思い弟を抱えたまま外に出ると耳まで真っ赤にしたアルフレッドが俯いている。声をかけたと同時に汗が吹き出して手に持っていた封筒をぐしゃっとして隠す。
「いいいいいや!なにもないんだぞ!」
「そんなわけないだろ。それ貸してみろ」
「いやいや普通にギフトカードで」
「あの髭がそんなしょぼいやつあげるわけねぇだろ。貸せ」
ワーワーと騒ぐ。そこに、
「ふぇっ」
とか細い声が響き、ピェッとアーサーが震え上がる。
「あーあー、泣かないでくれベイビー」
「おいこらもっと本気であやせ!1人泣いたらもう1人共鳴するみたいに泣き出して収集つかくなるんだよ」
「えっ!えーとえーと」
ゴソゴソとベルギーからのプレゼントを漁り、ガラガラを持ってきたり派手な色をしたぬいぐるみなどを持ってあやす。幸い、泣き出すことなくそのままアーサーの揺らしで眠った。ふぅと一息ついたところでまた封筒の奪い合いが起こる。
「,,,,渡さねぇと俺からのプレゼントあげねぇぞ?」「え」
動揺した瞬間を見逃さずにサッと取り上げて中身を取り出す。中に入っていたのは某ホテルの1年間使い放題券と某予防膜。スーッともう一度中身を戻し、アーサーはベッドの上に座る。
「,,,,まあ使うことはないしお前の部下にあげとけよ」
「あげる顔もないよ!処分しとくっ!」
「おっ。俺の言うこと聞いてくれるんだな」
「え?あー、えーと」
「はい。もう俺からのは、なしな。」
「ねぇ違ってアーサー!ごめん,,,,」
とりあえず封筒はプレゼントの山の1部に置いてアルフレッドを手招きで呼び寄せる。フワフワとアルフレッドが近寄ってきた瞬間に頭を掴んで自らの膝の上にのせる。
「え、えぇ,,,,?」
「はい。俺からのプレゼント。膝枕だ」
「キスとかじゃないのかい!?」
「膝枕でも十分だろ。寝ろお前は」
「ねぇ、アーサー,,,, 」
あっという間にアルフレッドは寝てしまい、頭をゆっくりなでる。やっぱり親と子は似ているなと思いながらクスッと1人部屋で笑った。
コメント
2件
とても素敵な作品を毎回ありがとうございます!!!