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帰り道の途中、
ひよりは突然立ち止まった。
陽も足を止め、ひよりの横顔を覗き込む。
「……ひより?」
ひよりは胸元を押さえ、
苦しそうに息を吸った。
「……ごめん……
ちょっと……苦しくて……」
陽は驚いたように目を見開いた。
「胸? 痛いの?」
ひよりは首を振る。
「違う……
痛いっていうより……
なんか……ぐちゃぐちゃして……
息が……」
陽はひよりの肩に手を添えたが、
その表情は今までと違っていた。
心配だけじゃない。
どこか、焦りに似たものが混ざっている。
「……ひより、無理しないで。
座ろう」
ひよりは頷き、
近くの階段に腰を下ろした。
陽は隣に座らず、
ひよりの前にしゃがみ込んだ。
「顔、真っ青だよ。
ほんとに大丈夫?」
ひよりは俯いたまま、
震える声で呟いた。
「……陽くん……
私……
あの人のこと……
思い出したくなかった……」
陽の表情が変わった。
今までの“優しい陽”じゃない。
ひよりの痛みに対して、
怒りに近い感情が一瞬だけ浮かんだ。
「……ひよりをそんなふうにさせるなら、
やっぱり……俺、黙ってられない」
ひよりは顔を上げた。
「……え……?」
陽はひよりの目をまっすぐ見つめた。
「謝りたいって言ってたけど……
ひよりがこんなに苦しむなら、
あの人に近づかせたくない」
ひよりの胸が跳ねた。
陽がこんなふうに言うのは初めてだった。
「……陽くん……
怒ってるの……?」
陽は少しだけ目を伏せ、
それから静かに言った。
「怒ってるよ。
ひよりが苦しんでるのに、
何も感じないわけない」
ひよりの胸の奥が、
別の意味でぎゅっと締めつけられた。
(……陽くん……
そんなふうに……)
陽はひよりの手をそっと取った。
「ひより。
俺に……頼っていいから」
その言葉は、
今までの“優しさ”とは違う温度を持っていた。
ひよりは息を呑んだ。
胸の痛みはまだ残っている。
でも、
陽の言葉がその痛みの奥に
新しい何かを落としていった。
#正体バレ
#再会